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妃殿下は仲人さんです
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恐らく婚約解消が正式に発表され次第、すぐにでも次の婚約者を宛がわれるだろう、とそうクラウディアは思っていた。
しかし、未だにエーベルハルトには婚約者が居ない。クラウディアとの婚約が十一年前であったせいで、国内の主だった貴族令嬢は皆既に結婚しているか婚約者が居たからだ。釣り合う年齢で相手が居ないとすれば何かしらの問題がある人物になる。流石にそんな令嬢を王太子妃にする訳にはいかず、婚約者選びは難航しているのだ。
それならば、とクラウディアはエールデンの令嬢をエーベルハルトに紹介することを考えていた。逆にエールデンでは一年前まで皇帝が独身だったせいで、現在皇妃の座を狙っていた高位貴族の令嬢達による婚約ラッシュが起きている。しかし、様々な理由から波に乗れない令嬢も中には居るのだ。今回結婚式に招待したのも、何人か良さげな令嬢と顔合わせをして貰おうと思ったからだ。ちなみに国王には秘密裏に公爵を通じて了承を取り付けているので、勝手にしている訳ではない。
故国では親しい友人が居らず孤独であったクラウディアも、この国に嫁いできて姑である皇太后を通して何人か親しくなった夫人が居た。そんな夫人達の中には、当人には皇妃の座に興味がなくとも、父親が期待した為に婚約者を決めて貰えなかった娘を持つ者が居た。非常に優秀であり、幼い頃より未来の皇妃となるべく修業に励んでいた彼女らは、正直な所皇妃としての資質はクラウディアよりも上だろう。魔力の大きさや魔道具の製作に関しては負けない自信はあったが。
それだけ資質があれば当然婚姻を結ぶ相手も高位貴族の嫡男が望ましいのだが、男性側としてはいつになったら申し込めるのかわからない令嬢よりは、少し家格が落ちても能力が低くても婚約者の座が空いている令嬢を選ぶ者が多かったのだ。
そして現在婚約ラッシュが起きているのは、高位貴族の中でも早く諦めた家だ。『他国の令嬢など! 絶対にうちの娘の方が!』と親が粘った家ほど乗り遅れ、結果本人は優秀であるにも関わらず、婚約の申し込みが高位貴族との繋がりを求めたメリットが薄いどころかまるで無い、下位貴族からばかりとなってしまっていた。
そんな令嬢達と交流している中、クラウディアは何人かを他国へと輸出(!)する事を考えた。エールデンで生まれ育った令嬢がトップに立っていれば、国同士の交流や交易でのやり取りがしやすくなるのでは、という理由からだ。
「今回お呼びしたのは、そういう経緯ですわ。結婚式の後にある夜会で令嬢の皆様を殿下にご紹介しようと思っておりますのよ。お気に召していただけたら、そのままお連れいただいても構いませんわ。ええ! 何人でも!」
「…………」
自国の妃ではないが、王太子の正妃ならば、と考えた貴族家の当主らにも許可はとった。このまま相手が見つからなければ、貴族令嬢としての価値は下がる一方だからだ。
「当日は、私はリュシオン様とご挨拶しなければいけないので、顔合わせはヘンリックにお願いしております」
呆然とエーベルハルトがヘンリックへと顔を向けると、苦笑いを浮かべる彼と目が合う。クラウディアはまるで気付いていなかったが、ヘンリックはエーベルハルトの感情の動きがわかった。クラウディアは単なる親切心と自国となったエールデンの為にと思って考えただけで、そこに個人的な感情は無い。だから婚約破棄を叩きつけた相手に結婚相手を斡旋してもらうという事が、男にとってどれ程屈辱的なのかを理解していないのだ。王妃となるべく様々な勉強を積んできたが、どうやらその中には男性の心の機微を悟る事は含まれていなかったらしい。
「ま、そういう訳です。皇妃候補になるくらいの令嬢達ですので、能力的には全く問題ありません。あとは殿下のお好きにどうぞ。あ、僕は紹介はしますが、その後のフォローはしませんので。クルトに頼んで下さいね」
クルトごめーん。フォローよろしくねー。
同年で彼が王太子につくようになってから知り合い、友人関係になったクルトへ、ヘンリックは心の中で友人に謝っておいた。
後々散々愚痴られたのは言うまでもない。
しかし、未だにエーベルハルトには婚約者が居ない。クラウディアとの婚約が十一年前であったせいで、国内の主だった貴族令嬢は皆既に結婚しているか婚約者が居たからだ。釣り合う年齢で相手が居ないとすれば何かしらの問題がある人物になる。流石にそんな令嬢を王太子妃にする訳にはいかず、婚約者選びは難航しているのだ。
それならば、とクラウディアはエールデンの令嬢をエーベルハルトに紹介することを考えていた。逆にエールデンでは一年前まで皇帝が独身だったせいで、現在皇妃の座を狙っていた高位貴族の令嬢達による婚約ラッシュが起きている。しかし、様々な理由から波に乗れない令嬢も中には居るのだ。今回結婚式に招待したのも、何人か良さげな令嬢と顔合わせをして貰おうと思ったからだ。ちなみに国王には秘密裏に公爵を通じて了承を取り付けているので、勝手にしている訳ではない。
故国では親しい友人が居らず孤独であったクラウディアも、この国に嫁いできて姑である皇太后を通して何人か親しくなった夫人が居た。そんな夫人達の中には、当人には皇妃の座に興味がなくとも、父親が期待した為に婚約者を決めて貰えなかった娘を持つ者が居た。非常に優秀であり、幼い頃より未来の皇妃となるべく修業に励んでいた彼女らは、正直な所皇妃としての資質はクラウディアよりも上だろう。魔力の大きさや魔道具の製作に関しては負けない自信はあったが。
それだけ資質があれば当然婚姻を結ぶ相手も高位貴族の嫡男が望ましいのだが、男性側としてはいつになったら申し込めるのかわからない令嬢よりは、少し家格が落ちても能力が低くても婚約者の座が空いている令嬢を選ぶ者が多かったのだ。
そして現在婚約ラッシュが起きているのは、高位貴族の中でも早く諦めた家だ。『他国の令嬢など! 絶対にうちの娘の方が!』と親が粘った家ほど乗り遅れ、結果本人は優秀であるにも関わらず、婚約の申し込みが高位貴族との繋がりを求めたメリットが薄いどころかまるで無い、下位貴族からばかりとなってしまっていた。
そんな令嬢達と交流している中、クラウディアは何人かを他国へと輸出(!)する事を考えた。エールデンで生まれ育った令嬢がトップに立っていれば、国同士の交流や交易でのやり取りがしやすくなるのでは、という理由からだ。
「今回お呼びしたのは、そういう経緯ですわ。結婚式の後にある夜会で令嬢の皆様を殿下にご紹介しようと思っておりますのよ。お気に召していただけたら、そのままお連れいただいても構いませんわ。ええ! 何人でも!」
「…………」
自国の妃ではないが、王太子の正妃ならば、と考えた貴族家の当主らにも許可はとった。このまま相手が見つからなければ、貴族令嬢としての価値は下がる一方だからだ。
「当日は、私はリュシオン様とご挨拶しなければいけないので、顔合わせはヘンリックにお願いしております」
呆然とエーベルハルトがヘンリックへと顔を向けると、苦笑いを浮かべる彼と目が合う。クラウディアはまるで気付いていなかったが、ヘンリックはエーベルハルトの感情の動きがわかった。クラウディアは単なる親切心と自国となったエールデンの為にと思って考えただけで、そこに個人的な感情は無い。だから婚約破棄を叩きつけた相手に結婚相手を斡旋してもらうという事が、男にとってどれ程屈辱的なのかを理解していないのだ。王妃となるべく様々な勉強を積んできたが、どうやらその中には男性の心の機微を悟る事は含まれていなかったらしい。
「ま、そういう訳です。皇妃候補になるくらいの令嬢達ですので、能力的には全く問題ありません。あとは殿下のお好きにどうぞ。あ、僕は紹介はしますが、その後のフォローはしませんので。クルトに頼んで下さいね」
クルトごめーん。フォローよろしくねー。
同年で彼が王太子につくようになってから知り合い、友人関係になったクルトへ、ヘンリックは心の中で友人に謝っておいた。
後々散々愚痴られたのは言うまでもない。
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