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7.自分からフラグ立てには行きませぬ
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学校は王都でも外れの方にある為、馬車でも三十分はかかる。道中義兄は無言だ。……超気まずい。
「最初に言っておく。王子とその周辺には近付くな」
むむ。藪から棒になんですか。沈黙に耐えられなかったのか、義兄の方から急に話しかけられた。今日は珍しい事だらけだ。まあ、言われなくても近寄りません。変なフラグ立てでも嫌だし。
「ふらぐ?」
い、いやなんでもないです。…………前世を思い出してからたまーにポロッと単語とか慣用句とか出ちゃうんだよね。どの道、庶子の伯爵令嬢が高位貴族に纏わりついて彼らの婚約者に睨まれたら嫌だしね。えーと、確か第三王子とその婚約者が義兄の同級生なんだっけ? あと確か宰相子息と騎士団団長の子息。他にもなんか居るって聞いた気がするけど、その辺はどうせ関わんないし~って耳が滑ってたんでちゃんと覚えてないや。テンプレ感満載だな。となると王子だけじゃなく側近達にも居るんでしょ? 婚約者。
「まあ、居るな。一応」
? んん? このニュアンス、もしかしてやはり私がヒロインじゃなくて、去年辺りに庶子の男爵令嬢が入学してて攻略中とか? それならそれで他人事なんだけど。
一応とはどういう事かと問いつつ首を傾げると、義兄はあからさまな溜め息を吐いた。いやその態度嫌われてたとしても目の前でされたら傷つくんですが。
「……いや、すまない。お前に対して溜め息を吐いた訳では無い。色々と思い出しただけだ。まあ、学校に入学すればそのうちわかるだろう。とにかく彼らには直接近付くな。何かどうしても用事があるなら私に言え。……それと、私の事は義兄ではなくアルヴィンと呼べ。いいな」
そう一方的に言って義兄は再び黙りこみ、椅子の背もたれに体を倒して目を閉じた。
流石の脳天気な私でもわかった。これは全く義妹として認められてないんだ。父には交流する気は無いとか言ったけど、たとえ半分しか血が繋がってなくても、時が経てば多少なりとも情が湧くんじゃないかと勝手に想像してたんだなあ。思ったよりもずっとショックを受けてる。……学校に着くまでの残りの距離が酷く長く感じられた。
自分が動かしてる訳じゃないから、私の気分など関係なく馬車は学校に着く。止まって御者から声をかけられた義兄は、スっと何事も無かったように目を開けて立ち上がると、御者の開けた扉から降り、そしてこちらに向けて手を差し出した。え、なに?
「何をしている。降りないのか」
ムスッとした顔で言われて慌てて立ち上がり、義兄の手を取る。うわ、なんか柔らかい。もしかして私の手よりもスベスベなんじゃないの? この二年間侍女がせっせと手入れしてくれたけど、小さい頃からの環境もあってか残念ながら白魚の様な手とはなってない。
この学校、子息には算術は必須だけど、ラノベでよくある剣術は元々授業が無い。そもそもこの世界、魔王なんてのは居ないし、国際的紛争もさほど無い。貴族の嫡男が自ら剣を取って戦う必要は全くない。それでも小競り合いだったり野党の討伐だったりはあるので、嫡男以外で剣で身を立てようとする者はこの学校ではなく、大抵騎士養成学校へ入学する。実家に学校に入学する余裕が無ければそのまま自領の自警団に参加したりもするけど。
何が言いたいのかというと、義兄は生まれてから刃の付いた物は、食事用のナイフしか持った事が無いのだ。そりゃあ綺麗な手にもなるわな。……く、悔しくなんかないんだからね!
「最初に言っておく。王子とその周辺には近付くな」
むむ。藪から棒になんですか。沈黙に耐えられなかったのか、義兄の方から急に話しかけられた。今日は珍しい事だらけだ。まあ、言われなくても近寄りません。変なフラグ立てでも嫌だし。
「ふらぐ?」
い、いやなんでもないです。…………前世を思い出してからたまーにポロッと単語とか慣用句とか出ちゃうんだよね。どの道、庶子の伯爵令嬢が高位貴族に纏わりついて彼らの婚約者に睨まれたら嫌だしね。えーと、確か第三王子とその婚約者が義兄の同級生なんだっけ? あと確か宰相子息と騎士団団長の子息。他にもなんか居るって聞いた気がするけど、その辺はどうせ関わんないし~って耳が滑ってたんでちゃんと覚えてないや。テンプレ感満載だな。となると王子だけじゃなく側近達にも居るんでしょ? 婚約者。
「まあ、居るな。一応」
? んん? このニュアンス、もしかしてやはり私がヒロインじゃなくて、去年辺りに庶子の男爵令嬢が入学してて攻略中とか? それならそれで他人事なんだけど。
一応とはどういう事かと問いつつ首を傾げると、義兄はあからさまな溜め息を吐いた。いやその態度嫌われてたとしても目の前でされたら傷つくんですが。
「……いや、すまない。お前に対して溜め息を吐いた訳では無い。色々と思い出しただけだ。まあ、学校に入学すればそのうちわかるだろう。とにかく彼らには直接近付くな。何かどうしても用事があるなら私に言え。……それと、私の事は義兄ではなくアルヴィンと呼べ。いいな」
そう一方的に言って義兄は再び黙りこみ、椅子の背もたれに体を倒して目を閉じた。
流石の脳天気な私でもわかった。これは全く義妹として認められてないんだ。父には交流する気は無いとか言ったけど、たとえ半分しか血が繋がってなくても、時が経てば多少なりとも情が湧くんじゃないかと勝手に想像してたんだなあ。思ったよりもずっとショックを受けてる。……学校に着くまでの残りの距離が酷く長く感じられた。
自分が動かしてる訳じゃないから、私の気分など関係なく馬車は学校に着く。止まって御者から声をかけられた義兄は、スっと何事も無かったように目を開けて立ち上がると、御者の開けた扉から降り、そしてこちらに向けて手を差し出した。え、なに?
「何をしている。降りないのか」
ムスッとした顔で言われて慌てて立ち上がり、義兄の手を取る。うわ、なんか柔らかい。もしかして私の手よりもスベスベなんじゃないの? この二年間侍女がせっせと手入れしてくれたけど、小さい頃からの環境もあってか残念ながら白魚の様な手とはなってない。
この学校、子息には算術は必須だけど、ラノベでよくある剣術は元々授業が無い。そもそもこの世界、魔王なんてのは居ないし、国際的紛争もさほど無い。貴族の嫡男が自ら剣を取って戦う必要は全くない。それでも小競り合いだったり野党の討伐だったりはあるので、嫡男以外で剣で身を立てようとする者はこの学校ではなく、大抵騎士養成学校へ入学する。実家に学校に入学する余裕が無ければそのまま自領の自警団に参加したりもするけど。
何が言いたいのかというと、義兄は生まれてから刃の付いた物は、食事用のナイフしか持った事が無いのだ。そりゃあ綺麗な手にもなるわな。……く、悔しくなんかないんだからね!
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