雄っぱいミルクで社畜のリーマンは、3児のママになる。

しゅうじつ

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第1章 こういうわけで俺は3児のママになった編

第1話 子育てストレス度80%

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我が家は異常である。
それは、我が家の朝の様子を覗いてくれればすぐに分かるだろう。


 「ごはんー!!ごはんまーだー?」

「今作ってるから!!も少し待っとけ!!」

「あっ!!ねぇねぇこっち来てー!」

「今メシ作ってんだって!!!来れるかよ!!」


っとに朝から騒がしい…
今は朝の7時30分。
8時までに家出れるかな…



「あ、おい!!赤ちゃんの鼻つまむな、生まれて3年ポッキリで人殺しになろうとしてんじゃねえ」


「じっじの名にかけてー!!」


「それは昨日見たドラマな、じっじじゃなくてじっちゃんな」


「じっちー!」


「はいはいじっちー」


ぎぁあぎゃあと甲高く叫ぶ。


「~~~うっっ!」


う、うるせえ……
鼓膜破れるわ。

朝メシをテーブルへ運ぶと3歳のガキが走って寄ってくる。

「ごーはーんー!タクヤのはー??」

「食器が無いんだ、悪いが鍋からスプーンで食べてくれないか」

昨日まで一人暮らしだったんだ。
1人用の食器しか用意していない。

えータクヤがその食器使いたーいと、駄々をこねているその横で7歳のガキが黙々とスプーンを2本取り出し、そのうちの1本でみそ汁をすくって飲み出す。


「あっおっさんウンチ」

「おっさんじゃねえ、トビラ開けてすぐ左だばかやろう!」


でもうるさい奴がいなくなった。
これでゆっくり朝食が取れる。


「ふー…いただきます」


赤ん坊に乳を吸わせながら茶碗を持ち上げ、口を開けたその瞬間。
ツーン。
思わず鼻にシワを寄せる。


「なんだこの臭いは」


いや、この特有のニオイは…

バッと赤ちゃんの方をみる。


「したのか…?」


慌てて体から離して床に寝転がらせる。
一方で、7歳のガキはそんなの気にもとめない様子でスプーンでみそ汁を飲み続けている。


「うわっくせえ……」


オムツを広げて見ると、目の前にあるバナナ形のソレに顔をしかめる。

どうしたものか。

とりあえずティッシュで拭くか?
でもその後はどうする。
どうやって処理する。
オムツなんて物は勿論この家にはない。

だって昨日まで独身一人暮らしだったんだもん。

いや、独身はいまもそうだけど。

そんなことより今は目の前のをどうにかしねえと。
…参った。


「なあ、これどうしたらいいと思う?」
 

苦笑いしながら7歳のガキにそう喋りかけてみる。
しかし、その男の子はこちらへ目すら向けず、反応すらしない。
ずっとスプーンでみそ汁をすくい続けていた。


「………」

 
苦笑いしている俺の表情筋がピクピクと痙攣し出した直後、向こうからドタドタと騒がしい足音がして、それがどんどん近づいてきて…


「トイレマンっ参上ーーっ!!!」


ドアがバンっと開かれると俺の目の前に飛び込んできたのは大量の舞い散るトイレットペーパーだった。

あのクソガキが体中にトイレットペーパーを巻き巻きにして部屋中を駆け回る。


なっ!!何やってんだあいつは!?


「おいっ止まれ!!!暴れるな!!!」


手のひらを出しストップと制するが、そんなんで言うことを聞く子供はいない。


すぐにこの部屋全体が真っ白いトイレットペーパーの紙でいっぱいになる。
トイレットペーパーに引っかかった家具やらインテリアが、ガコンガコンと音を立てながら落ちていく。

時刻がそろそろ8時を回る。

今度は両手を出してストップと合図を送るももちろん目もくれず。
突然の不慣れなアクシデントにあたふたしながらも、とりあえず走って追いかける。するとこのクソガキはより一層嬉々としながら部屋中を暴れ回った。


「はぁはぁ…ちょっとっ待って…!」


すぐ捕まえられると思ったが、小さな体で器用に逃げ回り子どもとの鬼ごっこに苦戦する。
こんだけ走ったのいつぶりだ?
てかこんな体力無かったのか、おれ…
いよいよ体力の限界で床に膝をつきその場にしゃがみこむ。


「あっ何だコレ」 


ひらっとある紙を掴んでいる。


「!!おいっまてそれは……っ」


反射的に走り寄ろうとすると、足元がズリっと滑る。

えっ?

はっと下を向くと、足裏にトイレットペーパーが…

2人の視線がこっちに向けられるのを感じながら、視界がグラッと反転した。




□□□□□□




「えっ…どっしたんすかその鼻!鼻血っすか!?」



後輩の上村がギョッとしながら俺の鼻を覗き込んでくる。
俺は皆の前に立たされてしまい、部長にお叱りを受けていた。
公開処刑である。
転んだ時のケガで顔から鼻血がツツーと垂れてくる姿はなんとも惨めで情けない。


「こんな大事な時期に…無断で遅刻とはどういうことかね」


孫の手で背中をポンポン叩きながら俺の顔を見上げる。
呆れ顔だ。


「申し訳ございません」


「全く…入社して何年だ君は。1年目か?あ?全く、上の者としての自覚が足りなすぎる」


どこかしこからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
机上の山積みにされてある書類をバンバンと叩く。


「罰でも受けないと反省しないか?今日中にコレを終わらせろ、遅刻した分、その分残業するんだ」


「ああ、でも君残業好きなんだっけ~~?」


へらっと笑う部長に合わせてははっ…と笑ってみせる。

やばい舌打ちしちまうところだった。


あれこれ終わって会社に着いた時にはもう10時を過ぎていた。
くっあのやろう好き勝手部屋を荒らしやがって。

あんなことになるならガキに簡単に手が届かない所に置いとくんだった。
甘かった。
会社の書類を破かれてしまったのは流石にまずい。
今こそまだバレてないものの、いつかはきっとバレてしまう。
その時を想像しては、胃がずしんと重くなる。

帰ったら片付けなきゃなー…
当然片付けるような時間は残ってなかったので、急いであのまま家を飛び出したのだ。

でも今日残業しなきゃなんだっけ

あ~なんでこんなことになっちまったんだろう。


なぜ社畜のこと俺が3人の子供を育てているのか。

全ては…

全ての始まりは

あの日に遡る。
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