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第1章
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「結局タカちゃんは私のこと、子供扱いしかしてないんだよ」
昼休みに結子と話す沙樹は、愚痴を言っていた。崇弘の沙樹の扱いは恋人ではないと感じている。
「いつまでも妹なんだよ」
妹のように接していた期間が長過ぎた。その為かなかなか進展しない。
「ん~……、でもさ。相手は大人だよね。いくつ離れてるんだっけ?」
「10」
「考えてごらんよ。25の男が15女の子に手を出すってあり得なくない?世間一般に叩かれるよ」
結子に言われてそっかと納得する。納得するがモヤモヤが残る。
「崇弘さん、沙樹のことを大事にしたいんでしょ」
「大事に?」
「今あんたとそういうことして、世間にバレて離れることはしたくないって。だからそういう決断したんでしょ。本来ならマンションに呼ぶこともヤバいんじゃないの?」
結子は沙樹を真っ直ぐ見た。沙樹の気持ちも分かるが、崇弘が思ってることはそういうことじゃないかと考えていた。
「今はまだ崇弘さんを信じるしかないんじゃない?」
「ん……」
泣きそうになるくらいだった。結子と話していなければ、崇弘の気持ちが分からないままだった。崇弘は自分の思いをさらけ出すことはしないから、いつも冗談ばっか言ってるから本音が見えないのだ。
「想いが通じただけでも幸せだって思わなきゃ」
結子は沙樹にそう言った。自分は柳に想いを伝えられない。それに比べて沙樹は想い合ってることが羨ましいと感じていた。だからこそその言葉が出てくるのだ。
(タカちゃんに会いたい)
結子と話をしたことで、崇弘が何を思ってるのか分かった気がした。
思えば輝を含めたみんなは、常に沙樹のことを思って行動している。それは崇弘もそうだった。沙樹が笑えるように楽しめるようにいつも考えてくれていた。
(いつも私のことを考えてたのかな)
「ふぅ……」と息を吐くと、結子を見た。
「贅沢な悩みだね」
笑うと結子は沙樹の頭を撫でた。
「なに」
「素直でいい子だなぁって」
「もうっ」
照れ笑いをした沙樹はお弁当箱を片付け始めた。
「さて。教室、戻ろ」
沙樹が言うと結子は笑って立ち上がった。
◇◇◇◇◇
放課後。いつもの教室。凪や貴裕、柳と過ごす時間は沙樹にとって当たり前の光景になった。だけどもうすぐ夏休み。こんな風に会って話すことがなくなる。
「夏休みかぁ」
「宿題が恐ろしい」
結子と柳はそう言っては怠そうにしていた。そんなふたりを見て貴裕は笑う。
「お前らは普段からちゃんと勉強しないからだ」
「貴裕はいいよな、一度聞いただけで覚えるもん」
柳は貴裕を恨めしそうに見る。
「俺だってちゃんと勉強してんだよ」
「えーっ!ほんと?」
結子は驚いて貴裕を見た。
「私も一度聞いただけで覚えてると思ってたよ」
凪も貴裕にそう言って笑う。
この4人の時間は自然な空気を纏っている。その中に自分はいていいのかと迷う時もあった。だが、この4人は当たり前のように沙樹を同じ空間に入れていくのだ。
「なら……、一緒にやれば……、いいと思う」
沙樹の言葉に結子は目を輝かせる。学年は違う5人たが、それでも一緒にやれば早く終わるだろう。……と、沙樹は考えた訳ではない。ただ、休みの間もみんなに会えないのは辛いと考えたからだった。
「ならどっかで会おうぜ」
柳はそう言ってスマホを取り出した。
「俺、お前の連絡先知らねぇ」
沙樹に言うとスマホを出すように促す。
「あ、そういや私も知らない」
今思い出したと言うように結子もスマホを出す。その流れで貴裕も凪もスマホを出した。
沙樹のスマホには家族とBRのメンバー、柚子の連絡先しか入っていなかった。その中に結子たちの連絡先が登録された。そのことが嬉しくて、嬉しい気持ちが溢れてしまって顔が綻びる。
そんなことを思ってしまう自分に戸惑う沙樹。今までの自分とは違う過ごし方に違和感を覚えていた。だけどその違和感は、嫌なものじゃないとも感じていた。
昼休みに結子と話す沙樹は、愚痴を言っていた。崇弘の沙樹の扱いは恋人ではないと感じている。
「いつまでも妹なんだよ」
妹のように接していた期間が長過ぎた。その為かなかなか進展しない。
「ん~……、でもさ。相手は大人だよね。いくつ離れてるんだっけ?」
「10」
「考えてごらんよ。25の男が15女の子に手を出すってあり得なくない?世間一般に叩かれるよ」
結子に言われてそっかと納得する。納得するがモヤモヤが残る。
「崇弘さん、沙樹のことを大事にしたいんでしょ」
「大事に?」
「今あんたとそういうことして、世間にバレて離れることはしたくないって。だからそういう決断したんでしょ。本来ならマンションに呼ぶこともヤバいんじゃないの?」
結子は沙樹を真っ直ぐ見た。沙樹の気持ちも分かるが、崇弘が思ってることはそういうことじゃないかと考えていた。
「今はまだ崇弘さんを信じるしかないんじゃない?」
「ん……」
泣きそうになるくらいだった。結子と話していなければ、崇弘の気持ちが分からないままだった。崇弘は自分の思いをさらけ出すことはしないから、いつも冗談ばっか言ってるから本音が見えないのだ。
「想いが通じただけでも幸せだって思わなきゃ」
結子は沙樹にそう言った。自分は柳に想いを伝えられない。それに比べて沙樹は想い合ってることが羨ましいと感じていた。だからこそその言葉が出てくるのだ。
(タカちゃんに会いたい)
結子と話をしたことで、崇弘が何を思ってるのか分かった気がした。
思えば輝を含めたみんなは、常に沙樹のことを思って行動している。それは崇弘もそうだった。沙樹が笑えるように楽しめるようにいつも考えてくれていた。
(いつも私のことを考えてたのかな)
「ふぅ……」と息を吐くと、結子を見た。
「贅沢な悩みだね」
笑うと結子は沙樹の頭を撫でた。
「なに」
「素直でいい子だなぁって」
「もうっ」
照れ笑いをした沙樹はお弁当箱を片付け始めた。
「さて。教室、戻ろ」
沙樹が言うと結子は笑って立ち上がった。
◇◇◇◇◇
放課後。いつもの教室。凪や貴裕、柳と過ごす時間は沙樹にとって当たり前の光景になった。だけどもうすぐ夏休み。こんな風に会って話すことがなくなる。
「夏休みかぁ」
「宿題が恐ろしい」
結子と柳はそう言っては怠そうにしていた。そんなふたりを見て貴裕は笑う。
「お前らは普段からちゃんと勉強しないからだ」
「貴裕はいいよな、一度聞いただけで覚えるもん」
柳は貴裕を恨めしそうに見る。
「俺だってちゃんと勉強してんだよ」
「えーっ!ほんと?」
結子は驚いて貴裕を見た。
「私も一度聞いただけで覚えてると思ってたよ」
凪も貴裕にそう言って笑う。
この4人の時間は自然な空気を纏っている。その中に自分はいていいのかと迷う時もあった。だが、この4人は当たり前のように沙樹を同じ空間に入れていくのだ。
「なら……、一緒にやれば……、いいと思う」
沙樹の言葉に結子は目を輝かせる。学年は違う5人たが、それでも一緒にやれば早く終わるだろう。……と、沙樹は考えた訳ではない。ただ、休みの間もみんなに会えないのは辛いと考えたからだった。
「ならどっかで会おうぜ」
柳はそう言ってスマホを取り出した。
「俺、お前の連絡先知らねぇ」
沙樹に言うとスマホを出すように促す。
「あ、そういや私も知らない」
今思い出したと言うように結子もスマホを出す。その流れで貴裕も凪もスマホを出した。
沙樹のスマホには家族とBRのメンバー、柚子の連絡先しか入っていなかった。その中に結子たちの連絡先が登録された。そのことが嬉しくて、嬉しい気持ちが溢れてしまって顔が綻びる。
そんなことを思ってしまう自分に戸惑う沙樹。今までの自分とは違う過ごし方に違和感を覚えていた。だけどその違和感は、嫌なものじゃないとも感じていた。
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