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第1章
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『へぇ……夏休みに?』
夜、崇弘と電話で話す沙樹。電話の向こうの崇弘に今日のことを話していた。結子たちと夏休みに会って一緒に課題をやること。たまには息抜きに遊びに行くこと。家族とメンバー意外の名前がスマホに登録されたこと。沙樹にとっては驚きのことだったのだ。そのことを聞いて欲しいと思ったのだ。
ところが崇弘はその話を聞いて少し不機嫌になった。
「どう……したの?」
『いや。別に』
崇弘はそう言ったまま、電話を切った。
「なに?」
切られた電話にびっくりした沙樹は、スマホを見つめていた。
(なんで?)
何に対して不機嫌になったのか分からない崇弘に、沙樹は戸惑った。いつも沙樹の話に明るい声で頷く崇弘だったから、不機嫌になった声が耳から離れない。
「タカちゃん……」
もう一度かけ直すが、今度は電話に出ることすらしない。
「何に怒ってるの」
言ってくれないと分からない。こんなことは本当に初めてだった。
沙樹には崇弘の不機嫌さに戸惑うだけだった。
◇◇◇◇◇
崇弘は分かっていた。沙樹はまだ高校生。自分よりも友達を優先すべきだと。今まで友達がいなかったから、それは喜ぶべきことだと。分かっていても寂しいと感じていたのだ。
「カッコ悪ぃ……」
なんてカッコ悪いんだろうと思いながらも、不機嫌になってしまう。いつだって自分を優先にして欲しいという思いを、隠すのに必死だった。
「優樹菜ー」
優樹菜に電話を入れた崇弘の耳にため息混じりの優樹菜の声が聞こえる。
『なによ』
「俺のスケジュール、どうなってる?」
そう聞くと優樹菜から返答が返ってくる。
『それって休みのことを言ってるの?』
「まぁ……」
『当分、ないわよ』
「え……」
『てか、この前言ったよね。覚えてないの?』
呆れた優樹菜の声が崇弘に突き刺さった。優樹菜は零士の幼馴染みでバンドのマネージャーをしている。今はそれぞれのマネージャーもついているが、高校の時からの付き合いである優樹菜に連絡することの方が多かった。
「どっか休み……」
言い終わる前に優樹菜に『無理』と返事が返ってくる。
『なに?彼女?』
「え……」
『あんたに彼女が出来たことなんかお見通しなの。てか、みんな分かりやすいから』
優樹菜にとっちゃメンバー全員は分かりやすい性格しているらしい。
それに一度部屋で見られてると、真司から聞いている。
(そりゃそうか……)
輝にバレないかヒヤヒヤする。
『輝くんには言ってないわよ』
崇弘の思考が読めるのかそう言われた。
『輝くんに話したら大事よ?』
確かに輝は零士並のシスコンだ。沙樹とそういう関係になったと聞かされれば、どれ程の怒りを露にするだろう。
『……ねぇ』
電話越しに聞こえる優樹菜の声に、力なく「ん?」と答える。
『遊びならやめてあげなよ』
「え」
『崇弘がそんな軽い気持ちで女の子と付き合うなんてしないのは知ってるけど、まだ15歳でしょ。しかも友達の大切にしてる妹。なんでうちのメンバーは友達の妹に手を出すかな』
呆れた優樹菜は、零士のことを言ってる。優樹菜と零士は幼馴染みで子供の頃、親たちの勝手な話で『大きくなったら結婚させよう!』と言われていたらしい。
だからと言って優樹菜と零士は、お互いそんなことは考えてはいなかった。
零士は親友の妹である湊の妹。優樹菜は元メンバーである湊に惚れていたのだ。
『私は黙ってるけど、そのうち輝くんの耳に入るからね』
優樹菜に釘を刺された崇弘は何も言えなかった。
(会いてぇ……)
こんな風に思うなんてと、感じる。10も年下の女の子にここまで……と。
「ほんと、何やってんだか……」
ポツリと呟いた崇弘はスマホをテーブルに置いた。
◇◇◇◇◇
崇弘の声が気になってしまった沙樹は、もう一度かけ直す。だが、通話中なのか崇弘と繋がらない。気になって気になって仕方ない。
「もう、何なの……」
崇弘に会いたい。会って話をしたい。そう胸を締め付ける。
沙樹はスマホを握りしめて会えない崇弘を想った。
夜、崇弘と電話で話す沙樹。電話の向こうの崇弘に今日のことを話していた。結子たちと夏休みに会って一緒に課題をやること。たまには息抜きに遊びに行くこと。家族とメンバー意外の名前がスマホに登録されたこと。沙樹にとっては驚きのことだったのだ。そのことを聞いて欲しいと思ったのだ。
ところが崇弘はその話を聞いて少し不機嫌になった。
「どう……したの?」
『いや。別に』
崇弘はそう言ったまま、電話を切った。
「なに?」
切られた電話にびっくりした沙樹は、スマホを見つめていた。
(なんで?)
何に対して不機嫌になったのか分からない崇弘に、沙樹は戸惑った。いつも沙樹の話に明るい声で頷く崇弘だったから、不機嫌になった声が耳から離れない。
「タカちゃん……」
もう一度かけ直すが、今度は電話に出ることすらしない。
「何に怒ってるの」
言ってくれないと分からない。こんなことは本当に初めてだった。
沙樹には崇弘の不機嫌さに戸惑うだけだった。
◇◇◇◇◇
崇弘は分かっていた。沙樹はまだ高校生。自分よりも友達を優先すべきだと。今まで友達がいなかったから、それは喜ぶべきことだと。分かっていても寂しいと感じていたのだ。
「カッコ悪ぃ……」
なんてカッコ悪いんだろうと思いながらも、不機嫌になってしまう。いつだって自分を優先にして欲しいという思いを、隠すのに必死だった。
「優樹菜ー」
優樹菜に電話を入れた崇弘の耳にため息混じりの優樹菜の声が聞こえる。
『なによ』
「俺のスケジュール、どうなってる?」
そう聞くと優樹菜から返答が返ってくる。
『それって休みのことを言ってるの?』
「まぁ……」
『当分、ないわよ』
「え……」
『てか、この前言ったよね。覚えてないの?』
呆れた優樹菜の声が崇弘に突き刺さった。優樹菜は零士の幼馴染みでバンドのマネージャーをしている。今はそれぞれのマネージャーもついているが、高校の時からの付き合いである優樹菜に連絡することの方が多かった。
「どっか休み……」
言い終わる前に優樹菜に『無理』と返事が返ってくる。
『なに?彼女?』
「え……」
『あんたに彼女が出来たことなんかお見通しなの。てか、みんな分かりやすいから』
優樹菜にとっちゃメンバー全員は分かりやすい性格しているらしい。
それに一度部屋で見られてると、真司から聞いている。
(そりゃそうか……)
輝にバレないかヒヤヒヤする。
『輝くんには言ってないわよ』
崇弘の思考が読めるのかそう言われた。
『輝くんに話したら大事よ?』
確かに輝は零士並のシスコンだ。沙樹とそういう関係になったと聞かされれば、どれ程の怒りを露にするだろう。
『……ねぇ』
電話越しに聞こえる優樹菜の声に、力なく「ん?」と答える。
『遊びならやめてあげなよ』
「え」
『崇弘がそんな軽い気持ちで女の子と付き合うなんてしないのは知ってるけど、まだ15歳でしょ。しかも友達の大切にしてる妹。なんでうちのメンバーは友達の妹に手を出すかな』
呆れた優樹菜は、零士のことを言ってる。優樹菜と零士は幼馴染みで子供の頃、親たちの勝手な話で『大きくなったら結婚させよう!』と言われていたらしい。
だからと言って優樹菜と零士は、お互いそんなことは考えてはいなかった。
零士は親友の妹である湊の妹。優樹菜は元メンバーである湊に惚れていたのだ。
『私は黙ってるけど、そのうち輝くんの耳に入るからね』
優樹菜に釘を刺された崇弘は何も言えなかった。
(会いてぇ……)
こんな風に思うなんてと、感じる。10も年下の女の子にここまで……と。
「ほんと、何やってんだか……」
ポツリと呟いた崇弘はスマホをテーブルに置いた。
◇◇◇◇◇
崇弘の声が気になってしまった沙樹は、もう一度かけ直す。だが、通話中なのか崇弘と繋がらない。気になって気になって仕方ない。
「もう、何なの……」
崇弘に会いたい。会って話をしたい。そう胸を締め付ける。
沙樹はスマホを握りしめて会えない崇弘を想った。
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