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愛するということ
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あたしの顔を見つめたままのヨシキ。あたしは彼の返事を聞かないまま、屋上を出る。屋上の入り口を出た時、後ろを振り返った。ヨシキは戸惑いながら、あたしを追って来た。そして屋上の鍵を閉め、あたしとヨシキは学校を飛び出した。
向かった先はうちのアパート。
母親はもういなかった。母親の行動範囲は分かってる。夜、身体を売る仕事をして朝方家に戻り男とヤり、昼前に他の男のところへ行く。そして夜はまた別の男に身体を売る。
だから今、アパートには母親はいない。
「ここ……」
後ろでヨシキが遠慮がちに言う。
「あたしの家」
そう言うと、あたしは自分の部屋のドアを開けた。その部屋にヨシキを入れて、キッチンから缶コーヒーを持ってくる。
「はい。こんなもんしかないけど」
そう言ってヨシキに渡す。それを受け取ったヨシキは、あたしの顔を見つめていた。
「……言っとくけど、あたし、あんたに恋愛感情持ってないから」
そう言って一口コーヒーを飲むと、制服を脱ぎだした。その様子を目を逸らすことなく見ているヨシキ。あたしもヨシキから目を離さない。
ヨシキの前に座り、あたしはヨシキの学ランに手をかけた。その様子をヨシキも黙って見ていた。
「ジュンコさん」
ヨシキがそう声を出す。そんなヨシキの声に「ん」と答えると、ヨシキの目を見る。
「……なんで?」
「え」
「ジュンコさん、大樹さんを……」
ヨシキはそう言った。その言葉にあたしは首を横に振る。
「違うよ。あたしは大樹を好きじゃない。大樹もあたしを好きじゃない。あたしとアイツにあるものは、無感情だけだから」
そう言ってヨシキの手を取り、あたしの胸へと持っていった。
「大樹のことは関係ない。今、あたしだけ見て……」
その言葉を発したあたしに、ヨシキはあたしを押し倒した。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊
「……ンッ、……あ……ッ」
甘い声が部屋の中に充満する。耳にこびり付くその声。
とても自分の声だとは思えなかった。そんな声を出せるなんて思えなかった。
大樹とヤっても、そんな声は出したことない。だからこんな声が出る自分に、驚いていた。
「……ジュンコさん」
あたしはこの名前が嫌いだった。でもヨシキに呼ばれるこの時は、とても愛しいものに感じた。
あたしの胸の突起を口に含み、不器用に口の中で転がす。その不器用さが、あたしは嬉しかった。
この子の初めての相手が、あたしだってことに。
「ヨシキ……ッ」
あたしの身体を、丁寧に舐め上げていく。その舌遣いに、あたしは夢中になっていく。
「……ヨシキ。キス、して……」
あたしはヨシキにキスをせがんだ。その言葉に頷いて、あたしの唇を塞いだ。
唇が触れて、あたしはヨシキの口の中に自分の舌を入れ込んだ。ヨシキの口内で、あたしはヨシキの舌を追い掛け回した。それに答えるように、ヨシキの舌が絡みつく。
「……っ……んッ……あァ……」
あたしの甘い声と、ヨシキの熱く切ない声。ふたりの声が絡みあう。その行為が、あたしの胸の中に熱いものを込み上げさせる。
こんな想い、初めてだった。セックスして、こんな想いをするのは初めてだった。
終わって欲しくない。
もっと感じていたい。
そう思うのは初めてだった。
大樹とのセックスでは、感じることのなかった感情。大樹とのセックスでは、苦痛しかなかった。
でも。
ヨシキはそうじゃなかった。
上手いか下手かっていったら、下手……なんだと思う。
でも、そうじゃない。ヨシキの手は優しい。その手に触れられてるだけでも、あたしの胸の中は熱くなる。だから気持ちいいと、感じているのかもしれない。
「ヨシキ……、もっと……もっと、シて……」
そう言っていたあたしに、ヨシキはあたしの中に入り込む。中に入れられたモノが熱い。あたしの中で大きくなってるのが分かる。
「ジュンコさん……ッ」
あたしを抱きしめて、ヨシキは自分の欲をあたしの中に吐き出した。
ベッドに横たわる、ヨシキの髪に触れる。
柔らかい髪をしている。金色の髪。散々染めちゃって痛んでいる。
その髪に触れて、優しく撫で上げる。
「ヨシキ……」
そう名前を呼ぶと、目を開けてこっちを見る。あたしの頬に触れてきた手に触れる。
「……ごめん」
「なに」
「俺……、余裕なくて……」
「別に大丈夫よ」
ヨシキが可愛く見えた。ちゃんと謝るこの子が可愛く見えた。大樹とは大違いだった。
「ヨシキ」
あたしはもう一度、名前を呼んで抱きしめて眠った。
向かった先はうちのアパート。
母親はもういなかった。母親の行動範囲は分かってる。夜、身体を売る仕事をして朝方家に戻り男とヤり、昼前に他の男のところへ行く。そして夜はまた別の男に身体を売る。
だから今、アパートには母親はいない。
「ここ……」
後ろでヨシキが遠慮がちに言う。
「あたしの家」
そう言うと、あたしは自分の部屋のドアを開けた。その部屋にヨシキを入れて、キッチンから缶コーヒーを持ってくる。
「はい。こんなもんしかないけど」
そう言ってヨシキに渡す。それを受け取ったヨシキは、あたしの顔を見つめていた。
「……言っとくけど、あたし、あんたに恋愛感情持ってないから」
そう言って一口コーヒーを飲むと、制服を脱ぎだした。その様子を目を逸らすことなく見ているヨシキ。あたしもヨシキから目を離さない。
ヨシキの前に座り、あたしはヨシキの学ランに手をかけた。その様子をヨシキも黙って見ていた。
「ジュンコさん」
ヨシキがそう声を出す。そんなヨシキの声に「ん」と答えると、ヨシキの目を見る。
「……なんで?」
「え」
「ジュンコさん、大樹さんを……」
ヨシキはそう言った。その言葉にあたしは首を横に振る。
「違うよ。あたしは大樹を好きじゃない。大樹もあたしを好きじゃない。あたしとアイツにあるものは、無感情だけだから」
そう言ってヨシキの手を取り、あたしの胸へと持っていった。
「大樹のことは関係ない。今、あたしだけ見て……」
その言葉を発したあたしに、ヨシキはあたしを押し倒した。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊
「……ンッ、……あ……ッ」
甘い声が部屋の中に充満する。耳にこびり付くその声。
とても自分の声だとは思えなかった。そんな声を出せるなんて思えなかった。
大樹とヤっても、そんな声は出したことない。だからこんな声が出る自分に、驚いていた。
「……ジュンコさん」
あたしはこの名前が嫌いだった。でもヨシキに呼ばれるこの時は、とても愛しいものに感じた。
あたしの胸の突起を口に含み、不器用に口の中で転がす。その不器用さが、あたしは嬉しかった。
この子の初めての相手が、あたしだってことに。
「ヨシキ……ッ」
あたしの身体を、丁寧に舐め上げていく。その舌遣いに、あたしは夢中になっていく。
「……ヨシキ。キス、して……」
あたしはヨシキにキスをせがんだ。その言葉に頷いて、あたしの唇を塞いだ。
唇が触れて、あたしはヨシキの口の中に自分の舌を入れ込んだ。ヨシキの口内で、あたしはヨシキの舌を追い掛け回した。それに答えるように、ヨシキの舌が絡みつく。
「……っ……んッ……あァ……」
あたしの甘い声と、ヨシキの熱く切ない声。ふたりの声が絡みあう。その行為が、あたしの胸の中に熱いものを込み上げさせる。
こんな想い、初めてだった。セックスして、こんな想いをするのは初めてだった。
終わって欲しくない。
もっと感じていたい。
そう思うのは初めてだった。
大樹とのセックスでは、感じることのなかった感情。大樹とのセックスでは、苦痛しかなかった。
でも。
ヨシキはそうじゃなかった。
上手いか下手かっていったら、下手……なんだと思う。
でも、そうじゃない。ヨシキの手は優しい。その手に触れられてるだけでも、あたしの胸の中は熱くなる。だから気持ちいいと、感じているのかもしれない。
「ヨシキ……、もっと……もっと、シて……」
そう言っていたあたしに、ヨシキはあたしの中に入り込む。中に入れられたモノが熱い。あたしの中で大きくなってるのが分かる。
「ジュンコさん……ッ」
あたしを抱きしめて、ヨシキは自分の欲をあたしの中に吐き出した。
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柔らかい髪をしている。金色の髪。散々染めちゃって痛んでいる。
その髪に触れて、優しく撫で上げる。
「ヨシキ……」
そう名前を呼ぶと、目を開けてこっちを見る。あたしの頬に触れてきた手に触れる。
「……ごめん」
「なに」
「俺……、余裕なくて……」
「別に大丈夫よ」
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あたしはもう一度、名前を呼んで抱きしめて眠った。
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