紅い薔薇 蒼い瞳 特別編

星河琉嘩

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ほんとは好きなだけなのに

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 冬休みに入ってから、私は毎日シュンくんと会った。ということは、必然的にヨシキとも会うってことで、それが楽しみだった。
 シュンくんには悪いと思ってる。ヨシキを好きなまま、付き合ってるんだから。
 でも仕方ないの。
 利用してでも私は、ヨシキの傍にいたい。シュンくんといれば、ヨシキとずっと一緒にいられるでしょ。


 冬休みに入っても、ヨシキは元気がなかった。いつも手にしている何かを見つめては、ぼーとしていた。そんなヨシキを心配して、シュンくんはヨシキの家に行くから、私もそれに着いていく。
 初めてヨシキの家に行った時は、かなりびっくりした。
 話には聞いていた。
 ヨシキはあの林総合病院の院長の息子だって。ただその息子がどんな生活しているのかって、想像は出来なかった。


「ここがヨシキの家?」
 ポツリと呟いた私に、シュンくんは苦笑い。
「アイツの家のことには、あまり口出しするなよ。機嫌悪くなる」
 そう言って大きな門を潜る。
 シュンくんは勝手知ったると言った感じで、ドンドン家の中に入って行く。そんなシュンくんを見た家の人が、「いらっしゃいませ」と言う。そう言った人たちが、ヨシキの家族じゃないのは一目瞭然だった。


「ヨシキ坊ちゃんはお部屋においでです」
 そう教えてくれた。
 ヨシキの家は!メイドさんがいる家だった。そのメイドさんに「サンキュ」と言って、シュンくんは階段を上っていく。


 ──大きな家。
 迷いそう。


 そう思ったあたしの手を取り、歩いてくれるシュンくん。2階の奥の部屋の前に着くと、ドアを勝手に開けた。そこには呆然と、天井を眺めるヨシキがいた。


「ずっとこうなんだ」
 そう言ってシュンくんは、ヨシキに蹴りを入れていた。
「おい。いい加減にしろっ」
 ドカッと何度か蹴ったシュンくんを、睨みつけるヨシキ。
 そのヨシキの顔が怖かった。


「ヨシキ。お前に言っとく。俺、マミと付き合うことにしたから」
 その言葉にヨシキが、私を見た。
 そして……。





「そうか」





 その言葉が私の心に傷をつけた。自分で選んだことなのに、こんなにも傷付くものなんだ。
 それが悔しかった。
 それが痛かった。



     ◆◆◆◆◆


  
 ヨシキの家を出た後、私はシュンくんと一緒に遊ぶ。何をするわけでもないけど、繁華街に出て遊んでいた。毎日晩くまで遊び歩いていた。


 私の家は父親が愛人を囲ってる。そのことに母親は、見て見ぬフリをしているのは、自分にも愛人がいるから。それに対して私も妹も何も言わない。だから好き勝手している。

 シュンくんの家も、放任主義の家らしい。だから誰も止める人はいなかった。
 シュンくんとそういう関係になったのは、付き合いだして1週間もしない日だった。
 うちに私を迎えに来たシュンくんを、家に中に招き入れた。たまたま誰もいなくて、私はまだ出かける準備が出来てなくて、シュンくんを私の部屋に入れた。
 でもそのまま話をしていたりして、時間が過ぎていった。そして急に言葉数が少なくなったシュンくんが、私を抱き寄せてキスをして来た。


 シュンくんのキスは嫌いじゃない。
 寧ろ好き。


 だけどその相手が、ヨシキだったらどんなに幸せかなって、思うことがある。
 それでもシュンくんを拒めないのは、シュンくんとの繋がりがなくなると、ヨシキといられなくなるからっていう思いからで、私はシュンくんを拒むことはしなかった。


 だから、この日も拒めなかった。
 私を抱き寄せたシュンくんは、そのまま私をベッドに押し倒した。
 初め、何が起こったのか分からなかった。でもシュンくんの眼差しが、私を見るその目が、とても愛しく感じた。
 私に何度もキスをしては、私の服を脱がしていく。その行為はぎこちなくて、私もどうしたらいいのか分からなくて、ただシュンくんに身を委ねていた。


 シュンくんは優しかった。優しく私の身体に触れてきた。
 だから嫌じゃなかった。


 嫌じゃなかったんだけど、やっぱり頭の中には、ヨシキが浮かんできてしまう。




「シュンくん……ッ」
 シュンくんの背中を、ぎゅっと抱きしめて名前を呼ぶ。ヨシキのことなんか、忘れさせてっていうように。


 優しく優しく、私の中に入ってくるシュンくん。痛みも忘れる程、私を好きだって言ってくれる。


 ヨシキだったら、こんなこと言うかな。
 言わないかもな。
 そんなことを思って、私はシュンくんの背中を必死で抱きしめた。


 行為が終わると、シュンくんは優しく私を抱きしめてくれた。
「ごめん」
 そう言いながらも、私を抱きしめてくれる。
「なんで謝んの」
 隣にいるシュンくんにそう言う。
「だって、こういうのって合意じゃないと……」
 モゴモゴと言う、シュンくんが可愛かった。だからシュンくんを抱きしめた。
「大丈夫だから」
 そう言っては笑った。




 シュンくんを傷付けちゃダメだね。
 そう思って、私はヨシキを忘れようと思った。シュンくんを好きにならなきゃって。





 でも、それが出来なかった……。






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