【完結】淋しいなら側に

サイ

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 遠慮がちに、時暁は千の腰に手を回した。千の腕が無いので、気を遣ってくれているらしい。
 千は残った腕を時暁の肩に回した。全身が覚えている、時暁の肌、髪、温度、そして感触……。
「千……」
 口付けは、深く、深く重なった。お互いの存在を確かめ合うように絡め合い、吸った。時暁は余裕無く、千の舌を吸い、唇を吸い、絶え間なく千をむさぼった。千も夢中でそれに応えた。息苦しくなって呼吸が荒く漏れても、それは止まらなかった。唾液が混じり合い、唇を伝って落ちる。
 口付けがお互いの身体に火をつけるのに時間はかからなかった。
「時暁さま……」
 濡れた目で見つめられ、時暁は一瞬戸惑った。
「千、お前は病み上がりだから」
「分かってて誘ったんですか?ひどい」
「誘った、って……」
 時暁は言葉に詰まる。
 千が身体を寄せる。固くなった前の部分を時暁に押しつけるように、ねだるように身体を密着させた。時暁のごくりとつばを飲む音が聞こえる。時暁のものもまた、固く大きくなっていた。
「千……具合が悪くなったら、俺が医者に怒られよう」
 思わず吹き出す千をふわりと抱き上げる。
「———痩せたな」
 言われて、千は赤くなった。自分の体重など、覚えていたのだろうか。
 身体を寝台におろされる。起きあがろうとして、片手だったためにうまくいかない。それを見た時暁がゆっくりと首筋に手を這わせた。
「そのまま、寝ていろ」
 首筋に這わされた手が、襟を割って入ってくる。もう一方の手が、帯をほどく。一気に千の前は開かれ、裸体が顕わになった。
 時暁は浴びせるように千の身体に口付けをした。目、頬、耳、首筋……そしてまた、深い口付け。
 千も負けじと時暁の帯を解いた。利き手なので片手でも何とか解ける。
「すごい特技だな」
 からかうような時暁に、むっとしてその唇を軽く噛んだ。時暁の目の底に、ちらりと炎が宿ったのが見える。
「あっ………」
 急に身体を離したかと思うと、時暁は千の胸の先端を愛撫し始めた。舐めて、吸って、時折少し強めに噛み付かれて、そのたびに千の口から息と共に声が漏れてしまう。
「つっ……」
「痛いか?その割には、ほら」
 時暁が千に知らせるように、千のものをつかんだ。先走りによってもうかなり濡れているそこを、ゆっくりとなで始めたのだ。
 胸とそことの刺激に、千は時暁に触れる余裕など無くした。ただ敷布を握りしめ、必死でこらえるしかない。
「ふっ、……う、はあっ」
 胸への少し痛いような鋭い刺激が、ちょうど下への愛撫と連鎖されてたまらなくなっていく。
「いや、だ。———時、あ……さま」
「嫌か?」
「はあっ……あ」
 試すように、きつく下を握られる。もう限界に近いというのに、それを察してかわざと緩慢に愛撫して、終わらせてくれない。
 千は涙を流して、必死で頼んだ。
「お願いです。もう……もう、いや」
「なにが嫌?もうやめる?」
「ひどっ……ひど、い———時暁さま、お願い……」
 思わず時暁の背中に爪を立ててしまう。しかし時暁は少しも変わらず、おもしろそうに千に軽く口付けた。
「お願い、何だ?」
 千は歯を食いしばり、必死で時暁を睨みつけた。しばらく会わないうちに、なんと意地の悪い人になったのか。
 だが、涙目になった目に迫力は無かった。
 面白がって時暁は親指で先端を刺激する。その上もう片方の手が、千の後ろを触り始めたのだ。
「も……いか、せ———て。もぉ……あ、ああっ」
 千が懇願したのと同時に、時暁の身体が動き、時暁は千のものをすっぽりと口に咥え込んだ。
「やっ、あ———やああ」
 急に始まった熱く粘ついた刺激に、耐えられなくなって天を仰ぐ。先端を沿うように舐められ、縊れを吸われる。後ろへの指の刺激も加わりながら、唇と舌で絶え間なく責め立てられる。
 時暁の舌は巧みに動いた。いつ覚えたのか、千より余程うまいのではないかと思う。
「ふっ、は、あ、あああ」
 すぐに終わりは訪れた。時暁が誘うように吸い、千は我も分からず放ってしまう。
 息を乱しながら、自分が放ったものが時暁の口に入ったことを知って、千は真っ赤になった。
「まさか……飲んで?」
「飲んだ」
「なんて事を!」
「お前も飲むだろ」
「お、俺は良いんです!」
 恥ずかしくなって千は寝台に突っ伏した。顔がまともに見れない。
「そんなに恥ずかしいか?」
 分からない、と言いながら時暁は千の上に覆い被さった。ゆっくりと、後ろの蕾への刺激を再開する。
「あっ……」
「身体、大丈夫か?」
「平気、です……」
 千の放った滑りも借りて、時暁の指は次第に本数を増やす。時暁の手が、再び千の熱を呼び起こした。
「すごいな……。千のここは、誘ってるみたいにひくひくしてる」
「い、言わないで」
「何故?俺の好きなところの一つなのに。中は熱くて、とろけそうで」
「もう、黙って……きて」
 千の余裕の無くなってきた声に、誘われるように時暁は身体を起こした。入り口に、ゆっくりと自分のものをあてがう。あまりに久しぶりで、壊してしまうのではないかという心配は、すぐに消えた。
 十分にほぐされた千の身体は、ゆっくりとでも時暁を受け入れた。やがて、全部入ってゆく。
 挿入を終えて、時暁は千を抱き起こした。
「ふっ……」
 圧迫に思わず声が漏れる。千は時暁に向かい合い抱えこまれるようにして座った。
 つながっている。
 奥底までつながっている充足感が、体中を満たした。
「時暁様」
「千……」
「ずっとこうしていたいです」
「俺もだ。いっそ死ぬまでこのまま、つながっていようか」
 耳元でささやかれるとどきりとする。きゅっと後ろが締まったのか、時暁が小さくうめき、千の首筋に唇を落とす。
 つながっているだけで動かなくても、ささやかな快感と満ち足りた感覚がずっと周っている。次第に溜まらなくなって、千は息を荒くした。
「時暁様……」
「何だ、もうか?ずっとこうしているんだろう」
「どうして、今日、は……そんなに」
 いじめるのかと、そこまでは言えなかった。
「———っ」
 時暁が急に口付けをしたからだ。少し苦い、優しい口付け。
「すまぬ。———こういうのを、嫉妬というのか」
「嫉妬……?」
「黒王は、お前の目の前で死ぬことで、お前の記憶に自分を焼き付けたのだ。それが……口惜しい」
「時暁様……」
「千……誰にも渡さない。もう、誰にも」
 深い口付けの後、小さくいくぞ、と呟かれる。
「はっ、あ、ああ———」
 何度も貫かれ、敏感な部分に打ち付けられる。電撃が全身を駆けめぐり、何も考えられなくなる。片手のせいで、衝撃はまともに全身に伝わってきた。
「ときあ、き様……時…あっは、ああ!」
 うわごとのように嬌声の合間に必死で名を呼ぶ。
 消えないで。ずっとつながっていて。
 動きは激しくなっていく。お互いにもう、相手以外見えていない。必死で唇にむさぼるように吸い付く。
「うっ……せ、ん」
 時暁が低くうなって、千の中に放った。同時に千も二度目の絶頂を迎える。
 ここがどこなのか、何も分からない。
 ただあるのは、満ち足りた気持ちだけ。
 帰ってきた。
 時暁の腕の中に、帰ってきた……。
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