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しおりを挟む「ギュイイイイイイイイイイイ」
タッタッタッタッ
〝竜〟に向かって走り込んでいくユウキ。
とーー、頭上から尾を叩きつけられる。
「〝幽霊化〟ーー!!」
すんでのところで、透明化して攻撃を回避ーー
「ギュイッ!?」
「へっーー!ずいぶんと驚いてるみてぇだが、まだまだ序の口だぜ!?」
〝竜〟の懐に入り込んだユウキは、咄嗟に〝幽霊化〟を解除。
「〝魔気吸収〟ーー!」
ズオオオッ、と触れた手から〝竜〟に流れている魔気を吸い取りあげるユウキ。
「ギュオオオオオオオオオッ!!」
ジタバタと暴れ抵抗する〝竜〟。
「おらっ!暴れんな!!」
〝竜〟がユウキにかぎ爪で攻撃する直前ーー、
「〝幽霊化〟ーー!!」
ユウキは透明になり、〝竜〟は自分のかぎ爪での攻撃を自分自身の腹をかすめた。
「すごい……あんな悍おぞましい〝竜〟を相手にここまで立ち回れるなんてーー、本当にユウキさんって何者なのーー!?」
素人目にも見えるユウキの圧倒的な立ち居振る舞いに、驚きを隠せないセシリア。
「本当ーーすごい。」
そしてそれは、ポピィもまた同様であった。
(〝潜伏〟を使うのも無しではないが……その場合アイツらに矛先が向くだろうーー。メンドクセェけど、〝アレ〟使うかーー!!)
あまりに膨大な量の魔気を持つ〝竜〟。
ユウキは〝幽霊化〟を解除して〝竜〟の油断を誘う。
「おいどうした化け物!?そんなデケェなりしてもうお手上げか?」
指をクイックイッと動かし挑発するユウキ。
明らかに〝竜〟もまた、ユウキに対しての苛立ちを露わにしていたーー。
「ちょ……ちょっと油断しすぎじゃないユウキさん!?」
そんなポピィの心配は、見事に裏切られる形となったーー。
「グオオオオオオオオオオッーー!!」
一瞬でユウキに間合いを詰める〝竜〟そして
ザシュッーー
ユウキの腑はらわたを〝竜〟のかぎ爪が貫通するーー。
「っーー!!ユウキさん!!」
しかしーー、
「グオオオオオオオオオオッーー!?!?」
明らかにダメージを受けた反応を示したのは〝竜〟の方であったーー。
「《ダメージ反転》……どうだ、自分の爪の味は?結構いてぇだろ?」
先程貫通したはずのユウキの腹部は、見れば血の一滴すら出血していなかった。
「あ、あれーーえ、どう言うこと?」
目を白黒させるポピィの隣では、ことさら目を大きく開けて驚きを隠せないセシリアの姿がーー。
「あれはーー魔族が使うとされる《魔術反転》の一種……でしょうか?でも魔族でさえも扱うのが難しい技を一体どうやってーー?」
理解に追いつかない二人を他所に、ニヤリと笑みを浮かべるユウキ。
そして、〝竜〟が怯む一瞬の隙を、ユウキは逃さなかったーー。
「お見舞いだ!喰らえっーー!!」
〝竜〟の顔面まで行ったユウキは両拳に力を込めてーー
「鼻フーーーーック!!!」
〝竜〟の鼻の穴に、両の手を突っ込む。
「グアアアアアアアアアアアッーー!!!!!」
さらに怯む〝竜〟。
ユウキはさらに追撃として、
「喰らえっーー〝奥義〟!!クサ玉だああああああ!!」
右ポケットから取り出した腐った卵を〝竜〟の口の中に放り込むユウキ。
ゴクリッ、と呑み込む〝竜〟
「グ……グアオオオオッ!?」
涙目でジタバタする〝竜〟。
最後にトドメとしてーー
「喰らえ〝神・奥義〟!!目潰し!!」
またも左ポケットから取り出した唐辛子の粉末を、六つの眼のある〝竜〟にふんだんにかけまくるユウキーー。
とうとう耐えきれなくなったのかーー
「グアアアアアアアアアアアッ!!グオオオオオオオオオオッ!!!」
体を倒してゴロゴロと暴れ回る〝竜〟。
そんな様子を、先程の驚き様とは対照的にジト目をしながらーー、
「……………………本当に何者なの?ユウキさんって?」
「あはははっ…………………ごめん、私もわからない」
「にゅにゅ~(ナニあれ?)」
理解が及ばず目が点になる一向であったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
B6階層ーー
ポピィ達とは離れた所に、一人思い足取りで行動する者がいた。
「ハァ……ハァ……レックス、ゼル……」
槍使いのアレンは、ペシャンコになった槍を杖代わりに突きながら、なんとか歩みを進めていたーー。
「先ほどから〝竜〟と〝何者か〟が戦っている……。無事なのか……?セシリアーー」
ボロボロの体で、口端からは血が溢れている。
よほどの激闘を繰り広げていたのだろう……
「Bランクの俺でさえ、全く歯が立たなかった……レックスもゼルもだ……おそらく、〝Sランカー〟でなければ奴は倒せない……クッーー」
歯噛みし、苛立ち混じりに槍を突く。
(待っていろ……セシリア。絶対に死なせんーー!!クローバー家の名にかけて……!!)
その瞳はまだーー、絶望の色に染まってはいなかったーー。
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