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第8章:皮肉な再会、過去を捨てた私
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レルナ村が経済の中心として注目を集める中、隣国との交易を促進するための国際商談会が王都で開かれることになった。レルナ・ヴェリーナ生産組合も、正式な団体として招待された。組合長である私が、代表として参加するのは当然の流れだった。
カイルや村人たちに見送られ、私は数年ぶりに王都の土を踏んだ。追放された日の寂しい姿とは違う。今は、自信に満ちた一人の実業家として、堂々と胸を張って歩ける。
商談会の会場は、かつて私が婚約者として何度も訪れた王宮の一室だった。きらびやかな装飾も、華やかな衣装をまとった貴族たちも、何も変わっていない。ただ、そこにいる私と、私を見る周りの目だけが、すっかり変わってしまっていた。
「あれは……レルナ村の……」
「ヴェリーナを生み出した、アメリア様だ」
ひそひそと交わされる会話が耳に入る。もはや私を「追放された悪役令嬢」として見る者はいない。皆、畏敬と好奇の眼差しで、私という新しい権力者を値踏みしていた。
そして、その視線の中に、見覚えのある顔を見つけた。
レオナルド・フォン・アルドレア。私の、元婚約者。
彼は、数年前よりもやつれていた。顔色も悪く、その瞳には焦りの色が浮かんでいる。国の経済が傾き、貴族たちの支持も失いかけているのだろう。私の姿を認めた彼の顔が、驚きと困惑、そしてわずかな後悔に歪んだ。
彼は、側近を振り払って私の元へ近づいてきた。
「……アメリア。君だったのか。あのヴェリーナというのは、君が……」
「ええ、左様ですわ、レオナルド殿下。ご無沙汰しております」
私は完璧な淑女の笑みを浮かべて返した。その態度が、彼をさらに混乱させているようだった。
「なぜ……なぜ君が、あのような辺境で……。いや、そんなことはどうでもいい! アメリア、頼む! 君の助けが必要だ。ヴェリーナの利益を、国のために……いや、私のために役立ててくれ! そうすれば、過去の過ちは水に流し、再び私の隣に……」
その見え透いた懇願に、私は思わず笑ってしまった。くすくすと、喉の奥で鳴るような笑い声。レオナルドは、自分が馬鹿にされていると気づき、顔を赤らめる。
「何がおかしい!」
「おかしいですわ。殿下は、何もわかっていらっしゃらない」
私は一歩、彼に近づき、静かに告げた。周りの貴族たちが、固唾を飲んで私たちの会話に聞き入っている。
「私を捨てた時点で、貴方に未来はないのですよ」
私の言葉は、刃のように彼の心を切り裂いたようだった。彼は言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「ヴェリーナは、私のものです。レルナ村の皆のものです。貴方や、この国に搾取されるために作ったのではありません。私たちは、私たちの力で未来を切り開きます」
私は彼に背を向け、商談を進めるために集まっていた他国の商人たちの方へ歩き出した。彼らは、今の一部始終を見て、私の胆力とヴェリーナの独立性を再認識しただろう。交渉が、より有利に進むはずだ。
すれ違いざま、私はレオナルドに最後の言葉を投げかけた。
「ちなみに殿下、貴方が私を断罪した理由である『平民への暴言』ですが、あれは濡れ衣です。本当に私を追い出したかった理由は、ご自身の無能さが露呈するのが怖かったから……ではありませんこと?」
彼の喉が、ひゅっと鳴るのが聞こえた。
もう、彼に用はない。過去は過去。私は、前だけを向いて進むのだ。
カイルや村人たちに見送られ、私は数年ぶりに王都の土を踏んだ。追放された日の寂しい姿とは違う。今は、自信に満ちた一人の実業家として、堂々と胸を張って歩ける。
商談会の会場は、かつて私が婚約者として何度も訪れた王宮の一室だった。きらびやかな装飾も、華やかな衣装をまとった貴族たちも、何も変わっていない。ただ、そこにいる私と、私を見る周りの目だけが、すっかり変わってしまっていた。
「あれは……レルナ村の……」
「ヴェリーナを生み出した、アメリア様だ」
ひそひそと交わされる会話が耳に入る。もはや私を「追放された悪役令嬢」として見る者はいない。皆、畏敬と好奇の眼差しで、私という新しい権力者を値踏みしていた。
そして、その視線の中に、見覚えのある顔を見つけた。
レオナルド・フォン・アルドレア。私の、元婚約者。
彼は、数年前よりもやつれていた。顔色も悪く、その瞳には焦りの色が浮かんでいる。国の経済が傾き、貴族たちの支持も失いかけているのだろう。私の姿を認めた彼の顔が、驚きと困惑、そしてわずかな後悔に歪んだ。
彼は、側近を振り払って私の元へ近づいてきた。
「……アメリア。君だったのか。あのヴェリーナというのは、君が……」
「ええ、左様ですわ、レオナルド殿下。ご無沙汰しております」
私は完璧な淑女の笑みを浮かべて返した。その態度が、彼をさらに混乱させているようだった。
「なぜ……なぜ君が、あのような辺境で……。いや、そんなことはどうでもいい! アメリア、頼む! 君の助けが必要だ。ヴェリーナの利益を、国のために……いや、私のために役立ててくれ! そうすれば、過去の過ちは水に流し、再び私の隣に……」
その見え透いた懇願に、私は思わず笑ってしまった。くすくすと、喉の奥で鳴るような笑い声。レオナルドは、自分が馬鹿にされていると気づき、顔を赤らめる。
「何がおかしい!」
「おかしいですわ。殿下は、何もわかっていらっしゃらない」
私は一歩、彼に近づき、静かに告げた。周りの貴族たちが、固唾を飲んで私たちの会話に聞き入っている。
「私を捨てた時点で、貴方に未来はないのですよ」
私の言葉は、刃のように彼の心を切り裂いたようだった。彼は言葉を失い、ただ立ち尽くす。
「ヴェリーナは、私のものです。レルナ村の皆のものです。貴方や、この国に搾取されるために作ったのではありません。私たちは、私たちの力で未来を切り開きます」
私は彼に背を向け、商談を進めるために集まっていた他国の商人たちの方へ歩き出した。彼らは、今の一部始終を見て、私の胆力とヴェリーナの独立性を再認識しただろう。交渉が、より有利に進むはずだ。
すれ違いざま、私はレオナルドに最後の言葉を投げかけた。
「ちなみに殿下、貴方が私を断罪した理由である『平民への暴言』ですが、あれは濡れ衣です。本当に私を追い出したかった理由は、ご自身の無能さが露呈するのが怖かったから……ではありませんこと?」
彼の喉が、ひゅっと鳴るのが聞こえた。
もう、彼に用はない。過去は過去。私は、前だけを向いて進むのだ。
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