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第9章:愚者の暴挙、価値が力を打ち砕く
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王太子との再会は、王国内の保守的な貴族たちを酷く刺激した。
「あの女、生意気にも王太子殿下に恥をかかせたそうだ!」
「辺境の農民どもと組んで富を独占し、国に貢献しようとしない!」
「けしからん! そもそも果実なぞという不確かなもので得た富だ。すべて国の管理下に置き、我ら貴族が正しく分配すべきだ!」
レオナルドを操り、私を追放した張本人であるマルティン辺境伯爵を中心に、彼らは邪な計画を企てた。それは、「果実栽培の国有化」という名目での、武力によるヴェリーナ畑の接収だった。
彼らは王太子に圧力をかけ、国の騎士団を動かす許可を取り付けた。正義は我にあり、と信じて。
その情報が私の耳に入ったのは、騎士団がレルナ村へ向けて出発する数日前のことだった。私が王都や他国に張り巡らせた情報網が、正確に敵の動きを捉えていたのだ。
カイルは血相を変えて私の元へ走ってきた。
「アメリアさん! 騎士団がこっちに向かってるって本当か!? どうするんだ、俺たちじゃ歯が立たない!」
村人たちの間にも動揺が広がる。無理もない。相手は、国の正規軍なのだ。農民である我々が、武器を持って立ち向かえるはずがない。
だが、私は冷静だった。むしろ、この時を待っていた。
「カイル、皆さん、落ち着いてください。武器を取る必要はありません。畑からも、家からも、一歩も出ないでください」
「しかし……!」
「いいですか。これは、力と力のぶつかり合いではありません。価値と価値の戦いです。そして、勝つのは私たちです」
私はすぐさま行動に移した。かねてより親交を深めていた隣国、レミア帝国の皇女クラウディア様に、緊急の連絡を入れたのだ。彼女は聡明で、ヴェリーナの真の価値を理解している、私の最も信頼するパートナーだった。
数日後、マルティン辺境伯爵率いる騎士団が、々しい軍馬の蹄の音を響かせながらレルナ村に到着した。彼らは村を取り囲み、畑を接収しようと構える。
マルティン辺境伯爵が、馬上で高らかに宣言した。
「国王の名において命ずる! この村のヴェリーナに関するすべての権利を、国が管理する! 逆らう者は、反逆者として処罰する!」
村人たちは恐怖に震え、家の窓から息を潜めて様子をうかがっている。
その時、私が一人、伯爵の前に進み出た。
「お待ちいただきたい、マルティン辺境伯爵」
「アメリア・グランフォード……! まだいたのか、この国賊め!」
「国賊とは心外ですわね。国に富をもたらしているのは、一体どちらでしょうか?」
私は余裕の笑みを浮かべ、一枚の羊皮紙を彼に見せた。それは、レミア帝国のクラウディア皇女の署名が入った公式文書だった。
「……なんだこれは? レミア帝国からの……通告書?」
伯爵が怪訝な顔で内容を読み進める。その顔が、みるみるうちに青ざめていった。
文書には、こう書かれていた。
『アルドレア王国が、レルナ村におけるヴェリーナ生産に対し不当な武力介入を行った場合、レミア帝国はこれを国際的な商業活動への重大な侵害とみなし、アルドレア王国に対するすべての交易を停止する。これには、王国が帝国に依存している食料、鉄鉱石も含まれる』
「なっ……!?」
「驚きましたか? これは経済制裁の通告です。あなた方が私たちの畑に一歩でも足を踏み入れれば、その瞬間、アルドレア王国は隣国からの輸入がすべてストップします。そうなれば、この国はどうなるでしょうね?」
鉄鉱石がなければ武器が作れない。食料がなければ民が飢える。そうなれば、貴族も王も安泰ではいられない。
マルティン辺境伯爵は、わなわなと震えていた。彼が頼りにしてきた「武力」というカードが、私の突きつけた「経済」というカードの前では、全くの無力だった。
「力ではなく、価値が世界を動かすのです。教えてさしあげますわ、伯爵」
私の言葉が、決定打となった。
騎士団は、何もできずに立ち尽くす。自分たちが信じてきた力が、目に見えない価値の前に敗北した瞬間だった。
結局、彼らはすごすごと王都へ引き返していくしかなかった。その背中を見送りながら、私は確信する。時代は、変わったのだと。剣や権力ではなく、人々を豊かにする「価値」こそが、真の覇権を握る時代が来たと。
「あの女、生意気にも王太子殿下に恥をかかせたそうだ!」
「辺境の農民どもと組んで富を独占し、国に貢献しようとしない!」
「けしからん! そもそも果実なぞという不確かなもので得た富だ。すべて国の管理下に置き、我ら貴族が正しく分配すべきだ!」
レオナルドを操り、私を追放した張本人であるマルティン辺境伯爵を中心に、彼らは邪な計画を企てた。それは、「果実栽培の国有化」という名目での、武力によるヴェリーナ畑の接収だった。
彼らは王太子に圧力をかけ、国の騎士団を動かす許可を取り付けた。正義は我にあり、と信じて。
その情報が私の耳に入ったのは、騎士団がレルナ村へ向けて出発する数日前のことだった。私が王都や他国に張り巡らせた情報網が、正確に敵の動きを捉えていたのだ。
カイルは血相を変えて私の元へ走ってきた。
「アメリアさん! 騎士団がこっちに向かってるって本当か!? どうするんだ、俺たちじゃ歯が立たない!」
村人たちの間にも動揺が広がる。無理もない。相手は、国の正規軍なのだ。農民である我々が、武器を持って立ち向かえるはずがない。
だが、私は冷静だった。むしろ、この時を待っていた。
「カイル、皆さん、落ち着いてください。武器を取る必要はありません。畑からも、家からも、一歩も出ないでください」
「しかし……!」
「いいですか。これは、力と力のぶつかり合いではありません。価値と価値の戦いです。そして、勝つのは私たちです」
私はすぐさま行動に移した。かねてより親交を深めていた隣国、レミア帝国の皇女クラウディア様に、緊急の連絡を入れたのだ。彼女は聡明で、ヴェリーナの真の価値を理解している、私の最も信頼するパートナーだった。
数日後、マルティン辺境伯爵率いる騎士団が、々しい軍馬の蹄の音を響かせながらレルナ村に到着した。彼らは村を取り囲み、畑を接収しようと構える。
マルティン辺境伯爵が、馬上で高らかに宣言した。
「国王の名において命ずる! この村のヴェリーナに関するすべての権利を、国が管理する! 逆らう者は、反逆者として処罰する!」
村人たちは恐怖に震え、家の窓から息を潜めて様子をうかがっている。
その時、私が一人、伯爵の前に進み出た。
「お待ちいただきたい、マルティン辺境伯爵」
「アメリア・グランフォード……! まだいたのか、この国賊め!」
「国賊とは心外ですわね。国に富をもたらしているのは、一体どちらでしょうか?」
私は余裕の笑みを浮かべ、一枚の羊皮紙を彼に見せた。それは、レミア帝国のクラウディア皇女の署名が入った公式文書だった。
「……なんだこれは? レミア帝国からの……通告書?」
伯爵が怪訝な顔で内容を読み進める。その顔が、みるみるうちに青ざめていった。
文書には、こう書かれていた。
『アルドレア王国が、レルナ村におけるヴェリーナ生産に対し不当な武力介入を行った場合、レミア帝国はこれを国際的な商業活動への重大な侵害とみなし、アルドレア王国に対するすべての交易を停止する。これには、王国が帝国に依存している食料、鉄鉱石も含まれる』
「なっ……!?」
「驚きましたか? これは経済制裁の通告です。あなた方が私たちの畑に一歩でも足を踏み入れれば、その瞬間、アルドレア王国は隣国からの輸入がすべてストップします。そうなれば、この国はどうなるでしょうね?」
鉄鉱石がなければ武器が作れない。食料がなければ民が飢える。そうなれば、貴族も王も安泰ではいられない。
マルティン辺境伯爵は、わなわなと震えていた。彼が頼りにしてきた「武力」というカードが、私の突きつけた「経済」というカードの前では、全くの無力だった。
「力ではなく、価値が世界を動かすのです。教えてさしあげますわ、伯爵」
私の言葉が、決定打となった。
騎士団は、何もできずに立ち尽くす。自分たちが信じてきた力が、目に見えない価値の前に敗北した瞬間だった。
結局、彼らはすごすごと王都へ引き返していくしかなかった。その背中を見送りながら、私は確信する。時代は、変わったのだと。剣や権力ではなく、人々を豊かにする「価値」こそが、真の覇権を握る時代が来たと。
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