少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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イヴ視点7

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窓から外を見つめると、広場周辺がよく見える。

飾りつけをして浮かれた国民達を見つめて、冷静になる。

騎士団長になったからって、なんでこんなに大々的にやるのか理解出来ない。
聖騎士だから、見世物にするつもりなのだろう。

今の世の中は、聖騎士なんてただの飾りに過ぎない。

それでも国民達は希望に満ち溢れた顔を向ける。
絶対的信頼で心酔して、崇め…まるで目に見える神のようだ。

そんな顔をされても、満足するほど応える事は出来ない。
そもそも俺がこの仕事を受けたのは国民のためとか正義感ではない。

俺はユーリのために聖騎士になっただけだ。

全ては自分とユーリのためだけに行動している。
それに偶然国民達も守っている事になっているだけだ、

俺はユーリ以外に聖騎士という仮面を見せる。
ユーリが見ていないところでも演じなければユーリの聖騎士にはなれない。
何事も完璧でなければ、合わせる顔がない。

あまりユーリとは無関係な事にやる気にはなれない。
無理矢理ユーリのためだと思っていないと、すぐに仮面が剥がれる。

騎士としての仕事はそれで今までやってきた。
俺の仮面に疑問を持つ者は今までいなかった。

しかし、これは聖騎士として必要な事なのか?

白馬に乗って俺が前を走り、手を振らなくてはいけない。
ニコニコと笑顔を貼り付けて、国民達の期待に応えるのがパレードで俺がやる事だ。

ただ国民を守ればいいはずなのに、そこまでしないといけない。

正直やりたくない、影武者かなにかが適当にやればいいんじゃないか?
でも、騎士団の中でも唯一無二の存在が聖騎士。
影武者なんて考えているのは俺しかいない。

放棄すれば面倒な事になる、騒ぎに繋がるかもしれない。
それほどまでにこのパレードは大切なものだと誰もが言っていた。

唯一無二だとしても力が強ければなれるものだ。
俺が断れば誰か他の奴が聖騎士になってしまうかもしれない。
ユーリと一緒にいるための計画が台無しだ。

ユーリがあの中にいると思っていないとやってられないな。
俺のやる気は全てユーリに結び付いている。

騎士は影で動けばいい、こんなに公で公開する前は聖騎士とは目立たない存在だと思っていた。
騙された気持ちは拭えないが、聖騎士は聖騎士だ…少ししたら飽きてくれるはずだ。

それまでの辛抱だ、自由になるその時まで大人しくしよう。

「国民達にこんなに愛されている騎士は貴方しかいませんよ、イヴ様…少しバルコニーで手を振ってみたらいかがですか?」

グレイグはバルコニーから外を覗いてそんな事を言う。

外から聞こえる大勢の歓声だけで眉を寄せる。

嫌に決まってるだろ、今日はパレードだけだと聞いている。

手を振るのは俺の役目ではない、もっと相応しい相手がする事だ。
エマ様はよく手を振っているから適任だろう。

ユーリにだったら、いくらでも笑顔で手を振れるのにな。

俺が首を振ると、言ってみただけなのかすぐに引き下がった。

「……ちょっと外に出ていく」

「時間までにお戻り下さい、あと…くれぐれも人が多い場所は…」

「分かっている」

グレイグが深々と頭を下げて、部屋から出た。
最近、グレイグから騎士団長の引き継ぎやパレードの準備とかで俺も忙しくしていた。

そのせいでユーリに会えない日が続いていた。
一日だけでも耐えられそうにないのに、もう何日経ったんだ?
俺の中の、ユーリが足りない…このままだと死んでしまう。

一目でいい、ユーリに会いたい…声を聞きたい。

国民はほとんどがこのパレードを見に来るが、見ない人も当然いる。
ユーリは来てくれているのだろうか、聖騎士を見に…

最近ユーリの家にも行っていないから分からない。
家の外観だけ遠目に見ても俺の心は満たされない。

ユーリを知らない時間があるなんて、耐えられない。
何でもない一日だって俺にとっては宝物だ。
ユーリになにかあったら、俺は…

離れている間、何の対策もしていないわけではない。
この街は魔物が溢れている、長年聖騎士がいなかったから繁殖した。
俺と関わったからユーリにも魔物が集まるようになった。

何度も消しても何処からかわらわらと集まってくる。

もしも離れなきゃいけない時が来たらのために罠も用意していた。

魔物がユーリの傍に来ないように家の周りに俺の血を少量垂らして魔法陣を作った。
俺の血には魔力が混じっていて、魔物は俺の血が嫌いなのだろう。

ユーリと出会ったあの日、初めて血を流した。
あの時はまだ未完成だったが、今はもう魔力も完璧に近い状態だ。
力を使わなくても、魔物を消す方法がいくらでもある。

今までは俺自身がユーリを守りたかったから、印を付ける事はしなかった。
でも、会う時間が減るとなると俺の代わりにこの血がユーリを守ってくれる。

血で真っ赤に染めたナイフを手に持ち、指先で弄る。
刃に触れると皮膚が切れて、血が刃に流れる。
痛みや熱は一瞬で、傷口もすぐに塞がってしまう。

指先だけでは傷口が浅いと思い、刃に触れた。
さっきよりも鋭い痛みと熱を感じて、血が地面に落ちる。

痛みを感じているのに、自然と笑みが浮かぶ。
痛みが好きなんじゃない、この先の事を考えているだけだ。

あの笑顔が守れるなら、痛みなんてなんて事はない。
ユーリのためなら、この血を流す事も厭わない。

あの時を思い出して、傷口が既に消えた手のひらを見つめる。
自己治癒能力がこんなに憎らしいとは思わなかった。
今、俺とユーリを結ぶのはこの傷だけだったのに…

廊下を歩いていたら、向こう側から歩いてくる人物がいた。
ユーリの事を考えていたから、気付かないまま素通りしようとした。

いきなり腕を掴まれて、歩みを止められて驚いた。

「イヴ!やっと見つけた!」

「え、エマ様…」

俺の腕に触れるエマ様はキラキラと目を輝かせていた。
こんなところで足止めされるわけにはいかない。

でも、エマ様はこの国の姫だ…腕を振り払う事が出来ない。

面倒くさい、後ろにいるメイド達が困ってる。

エマ様が何を言っているのか分からない、早く行きたい事しか考えられない。
話を聞いていないと、俺に呼び掛けてくる。
時間が掛かりそうだから、笑顔で聞いているフリをする。

実際に聞いているかどうかは重要ではない。

早く終わらす、俺が考えるのはそれだけだ。

「エマ様…お早い到着で…」

「イヴがいるって聞いたから挨拶に…」

「でしたら、国民に顔を見せてはいかがですか?」

部屋から出てきたグレイグがエマ様に話しかけていた。
どうしようかと戸惑っている様子で、動かない。
メイド達の話も全く聞いていなくて、俺をチラチラと見ていた。

これって、俺が言わないとダメなヤツなのか。

こんなくだらない事に時間を使いたくない。
ユーリにも関係ないし、時間がなくなるのはユーリを探す時間がなくなる。

エマ様の手に触れると頬がほんのりと赤くなる。
手が俺から離れていき、やっと自由になれた。

「エマ様を国民達が待っていますよ」

「イヴ…」

他の人から見つめ合っているように見えるが、目線をずらしている。
他人の顔が見えている時に、ユーリの事を考えられない。
それはユーリに失礼だし、ユーリに向ける顔を他人に向けたくない。

俺のこの感情はユーリだけのものにしたい。

俺の言う事ならエマ様は聞くらしい、立場が逆転しているがいいのか?
俺はエマ様と距離を置いて接したいと思っている。
聖騎士だとかエマ様の騎士とか、そんな事は気にしなくていい。

俺自身が全く気にしていない、騎士に興味があるなら俺以外にしてくれ。

そろそろ笑顔が崩れそうになってきて限界が近い。

グレイグのところに誘導して、すぐに城を出た。
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