おじいさんとおじいちゃん

Green hand

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おじいさんの友達/おじいさんの話2

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『おじいさんの友達』

おじいさんとおじいちゃんは、日課の散歩に出かけました。
近頃、日の出が早くなってきたようで、いつもの時間に起きると、もう外は明るくて、気温も少し温かくなってきました。

「春なんてあっという間だからな。もうしばらくしたら、少し早起きせんと、暑くて歩けなくなるな。」

(・・・・・・)

おじいちゃんは、早起きが苦手です。

「頑張って起きてくれよ?うちに帰れば、また寝られるんだから。そうだろ?」

おじいさんには、お見通しです。

「起こすのも大変なんだ。お前はコロッコロしてるから、一仕事だよ。」

(・・・・・・)

「でも・・・その歳でよく歩いてくれるな。大きな病気もしないで。うちは男が長生きの家系なのかもな。」

ピタ・・・

おじいさんが俯きかげんで呟きながら歩いていると、急におじいちゃんが立ち止まりました。

「ん?なんだ。」

「ヒンヒン・・・」

「どうした?」

「ヒュン・・ヒャンっ。」

「さっき便は済ませたしなぁ・・・?」

「キャン!」

その時、前方から甲高い犬の鳴き声がしました。
おじいちゃんは、はやる気持ちを抑えながら、その場に伏せました。

「あ、おはようございます。お久しぶりです~。」

「あ、ああこれは。なるほど、だからか。」

向こうから小さな犬が甲高い声で鳴きながら、おじいちゃんに向かって駆けてきました。
そのリードを引っ張って抑えながら歩いてくるのは、おじいさんの友達です。

「今日はたまたま早起きできたので、散歩に出てきたんですよ。やっと温かくなってきましたね。」

「ええ、おはようございます。」

「お元気そうで良かった。」

「そちらも、お変わりないですか?」

「はい、おかげさまで。」

おじいさんが友達と話している間、おじいちゃんと小さな犬は尻尾を千切れんばかりに振って挨拶していました。
そのうちじゃれ合い始めて、少し経つと小さな犬のハイテンションについていけず、おじいちゃんは、お座りして呼吸を整え始めました。
小さな犬は、気にせずおじいちゃんにまとわりついてきます。
まるで、孫の子守を頼まれたおじいちゃんの図です。

「おじいちゃんも、元気?」

おじいさんの友達が、小さな犬を抱きかかえて、屈んでおじいちゃんに問いかけます。

「この通り、私もコイツも年ですからね。それなりです。な?」

「確か・・・、半年ぶりくらいかしらね~。」

そう言って、ニコニコしながらおじいさんの友達は、おじいちゃんの頭を撫でます。
おじいちゃんは、呼吸を整えながら、嬉しそうに尻尾を振ります。

「お婆さんの分も、元気に長生きしなくてはね~。」

「はい。肝に銘じます。」

「ハッ、何かすいません偉そうに!」

「いえいえ、私もコイツもそれが目標ですから。今のところ、お互い大きな病気をしてないのが自慢です。」

「じゃあ私もチヨも見習って、肝に銘じさせていただきます。」

2人は笑い合って会釈をして、散歩を再開しました。

「チヨちゃんは、いつ見てもすばしっこくて元気だね。」

「もう家だともっと走り回って、捕まえるのが大変で。寝る時とご飯以外は
ずーっと動きっぱなしなんです。」

「まだまだ若いからでしょう。」

「5歳なんですけど、他の子はどうなのかしら。」

「5歳か。まぁうちは・・・参考になりませんな。」

「え?なんでですか?」

「ペットショップにいた時から、体型以外はこのまんまなので。」

「そうなんですか?大人しくて良い子で羨ましい~。」

「ご飯と散歩以外には、あまり反応が無くてね。ボールやぬいぐるみを買ってやっても、全く遊ばないですし、せっかく買ったから何とか遊ばせようと、うちのと2人で遊び方を見せてやったりしましたが、[なぁにやってんだコイツら?]ってな風に冷めた目で黙ってじぃ~っと見るだけでしたよ。」

「ふふふっ。そうなんですか?」

「ええ。だから、チヨちゃんみたいな反応は、ちょっと羨ましいですよ。」

「まぁ、元気でいてくれるのが1番ですものね。」

「そうですとも。」

そして、おじいさんの家の前で、友達とチヨちゃんとお別れをして、おじいさんとおじいちゃんは家に入らず、庭へ回りました。

「今日は良かったな。チヨちゃんと会えて。」

(・・・・・・・)

おじいさんはリードを外して縁側に置くと、用意しておいたブラシを手に取る。

「5歳なら、多分普通はあんなものなんだろうな。」

(・・・・・・・)

おじいちゃんの毛並みに沿って、ブラッシングが始まりました。

「覚えているか?子供なのにお前が大人しすぎるから、婆さんが心配して病院へ連れて行ったことがあったな。」

(・・・・・・・)

「[結果から申しますと、これは個性です]と先生に言われて、婆さんは恥をかいて顔を真っ赤にしていたな。[ご飯をしっかり食べて、排泄も問題なければ大丈夫ですよ]って。くくくっ![ちょっと大袈裟じゃないか?]って言ったんだが全く聞かなくてなぁ。」

(・・・・・・)

でも、おじいちゃんもお婆さんも知っていました。あの時おじいさんも、同じくらい心配していたことを。

「まぁ、お前が最初で最後の子だから、仕方ないんだがな。それくらい、お前さんは昔っから色んなことに無関心な性格なんだ。ご飯と、散歩以外は。」

(ごはん?さんぽ?)

「あ、違う違う。散歩はさっき行ったろ?ご飯ももうちょっと後だ。」

(・・・・なんだ。)

「他に楽しいことはないのか?虫や花を見たりしても、ただ見てるだけだろ。時々布団をめちゃめちゃにしてくるまって寝てることはあるが、楽しくてやってるワケじゃなさそうだしなぁ・・・。」

(・・・・・・)

「・・・・・・。」

その時、おじいさんは気づきました。

「ん・・・そうか。別に、反応が無いわけじゃないんだな。」

(・・・・・・)

おじいさんはおじいちゃんの体にブラシをかけながら、その顔をそっと覗き込むと、目をつむり、とても気持ち良さそうにしていました。
おじいさんは、いつもより長くブラシをかけてあげました。



『おじいさんの話2』

「待て・・・・。」

(・・・・・・・)

「・・・よし。」

(・・・・・・・)

カリカリ・・・

「・・・・改めて見ていると、食べ始めの勢いも、他の子よりものんびりしているんじゃないか?[よし]から3秒程間を置いてから食べてるような。まぁ、もう年だしな。」

カリカリ・・・

「・・いい音させて食べるなぁ?毎日毎日。シニア期に入ってから・・・7年か。ずっと同じご飯で、お前は飽きないのか?」

カリカリ・・・

「・・そんなにうまいのか?」

カリカリ・・・

「・・・・・・・。」

おじいさんは、無言で台所へ行って、戸棚を開きました。そこには、おじいちゃんのフードやおやつが入っています。
おじいさんはフードが入った袋から、フードを1粒つまみました。
そして、数秒考え込んでから、口に入れました。固いので、奥歯で噛み砕くと、口内にドッグフード独特の薫りが広がります。

「・・・・・・う。」

おじいさんは、初めてドッグフードを食べました。

「これを毎日・・ずっと。」

おじいさんは、畳の部屋でゆっくりカリカリ音を立ててご飯を食べているおじいちゃんを見つめました。

「でも、これが今までお前の体を支えてきてくれたんだな。」

カリカリ・・・

おじいちゃんがもっと長生きしてくれるよう、フードに祈りを込めながら、おじいさんは戸棚にフードをしまいました。

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