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第一章 バネッサ・リッシュモンは、婚約破棄に怒り怯える悪役令嬢である
第五話 殿下、結婚式を計画する
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僕は思考を巡らせた。
そもそも。どうして、バネッサが彼女と僕の仲を誤解したのかは分からない。
けれど、それよりも問題なのは、ヴェイル嬢を命の危機にさらしてしまったことだ。これは、本当にまずい。
「そんなこと、僕が考えていないと思うのかい?」
「だって殿下は、彼女が関わるとネジが飛ぶから……」
「不敬じゃないかい? すでに和解交渉は思案済みさ」
そう答えれば、従者が目を丸くした。驚いたようだ。
「当たり前でしょう? 僕には、バネッサが必要なんです。そのためなら、何でもします」
バネッサが恋に生きる乙女なら、ヴェイル嬢は損得勘定で生きている。仮面舞踏会での損失よりも、僕が渡す利益が勝っていれば、彼女が騒ぎ立てることはないだろう。
キス直後、バネッサはなぜか昏倒してしまったけれど、僕はしっかり後のことも考えていたのだ。
「個人の資産で解決できるなら、すぐに終わらせてみせます。それぐらい、僕は、彼女を愛しているんです」
「やっぱり、……殿下はバネッサ様一筋、ですよね」
「はい。ヴェイル家に謝罪したのち、即座にバネッサと結婚します」
「ん???」
どうやら、従者は僕の決意に待ったをかけたいらしい。
「ご予定はまだ一年先ですよね……?」
「婚約破棄だなんて、言い出すんですよ? おかしなことを考える前に、手を打たないとならない」
従者が注射を待つ子供のような顔になる。いかにも、しぶしぶ聞きますといった感じで口を開いた。
「……どんな?」
「まずは、結婚の知らせを国中に公布します」
「はい??」
「あらかたの予定を抑えたのち、それから彼女に会いに行きます」
「え……?? はい……?」
「何をおいてでも、バネッサを捕まえなくてはなりません。これは必要な処置なんです」
「待ってください! 正気です??」
「僕はいつだって、正気です。バネッサの謹慎期間があけたら、会いに行きます」
「……俺が言うのもなんですが、謹慎あけるの一ヶ月後ですよ……?」
そんなこと、僕だって知っている。一カ月も会えない。そう思うだけで、胸が苦しくなる。
だけれど、結婚の障害はすべて取り除かなくてはいけないんです。従者の悪ふざけが本当のものになるまえに、手を打たなくては。
「…………こっそり会いに行ってあげたほうが、バネッサ様、安心すると思うんだけどな……」
ぼそぼそぼやく従者を一喝する。
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってください」
「その、今のバネッサ様、多分……パニックになってると思うんで、ほら『好きです』とか『ずっと愛してました』とか言ってあげたほうが……」
「謹慎してる令嬢が密会、なんてこと知れたら、また彼女の名が傷付きます」
「正論なんだけど、何だかなーー」
彼が頭を抱えだした。
僕はぴしゃりと言い付ける
「謹慎期間があけたら、式を挙げる。準備をしておいてください」
そう、絶対にバネッサと結婚するんです。
堅い思いを胸に、仕事に戻る。僕は写真立てを元に戻してから、よけておいた書類に手を伸ばした。
「結婚式、強行させるより、やることあんだと思うんだけどなーーーー」
従者が何かを叫んでいる。
公務を全て片付けてしまいたい僕は、それを意識の外に追いやったのだった。
そもそも。どうして、バネッサが彼女と僕の仲を誤解したのかは分からない。
けれど、それよりも問題なのは、ヴェイル嬢を命の危機にさらしてしまったことだ。これは、本当にまずい。
「そんなこと、僕が考えていないと思うのかい?」
「だって殿下は、彼女が関わるとネジが飛ぶから……」
「不敬じゃないかい? すでに和解交渉は思案済みさ」
そう答えれば、従者が目を丸くした。驚いたようだ。
「当たり前でしょう? 僕には、バネッサが必要なんです。そのためなら、何でもします」
バネッサが恋に生きる乙女なら、ヴェイル嬢は損得勘定で生きている。仮面舞踏会での損失よりも、僕が渡す利益が勝っていれば、彼女が騒ぎ立てることはないだろう。
キス直後、バネッサはなぜか昏倒してしまったけれど、僕はしっかり後のことも考えていたのだ。
「個人の資産で解決できるなら、すぐに終わらせてみせます。それぐらい、僕は、彼女を愛しているんです」
「やっぱり、……殿下はバネッサ様一筋、ですよね」
「はい。ヴェイル家に謝罪したのち、即座にバネッサと結婚します」
「ん???」
どうやら、従者は僕の決意に待ったをかけたいらしい。
「ご予定はまだ一年先ですよね……?」
「婚約破棄だなんて、言い出すんですよ? おかしなことを考える前に、手を打たないとならない」
従者が注射を待つ子供のような顔になる。いかにも、しぶしぶ聞きますといった感じで口を開いた。
「……どんな?」
「まずは、結婚の知らせを国中に公布します」
「はい??」
「あらかたの予定を抑えたのち、それから彼女に会いに行きます」
「え……?? はい……?」
「何をおいてでも、バネッサを捕まえなくてはなりません。これは必要な処置なんです」
「待ってください! 正気です??」
「僕はいつだって、正気です。バネッサの謹慎期間があけたら、会いに行きます」
「……俺が言うのもなんですが、謹慎あけるの一ヶ月後ですよ……?」
そんなこと、僕だって知っている。一カ月も会えない。そう思うだけで、胸が苦しくなる。
だけれど、結婚の障害はすべて取り除かなくてはいけないんです。従者の悪ふざけが本当のものになるまえに、手を打たなくては。
「…………こっそり会いに行ってあげたほうが、バネッサ様、安心すると思うんだけどな……」
ぼそぼそぼやく従者を一喝する。
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってください」
「その、今のバネッサ様、多分……パニックになってると思うんで、ほら『好きです』とか『ずっと愛してました』とか言ってあげたほうが……」
「謹慎してる令嬢が密会、なんてこと知れたら、また彼女の名が傷付きます」
「正論なんだけど、何だかなーー」
彼が頭を抱えだした。
僕はぴしゃりと言い付ける
「謹慎期間があけたら、式を挙げる。準備をしておいてください」
そう、絶対にバネッサと結婚するんです。
堅い思いを胸に、仕事に戻る。僕は写真立てを元に戻してから、よけておいた書類に手を伸ばした。
「結婚式、強行させるより、やることあんだと思うんだけどなーーーー」
従者が何かを叫んでいる。
公務を全て片付けてしまいたい僕は、それを意識の外に追いやったのだった。
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