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第2章 大聖女は愛憎をまだ知らない
第10話 メイドは大聖女に泣きじゃくる
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死んじゃう、しん、じゃうと口ごもりながら、ぽろぽろ泣いている。
「れ、レレさん……?!」
「だって、旅に出たら大聖女さまが死んじゃ、っ、うんで、しょう……ッ」
「待って、まって、なんでそれ、セオドアが教えたな?!」
「ご主人さまから聞きました~~! だからぜっったい、ここから出してあげませんッ」
ずびずび鼻水を啜って、叫ぶ。かわいい顔をくしゃくしゃにして、それでもきゅっとまなじりだけは吊り上げている。
「あの野郎、そうやってレレさんを言いくるめたな!」
「やだやだ、なのです~~ッ!! 大聖女さま死んじゃやだですう!!」
「そんな泣かないでよ、大丈夫だから」
「だいじょーぶって、魔王討伐して帰ってきてくれるんですか??」
「えっと…………、あ、はは、」
笑って、言葉を濁す。
うん、帰っては来られない。魔王討伐の儀式はそういうものだから。
「ほら、ほらッ! 死んじゃうんじゃないですか!」
魔物の首を取ったみたいに、レレさんが指さして地団太を踏んだ。
「ご主人さまも言ってました。『魔王討伐の旅に出るのは、ルチアの自殺と変わりません。あの女は死ににいくのを当然だと勘違いしてる愚か者』だって」
「レレさんから『愚か者』って言葉聞くと、すっごい胸に来るね」
レレさんの下手っぴ声真似でも、腹黒に言われるより刺さる。
「そういうことじゃないですぅ……! もうッ、レレ、ご主人さまが言ってたことがよぉーく分かりましたぁ!」
泣きながら、バシバシ床を叩く。メイド服のまま、膝を付いて、涙を流し続けた。
「大聖女さまは、自分のことが好きじゃないんですねッ」
「え、なんでそうなっちゃったの? 私、私のこと大好きだよ? 大聖女として、しっかり役目果たしてるもん」
「大聖女さまは大聖女さまなんですぅけど……! そうじゃなくて、ルチアさまはルチアさまなんですぅ」
涙しているからか、発言がぐちゃぐちゃだ。いまいち、内容が掴めない。
「レレは、大聖女さまのお話を聞いて、憧れてました! 数百の魔物を一人で倒したっていう武勇とか、雨を降らせるために神に一週間寝ずに祈ったとか、すごい人だって思ってました」
「それほどでも、あるかな、うん」
「あとあと、絵で見た大聖女さまは、とっても美しくて、りりしくて。……!こんな神さまみたいにキレイな人が、レレたちを守ってくれてるんだって……!」
「そんなに褒められたら、照れちゃうな」
賞賛されるのは嬉しい。自分がやってきたことが間違ってなかったんだと、答え合わせできるから。
しかし、私の口角が上がるのと同時に、レレさんが項垂れる。絨毯に座り込んだまま、私を見上げた。
「でも、レレみたいなひとが大聖女さまを苦しめてるんですよね……」
胸の前で腕を組み、懺悔するように頭を垂れる。
「ごめんなっ、さ、いっ、レレをゆるしっ、てください……」
え? え?!
私は驚いて、ベッドから飛び降りた。
「いやいや、レレさんみたいなみんなを守るために、大聖女ルチアはいるんだよ?」
レレさんの隣に腰を落として、涙に手を伸ばした。
柔らかい頬に熱い涙が流れていて、拭っても拭っても、止まらない。
「ルチアさまは……っ、こんなにおやさしい、のに、ッ、レレは、ルチアさまをたすけてあげられないの、ですぅ……っ」
彼女の口から、「私を助ける」なんて言葉が出て、ますます困惑した。
わたしを助けるなんて、そんなこと必要ないのに、どうしてこの人は泣いているんだろう。
「だ、っだから、ルチアさまはッ、ご主人さまの愛を思い知ってくだしゃい!」
「れ、レレさん……?!」
「だって、旅に出たら大聖女さまが死んじゃ、っ、うんで、しょう……ッ」
「待って、まって、なんでそれ、セオドアが教えたな?!」
「ご主人さまから聞きました~~! だからぜっったい、ここから出してあげませんッ」
ずびずび鼻水を啜って、叫ぶ。かわいい顔をくしゃくしゃにして、それでもきゅっとまなじりだけは吊り上げている。
「あの野郎、そうやってレレさんを言いくるめたな!」
「やだやだ、なのです~~ッ!! 大聖女さま死んじゃやだですう!!」
「そんな泣かないでよ、大丈夫だから」
「だいじょーぶって、魔王討伐して帰ってきてくれるんですか??」
「えっと…………、あ、はは、」
笑って、言葉を濁す。
うん、帰っては来られない。魔王討伐の儀式はそういうものだから。
「ほら、ほらッ! 死んじゃうんじゃないですか!」
魔物の首を取ったみたいに、レレさんが指さして地団太を踏んだ。
「ご主人さまも言ってました。『魔王討伐の旅に出るのは、ルチアの自殺と変わりません。あの女は死ににいくのを当然だと勘違いしてる愚か者』だって」
「レレさんから『愚か者』って言葉聞くと、すっごい胸に来るね」
レレさんの下手っぴ声真似でも、腹黒に言われるより刺さる。
「そういうことじゃないですぅ……! もうッ、レレ、ご主人さまが言ってたことがよぉーく分かりましたぁ!」
泣きながら、バシバシ床を叩く。メイド服のまま、膝を付いて、涙を流し続けた。
「大聖女さまは、自分のことが好きじゃないんですねッ」
「え、なんでそうなっちゃったの? 私、私のこと大好きだよ? 大聖女として、しっかり役目果たしてるもん」
「大聖女さまは大聖女さまなんですぅけど……! そうじゃなくて、ルチアさまはルチアさまなんですぅ」
涙しているからか、発言がぐちゃぐちゃだ。いまいち、内容が掴めない。
「レレは、大聖女さまのお話を聞いて、憧れてました! 数百の魔物を一人で倒したっていう武勇とか、雨を降らせるために神に一週間寝ずに祈ったとか、すごい人だって思ってました」
「それほどでも、あるかな、うん」
「あとあと、絵で見た大聖女さまは、とっても美しくて、りりしくて。……!こんな神さまみたいにキレイな人が、レレたちを守ってくれてるんだって……!」
「そんなに褒められたら、照れちゃうな」
賞賛されるのは嬉しい。自分がやってきたことが間違ってなかったんだと、答え合わせできるから。
しかし、私の口角が上がるのと同時に、レレさんが項垂れる。絨毯に座り込んだまま、私を見上げた。
「でも、レレみたいなひとが大聖女さまを苦しめてるんですよね……」
胸の前で腕を組み、懺悔するように頭を垂れる。
「ごめんなっ、さ、いっ、レレをゆるしっ、てください……」
え? え?!
私は驚いて、ベッドから飛び降りた。
「いやいや、レレさんみたいなみんなを守るために、大聖女ルチアはいるんだよ?」
レレさんの隣に腰を落として、涙に手を伸ばした。
柔らかい頬に熱い涙が流れていて、拭っても拭っても、止まらない。
「ルチアさまは……っ、こんなにおやさしい、のに、ッ、レレは、ルチアさまをたすけてあげられないの、ですぅ……っ」
彼女の口から、「私を助ける」なんて言葉が出て、ますます困惑した。
わたしを助けるなんて、そんなこと必要ないのに、どうしてこの人は泣いているんだろう。
「だ、っだから、ルチアさまはッ、ご主人さまの愛を思い知ってくだしゃい!」
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