8 / 9
執念深い村の守り神に魂全てを捧げて永遠に共に生きる
しおりを挟む
「なぁ、うっかり、わたしに永遠を誓った愚か者の少年」
一度逃げ出した少年が再び村に戻って、執念深い村の守り神と永遠に共に生きるフリー台本。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……ん……?
ああ……、帰ってきてしまったのか、少年。
なに? もう、そんな歳ではない? 私からすれば、少年はいつまでも童と変わらないがな。
「見くびらないでほしい」、か。確かに背丈は10寸ぐらい伸びたか? だが、そんなもの誤差だろう。
見下ろしたときに見えるつむじが、少々近づいた程度。少年はいつだって、可愛らしいものだ。
ああ、すまない、すまない。懐かしい顔を見たせいで、つい軽口を叩いてしまう。何しろ、わたしはこの二十年、退屈でたまらなかったからな。
ああ、からかいがいのある、小さな男子が村を出てしまったおかげで。
なぁに、黙ってくれるな。わたしを楽しませてくれるな、少年。
『……世間はハロウィンで盛り上がってるのに、この村は静かだ』だと?
なんだ。異郷の祭りなど、わたしは知らん。また、その小さな板の話題か?
そんな小道具で知り得ることなどたかが知れているというのに。人はそんなものを有難がって……、分からんな。
わたしなら、もっと正しい“モノ”を視せてやれるというのに。
それとも、なにかぁ? よその神でも祀り上げる気か?
わざわざわたしの前に姿をあらわして、そんな愚かしい振る舞いをするとは、命知らず、なんて言葉でくくれないがな。
…………ふふっ、まったく。すぐ青くなる臆病さは、微塵も変わっていないじゃないか。
はは、神の戯言だ。小童一人の言葉に機嫌を損ねるほど、器が小さいわけもあるまい。
わたしは、この村の守り神なのだから。
知っているだろう、この神は失言は一度までなら赦してくれると。
さて、少年。
少年で遊ぶのも大概にしてやろうじゃないか。
この寂れた村に、今更になって帰省とは、一体なんの心変わりだ?
言い分をきいてやろう。
あの夜、両親と一緒に泣きじゃくって、命からがら逃げ出したことを忘れたわけではあるまいな。
ああ、わたしはよぉく覚えているよ。
少年がわななかせる唇の赤さも、まぁるい頬に流れた涙の青さも、落っこちそうなほどの見開いた瞳の黒さも。
後悔しているのだろう? 取り消したいのだろう?
あの日の、あの求婚を。
なぁ、うっかり、わたしに永遠を誓った愚か者の少年。
わたしは少年の真名を知っているし、神たる目からはどこへ逃げても逃れられることはない。
そう震えてくれるな、話の途中だと言うのに虐めたくなるだろう。
学習しない少年だ。
あの夜は、せっかく逃がしてやったというのに。
言っただろう。
次、わたしの爪が届くところにやって来たら、もう離してやれない、と。
にもかかわらず、少年は再び、この地を踏んだ。
その意味が分からぬほど、蒙昧であるまい?
愚か者であっただけではなく、命知らずでもあったのか。どんな心境の変化だ。
私が滅びるまで、少年は逃げ延びるつもりであったのでは?
神でなかろうと、童でも理解る。
この村はもはや、百年も保たぬだろう。
人の子は減るばかり、草木は生気を失い、信仰はほとんど失われた。
大人は歳をとり土に還り、子供は歳を経て町に行く。
どちらも、この村に帰ってこないという意味では同じだ。
この身を支えるのは、人の息吹。
元より祠のそば、村のなかまでしか動けぬ身だが、神とて不便なものだ。
笑うところだぞ、少年。
こんな死にかけの風体といえど、まだ私は土地神。
少年一人を隠すほど、造作もない。
それに恐怖するならば、踵を返せ。泣き喚いて逃げ出すがいい。
少年の怯える顔を、そして僅かばかりの成長を目撃して、私が面白がっているうちに、な。
…………なぜ、逃げない。
……………………なぜ、私の眼前まで歩む。
神を恐れよ、畏怖せよ、膝を折り、叩頭せよ。
近付くな。近づくな、少年。
その意味を理解しているのか、それがどんな結末を呼ぶのか、判別できぬほどの齢ではあるまい。
なのに、……なのに…………。
…………そうか、少年。
そう、なのか、……しょうねん……。
最後に、一緒にいてくれるのか。
村人がじきに絶える土地神の、この化け物の傍にいることを選ぶのか。
……愚かな、卑しい……人の子……。
何も手に入れられないと、何かを手にできるわけではない。
この惨状を見れば、益がないことは明白だというのに。
……そうか、これが、……これが、歓び、なのだろうな。
ふたたび、……そのすがたを、目にすることができるとは、思っていなかったんだ。
存在(い)きていて、よかった。
しょうねん、……少年。
ああ、愛している。
私の少年、…………いや、もうこの呼び方もよそうか。
なんだ、それも不服なのか?
いやはや、気持ちは解る。私もこの呼び名を……気に入っていたからな。
ならば、ちこうよれ。この祠の元まで、歩を進めよ。
……いい子だ、少年。
相も変わらず、小さき体躯だな。私の腕の中に捕らえてしまえる。
さて、次、目覚めたときは私の肚の中。
そのときに、君の真名を呼んでやる。
喜べ、その耳に注ぎ込んで、神の吐息を受けるといい。
その身を縛り付けて、魂すら抱き締めてやろう。
これで現世に左様なら。
人として最後の呼吸を噛み締めるといい。
この世が朽ち果てるまで共に……愛しい、私の少年。
◆クレジット例
久遠真己
「【男性向けシチュボ】執念深い村の守り神に魂全てを捧げて永遠に共に生きる【フリー台本】」
pixiv:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23418743
使用する場合は利用規約をご確認ください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20583775
一度逃げ出した少年が再び村に戻って、執念深い村の守り神と永遠に共に生きるフリー台本。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……ん……?
ああ……、帰ってきてしまったのか、少年。
なに? もう、そんな歳ではない? 私からすれば、少年はいつまでも童と変わらないがな。
「見くびらないでほしい」、か。確かに背丈は10寸ぐらい伸びたか? だが、そんなもの誤差だろう。
見下ろしたときに見えるつむじが、少々近づいた程度。少年はいつだって、可愛らしいものだ。
ああ、すまない、すまない。懐かしい顔を見たせいで、つい軽口を叩いてしまう。何しろ、わたしはこの二十年、退屈でたまらなかったからな。
ああ、からかいがいのある、小さな男子が村を出てしまったおかげで。
なぁに、黙ってくれるな。わたしを楽しませてくれるな、少年。
『……世間はハロウィンで盛り上がってるのに、この村は静かだ』だと?
なんだ。異郷の祭りなど、わたしは知らん。また、その小さな板の話題か?
そんな小道具で知り得ることなどたかが知れているというのに。人はそんなものを有難がって……、分からんな。
わたしなら、もっと正しい“モノ”を視せてやれるというのに。
それとも、なにかぁ? よその神でも祀り上げる気か?
わざわざわたしの前に姿をあらわして、そんな愚かしい振る舞いをするとは、命知らず、なんて言葉でくくれないがな。
…………ふふっ、まったく。すぐ青くなる臆病さは、微塵も変わっていないじゃないか。
はは、神の戯言だ。小童一人の言葉に機嫌を損ねるほど、器が小さいわけもあるまい。
わたしは、この村の守り神なのだから。
知っているだろう、この神は失言は一度までなら赦してくれると。
さて、少年。
少年で遊ぶのも大概にしてやろうじゃないか。
この寂れた村に、今更になって帰省とは、一体なんの心変わりだ?
言い分をきいてやろう。
あの夜、両親と一緒に泣きじゃくって、命からがら逃げ出したことを忘れたわけではあるまいな。
ああ、わたしはよぉく覚えているよ。
少年がわななかせる唇の赤さも、まぁるい頬に流れた涙の青さも、落っこちそうなほどの見開いた瞳の黒さも。
後悔しているのだろう? 取り消したいのだろう?
あの日の、あの求婚を。
なぁ、うっかり、わたしに永遠を誓った愚か者の少年。
わたしは少年の真名を知っているし、神たる目からはどこへ逃げても逃れられることはない。
そう震えてくれるな、話の途中だと言うのに虐めたくなるだろう。
学習しない少年だ。
あの夜は、せっかく逃がしてやったというのに。
言っただろう。
次、わたしの爪が届くところにやって来たら、もう離してやれない、と。
にもかかわらず、少年は再び、この地を踏んだ。
その意味が分からぬほど、蒙昧であるまい?
愚か者であっただけではなく、命知らずでもあったのか。どんな心境の変化だ。
私が滅びるまで、少年は逃げ延びるつもりであったのでは?
神でなかろうと、童でも理解る。
この村はもはや、百年も保たぬだろう。
人の子は減るばかり、草木は生気を失い、信仰はほとんど失われた。
大人は歳をとり土に還り、子供は歳を経て町に行く。
どちらも、この村に帰ってこないという意味では同じだ。
この身を支えるのは、人の息吹。
元より祠のそば、村のなかまでしか動けぬ身だが、神とて不便なものだ。
笑うところだぞ、少年。
こんな死にかけの風体といえど、まだ私は土地神。
少年一人を隠すほど、造作もない。
それに恐怖するならば、踵を返せ。泣き喚いて逃げ出すがいい。
少年の怯える顔を、そして僅かばかりの成長を目撃して、私が面白がっているうちに、な。
…………なぜ、逃げない。
……………………なぜ、私の眼前まで歩む。
神を恐れよ、畏怖せよ、膝を折り、叩頭せよ。
近付くな。近づくな、少年。
その意味を理解しているのか、それがどんな結末を呼ぶのか、判別できぬほどの齢ではあるまい。
なのに、……なのに…………。
…………そうか、少年。
そう、なのか、……しょうねん……。
最後に、一緒にいてくれるのか。
村人がじきに絶える土地神の、この化け物の傍にいることを選ぶのか。
……愚かな、卑しい……人の子……。
何も手に入れられないと、何かを手にできるわけではない。
この惨状を見れば、益がないことは明白だというのに。
……そうか、これが、……これが、歓び、なのだろうな。
ふたたび、……そのすがたを、目にすることができるとは、思っていなかったんだ。
存在(い)きていて、よかった。
しょうねん、……少年。
ああ、愛している。
私の少年、…………いや、もうこの呼び方もよそうか。
なんだ、それも不服なのか?
いやはや、気持ちは解る。私もこの呼び名を……気に入っていたからな。
ならば、ちこうよれ。この祠の元まで、歩を進めよ。
……いい子だ、少年。
相も変わらず、小さき体躯だな。私の腕の中に捕らえてしまえる。
さて、次、目覚めたときは私の肚の中。
そのときに、君の真名を呼んでやる。
喜べ、その耳に注ぎ込んで、神の吐息を受けるといい。
その身を縛り付けて、魂すら抱き締めてやろう。
これで現世に左様なら。
人として最後の呼吸を噛み締めるといい。
この世が朽ち果てるまで共に……愛しい、私の少年。
◆クレジット例
久遠真己
「【男性向けシチュボ】執念深い村の守り神に魂全てを捧げて永遠に共に生きる【フリー台本】」
pixiv:https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=23418743
使用する場合は利用規約をご確認ください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20583775
0
あなたにおすすめの小説
👨一人用声劇台本「寝落ち通話」
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。
続編「遊園地デート」もあり。
ジャンル:恋愛
所要時間:5分以内
男性一人用の声劇台本になります。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる