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08 担当との打ち合わせ
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「やーやーやー、お待たせしてごめんねー。今新人賞の結果でバタバタしててさー。んで、新しい漫画出来たんだってー? どんなものよ、それー?」
「まあ、とりあえず見てやってください。今までの中で自信作ですから」
そう言って佳祐が原稿を渡したのは金髪の頭ボサボサとしたパッと見、不良かレディースをやってそうな女性。
彼女の名は美和(みわ)凛子(りんこ)。
『月刊アルファ』に務める担当編集者の一人であり、新人時代の佳祐を拾い、これまで彼の担当をしてきた女性である。
「ははは、自信作って前回ポシャった『巫女っ娘探偵カグヤちゃん』もそうだったじゃないかー」
「うっ、で、でもあれは三巻まで出ましたし……!」
「まあ、佳祐の中では確かにあれは最高傑作だったよなー。巻数的にも掲載数も。けどなー、君の漫画って話やネタはいいんだけど肝心の絵がねー。もういっそのこと連載はしばらく諦めて一年くらい絵やデッサンの勉強したらどうだー?」
そうからかいながら佳祐からもらった原稿を手に取る美和。
だが、その一ページを見た瞬間、彼女の表情は激変する。
「!? ちょ、な、なんだよこれ!? 絵が、絵がすごいことになってんぞ!?」
「気づきましたか?」
慌てる美和に佳祐はドヤ顔で宣言する。
「いや! 気づくもなにもお前これ! 作画別の人間だろう!? なにやってんだよ!? つーか、どこから持ってきたこんな上手い奴!?」
「別にいいでしょう。美和さんも言っていましたがオレの漫画は絵が弱い。なら、それを補うためには二つの方法しかないと思うんですよ。一つは美和さんの言うよりに当分連載を諦めて画力のアップに時間をかける。けれど、これをやっている内にオレはその分連載のチャンスを失います。それにオレは今のイラストで数年間やってきました。この癖を直しながら急激な画力アップっていうのはかなり難しいと思います。なら、もうひとつの方法をオレは選びます。すなわち、作画は別の人に頼む。これからの田村佳祐の漫画は原作と作画に別れて作っていくんですよ!」
佳祐の発言に一瞬呆気に取られる美和であったが、すぐさま原稿と目の前の佳祐を眺めながら告げる。
「……確かにそれはひとつの手ではある。正直、私もそれは考えたことがあった。有名なの漫画で『デッドノート』。あれの原作者も実は漫画家だったが彼は物語を考えるのは上手かったが絵がギャグ向けだった。そこで絵の上手い作画担当の人と組ませることで彼の新作は爆発的ヒットを飛ばした。それに倣うわけじゃないが、確かに君の漫画も作画と原作で別れた方が案外ヒットを飛ばせるかもしれないな……にしても」
パラパラと手に持った原稿を眺める担当の美和。
彼女は一ページ一ページ、そこに描かれた内容と迫力あるイラストを見ては感嘆の息を漏らす。
「……驚いたな。この作画担当誰だ? とても新人レベルじゃないぞ。お前は勿論、現在うちの『月刊アルファ』で上位の人気を取っている漫画家さんの絵にも負けず劣らずだぞ。君、こんな上手い奴どこから持ってきたんだ?」
「いやー、まあー、それはそのぉー、守秘義務といいますかー」
「守秘義務ねぇ……今後君が原作に別れて描くなら、その作画担当にもここに来て一緒に打ち合せしてもらわないと困るんだが」
「あはは、ですよねー」
不信げに問いかける担当の美和に冷や汗を浮かべながら佳祐は曖昧に笑う。
無論、作画担当があやかしであるなんて言えるはずもなく、佳祐は必死にうまい言い訳を頭の中で考えていた。
(どうするか……。肝心の刑部には家で待っておくように頼んでおいた。が、確かに連載が決まったら今後打ち合わせの際に刑部にもここに来てもらわないといけない。さすがにあやかしだと言うわけにはいかないし……マンションの同居人と打ち明けるべきか? いや、それだとオレが女性と同棲しているってことがこの担当にバレる。この人、そういう話題には食いつくからなー。となると当たり障りのない関係……そうだな、従姉妹。そうだ! 従姉妹にしよう! うんうん、これなら通る。従姉妹の子がオレの漫画に影響されて漫画を描いて、作画担当をしたがった。で、描かせてみたら案外上手くて任せようかと思う。うんうん、これなら、通るぞ。よし!)
「さっきから何を悩んでるんだ? まさか言えないような相手じゃないだろうなー? 他の雑誌で連載中の先生とか、そういうオチはやめてくれよー」
「ち、違います! それはないです! 大丈夫です! 実はですね――」
「それを描いたのはわらわじゃ!」
ぴょこんっと佳祐のセリフを遮り、二人の机の前に現れたひとりの少女。
銀色の髪に巫女服姿の頭から狐の耳と、お尻には狐の尻尾を出した奇妙な格好の美少女。
『城化物』とも呼ばれるあやかし、刑部姫の登場に佳祐と美和は共に目を点にさせて、少女の姿を凝視するのだった。
「まあ、とりあえず見てやってください。今までの中で自信作ですから」
そう言って佳祐が原稿を渡したのは金髪の頭ボサボサとしたパッと見、不良かレディースをやってそうな女性。
彼女の名は美和(みわ)凛子(りんこ)。
『月刊アルファ』に務める担当編集者の一人であり、新人時代の佳祐を拾い、これまで彼の担当をしてきた女性である。
「ははは、自信作って前回ポシャった『巫女っ娘探偵カグヤちゃん』もそうだったじゃないかー」
「うっ、で、でもあれは三巻まで出ましたし……!」
「まあ、佳祐の中では確かにあれは最高傑作だったよなー。巻数的にも掲載数も。けどなー、君の漫画って話やネタはいいんだけど肝心の絵がねー。もういっそのこと連載はしばらく諦めて一年くらい絵やデッサンの勉強したらどうだー?」
そうからかいながら佳祐からもらった原稿を手に取る美和。
だが、その一ページを見た瞬間、彼女の表情は激変する。
「!? ちょ、な、なんだよこれ!? 絵が、絵がすごいことになってんぞ!?」
「気づきましたか?」
慌てる美和に佳祐はドヤ顔で宣言する。
「いや! 気づくもなにもお前これ! 作画別の人間だろう!? なにやってんだよ!? つーか、どこから持ってきたこんな上手い奴!?」
「別にいいでしょう。美和さんも言っていましたがオレの漫画は絵が弱い。なら、それを補うためには二つの方法しかないと思うんですよ。一つは美和さんの言うよりに当分連載を諦めて画力のアップに時間をかける。けれど、これをやっている内にオレはその分連載のチャンスを失います。それにオレは今のイラストで数年間やってきました。この癖を直しながら急激な画力アップっていうのはかなり難しいと思います。なら、もうひとつの方法をオレは選びます。すなわち、作画は別の人に頼む。これからの田村佳祐の漫画は原作と作画に別れて作っていくんですよ!」
佳祐の発言に一瞬呆気に取られる美和であったが、すぐさま原稿と目の前の佳祐を眺めながら告げる。
「……確かにそれはひとつの手ではある。正直、私もそれは考えたことがあった。有名なの漫画で『デッドノート』。あれの原作者も実は漫画家だったが彼は物語を考えるのは上手かったが絵がギャグ向けだった。そこで絵の上手い作画担当の人と組ませることで彼の新作は爆発的ヒットを飛ばした。それに倣うわけじゃないが、確かに君の漫画も作画と原作で別れた方が案外ヒットを飛ばせるかもしれないな……にしても」
パラパラと手に持った原稿を眺める担当の美和。
彼女は一ページ一ページ、そこに描かれた内容と迫力あるイラストを見ては感嘆の息を漏らす。
「……驚いたな。この作画担当誰だ? とても新人レベルじゃないぞ。お前は勿論、現在うちの『月刊アルファ』で上位の人気を取っている漫画家さんの絵にも負けず劣らずだぞ。君、こんな上手い奴どこから持ってきたんだ?」
「いやー、まあー、それはそのぉー、守秘義務といいますかー」
「守秘義務ねぇ……今後君が原作に別れて描くなら、その作画担当にもここに来て一緒に打ち合せしてもらわないと困るんだが」
「あはは、ですよねー」
不信げに問いかける担当の美和に冷や汗を浮かべながら佳祐は曖昧に笑う。
無論、作画担当があやかしであるなんて言えるはずもなく、佳祐は必死にうまい言い訳を頭の中で考えていた。
(どうするか……。肝心の刑部には家で待っておくように頼んでおいた。が、確かに連載が決まったら今後打ち合わせの際に刑部にもここに来てもらわないといけない。さすがにあやかしだと言うわけにはいかないし……マンションの同居人と打ち明けるべきか? いや、それだとオレが女性と同棲しているってことがこの担当にバレる。この人、そういう話題には食いつくからなー。となると当たり障りのない関係……そうだな、従姉妹。そうだ! 従姉妹にしよう! うんうん、これなら通る。従姉妹の子がオレの漫画に影響されて漫画を描いて、作画担当をしたがった。で、描かせてみたら案外上手くて任せようかと思う。うんうん、これなら、通るぞ。よし!)
「さっきから何を悩んでるんだ? まさか言えないような相手じゃないだろうなー? 他の雑誌で連載中の先生とか、そういうオチはやめてくれよー」
「ち、違います! それはないです! 大丈夫です! 実はですね――」
「それを描いたのはわらわじゃ!」
ぴょこんっと佳祐のセリフを遮り、二人の机の前に現れたひとりの少女。
銀色の髪に巫女服姿の頭から狐の耳と、お尻には狐の尻尾を出した奇妙な格好の美少女。
『城化物』とも呼ばれるあやかし、刑部姫の登場に佳祐と美和は共に目を点にさせて、少女の姿を凝視するのだった。
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