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27 雪国のあやかしと漫画との出会い
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そのあやかしは雪国にある辺境に住んでいた。
周りには何もなく里と言っても住んでいるのは同じ雪女のあやかしが数十人の小さな集落。
昔は多くのあやかしが住んでいたそうだが、時代と共に人間達による開発に追われ、行き場を失っていったという。
そのため、この里に残ったあやかし達は外との接触を避けて生きてきた。
だが、その里に生まれたとある少女は外への好奇心を抑えきれず、近くの村によく遊びに行っていた。
そこはたくさんの子供達が田舎の景色を背に遊びまわり、少女もそんな子供達を遠巻きに見ていた。
羨ましいな。自分もあの輪に混ざりたいなと。
だが、あやかしである自分がそのようなことをしてはいけないと里の親達の言いつけを守っていた。
そんなある日、彼女は村の子供達がよく行く場所へ足を踏み入れた。
そこは最近出来た『コンビニ』と呼ばれるところであり、子供達はそこにある『とあるもの』を手に取り、はしゃいでいた。
それは『漫画』と呼ばれるものであった。
子供達と接触できないその少女が、自分も彼らと同じようなことをしたいとその漫画を手にとったのはが始まりであった。
だが、そんな動機とは裏腹に少女はそこに描かれた漫画と呼ばれる文化に魅了されることとなる。
「――すごい」
たくさんの面白可笑しい様々な絵。
話も描いている人が別なら全く違う魅力、面白さを伝えるもの。
それが漫画であった。
どれも同じものであるにも関わらず、一つとして同じものはなく、皆違った魅力、面白さがあり、少女はその雑誌に載っていた漫画に魅了された。
「すごい……! このお話……すごく面白い……!」
夢中になって漫画を読み始める少女。
中でもその時、彼女が最初に見た雑誌に掲載されていたものこそが『田村佳祐』と呼ばれる新人が初めてのデビューを飾った漫画『侍一人犬一匹』であった。
そこから彼女の憧れは始まった。
密かに里を抜け出し、漫画を読む日々。
それだけでは飽き足らず、店員に無理を言って地方には届かないはずの『田村佳祐』が描いた漫画を全て注文するようになった。
その後は自分から様々な漫画を通販で買うことを覚え、密かに漫画の勉強も行い、里の皆や自らの家族を説得し、彼女は漫画家になるべく里を飛び出した。
そうして瞬く間に彼女の描いた漫画は『月刊アルファ』の編集部の目に止まり、デビューとなった。
更には彼女が憧れる漫画家とこうして出会えることになり、彼女は自らの運命に祝福を感じた。
「雪芽さん。どうしてここに?」
扉を開け、緊張した様子で佇む雪芽に佳祐はそう問いかけた。
「あ、その……佳祐さんもこのマンションに住んでるみたいでしたので、それでちょっと調べて部屋を尋ねさせてもらいました……」
「はあ……」
どこから調べたのかと気になる佳祐であったが、そこはあえて触れないことにした。
「それで一体何の用ですか」
「あの、佳祐さんにお願いがあるんです」
「お願い?」
唐突なその一言に佳祐は先日の編集部での雪芽のお願いを思い出す。
「もしかして、まだ組んでくださいってお願いですか? それなら申し訳ないですがお断りし――」
「い、いえ! 今日はそれとは違います。その、お願いというのは他のことで……」
なにやらモジモジと言いにくそうにしている雪芽に疑問の表情を向ける佳祐であったが、次の瞬間、雪芽は意を決したように告げる。
「け、佳祐先生の原稿を見せて欲しいのです!!」
「へ?」
周りには何もなく里と言っても住んでいるのは同じ雪女のあやかしが数十人の小さな集落。
昔は多くのあやかしが住んでいたそうだが、時代と共に人間達による開発に追われ、行き場を失っていったという。
そのため、この里に残ったあやかし達は外との接触を避けて生きてきた。
だが、その里に生まれたとある少女は外への好奇心を抑えきれず、近くの村によく遊びに行っていた。
そこはたくさんの子供達が田舎の景色を背に遊びまわり、少女もそんな子供達を遠巻きに見ていた。
羨ましいな。自分もあの輪に混ざりたいなと。
だが、あやかしである自分がそのようなことをしてはいけないと里の親達の言いつけを守っていた。
そんなある日、彼女は村の子供達がよく行く場所へ足を踏み入れた。
そこは最近出来た『コンビニ』と呼ばれるところであり、子供達はそこにある『とあるもの』を手に取り、はしゃいでいた。
それは『漫画』と呼ばれるものであった。
子供達と接触できないその少女が、自分も彼らと同じようなことをしたいとその漫画を手にとったのはが始まりであった。
だが、そんな動機とは裏腹に少女はそこに描かれた漫画と呼ばれる文化に魅了されることとなる。
「――すごい」
たくさんの面白可笑しい様々な絵。
話も描いている人が別なら全く違う魅力、面白さを伝えるもの。
それが漫画であった。
どれも同じものであるにも関わらず、一つとして同じものはなく、皆違った魅力、面白さがあり、少女はその雑誌に載っていた漫画に魅了された。
「すごい……! このお話……すごく面白い……!」
夢中になって漫画を読み始める少女。
中でもその時、彼女が最初に見た雑誌に掲載されていたものこそが『田村佳祐』と呼ばれる新人が初めてのデビューを飾った漫画『侍一人犬一匹』であった。
そこから彼女の憧れは始まった。
密かに里を抜け出し、漫画を読む日々。
それだけでは飽き足らず、店員に無理を言って地方には届かないはずの『田村佳祐』が描いた漫画を全て注文するようになった。
その後は自分から様々な漫画を通販で買うことを覚え、密かに漫画の勉強も行い、里の皆や自らの家族を説得し、彼女は漫画家になるべく里を飛び出した。
そうして瞬く間に彼女の描いた漫画は『月刊アルファ』の編集部の目に止まり、デビューとなった。
更には彼女が憧れる漫画家とこうして出会えることになり、彼女は自らの運命に祝福を感じた。
「雪芽さん。どうしてここに?」
扉を開け、緊張した様子で佇む雪芽に佳祐はそう問いかけた。
「あ、その……佳祐さんもこのマンションに住んでるみたいでしたので、それでちょっと調べて部屋を尋ねさせてもらいました……」
「はあ……」
どこから調べたのかと気になる佳祐であったが、そこはあえて触れないことにした。
「それで一体何の用ですか」
「あの、佳祐さんにお願いがあるんです」
「お願い?」
唐突なその一言に佳祐は先日の編集部での雪芽のお願いを思い出す。
「もしかして、まだ組んでくださいってお願いですか? それなら申し訳ないですがお断りし――」
「い、いえ! 今日はそれとは違います。その、お願いというのは他のことで……」
なにやらモジモジと言いにくそうにしている雪芽に疑問の表情を向ける佳祐であったが、次の瞬間、雪芽は意を決したように告げる。
「け、佳祐先生の原稿を見せて欲しいのです!!」
「へ?」
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