命の対価

桜庭 葉菜

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夢の中の女の子 1

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 朝、自分でかけた目覚まし時計の鬱陶しい音で目が覚める。

 起きたばかりの知能のない体がその音を反射的に止める。

 まだ耳の中がキーンと残響を繰り返している中、俺はふと、さっきまで夢の中で会っていた女の子のことを思い出した。

 もうこれで何度目だろうか。

 初めてこの夢を見たのは3ヶ月前だった。

 顔も名前もわからない女の子と2人で遊ぶ夢。

 遊ぶものや場所など、多少の違いはあれど、いつも同じ女の子と必ず2人っきり。

 ただの夢のはずなのに、その子のことが不思議と忘れられなくて、もう一度夢で会いたいとさえ思ってしまうほどだった。

 その時、まだベッドの上にいる俺を急かすように、目覚まし時計が再び鳴る。

 俺はそれを素早く止めてベッドから起きた。

「あら、おはよう、幸介」

 リビングにいたのはエプロンを着た母さん。

 栄養満点の朝ごはんとお弁当が既に用意されている。

 俺は小さな声で「いただきます」と言い、少し急ぎ目に朝食を掻き込んだ。

 それから制服に着替え、お弁当を持って家を出る。

 すると丁度俺の家の前を通り過ぎようとしている友達に出くわした。

「お、佐々木」

「幸介じゃん」

 2人合わせてフルネームにすんな。

「おはよ」

 そんなツッコミは無しに挨拶をする。

「しっかし夏休み初日からこれはないよな~」

 裕貴ひろたかが早々に愚痴を零す。

 これはない、とは恐らく、いや、確実に文化祭のことだろう。

 俺たちの学校は高校と大学がくっついていて、昔大学の偉い人かなんかが高校の文化祭を夏休み中にやると決め、今も律儀にそのままのルールで続いている。

高校側も今更文化祭の日付を変えるのはいろいろと面倒なんだろうとは思うが、俺たち学生からすれば夏休みの前半が文化祭のために潰れてしまう。

 通常の授業より楽とはいえ、実質夏休みが普通の学生の半分しかないようなものだ。

 ほかの高校の奴らは今日からゆっくり夏休みなのだが、当然俺たちは朝からみっちり準備だ。

 まぁ、文化祭の準備がなかったところで、その場合朝から部活になるんだろうけど。

 裕貴は単に文化祭の準備というものがそこまで楽しくないんだろう。

「お前それ去年も言ってたぞ」

 そう冷静に突っ込んだのは雅也まさや

 こいつらとは去年のサッカー部入部説明会の時に出会い、それ以来ずっと一緒にいる。

 早見はやみ 裕貴はちょっとチャラ目で『ザ・サッカー部』って感じ。

 反対に新島にいじま 雅也はしっかりしていて、来年の1番の部長候補だ。

「幸介と雅也のクラスは何やるん?」

 1人違うクラスの裕貴が聞いてくる。

「俺たちは焼きそばを売るんだ」

「あぁ、見事に雅也の案が通ったよな」

 俺の受け答えに続いて雅也が詳しい説明を始める。

 文化祭当日は調理室を借り、出来立ての焼きそばを教室で提供をする。

 使う具材や調理の仕方などは、料理ができる女子達が考えてくれることになった。

 当日は調理係、ウエイトレス係、宣伝係の3つに分かれて仕事をする。
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