命の対価

桜庭 葉菜

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交わらない思い出 4

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「今のひろゆきくんも、こうちゃんも私も、他にも……みんなでここで遊んでて……」

 そんな記憶、俺にはなくて。

「中学に上がってから、あそこのマンションに住んでた私のお母さんの家にも行ったんだよ……?」

 その言われたマンションに目をやる。

 知ってる。

 あそこにマンションがあることくらい。

 でも俺は、あのマンションに入ったことなんてないんだ。

「なんで、何も覚えていないの……?」

 変わることのないこの風景。

 忘れるはずのない懐かしい日々。

「私はこんなにもこうちゃんが大好きで、ずっと会いたかったのに!」

 俺が鈴木さんに出会ったのはついこの間なのに。

「こんななら、文化祭のあの日、会わなきゃ良かった!」

 初めて見る鈴木さんの姿。

「連絡先も交換しなきゃよかった!」

 彼女の顔は涙でいっぱいで。

「あの時……逆上がりを教えてもらわなきゃよかった……」

 まるで幼い女の子に戻ったかのような彼女が、俺の前から走り去っていった。

「俺は、誰にも逆上がりなんて教えた事、ないんだよ……」

 まだ走り去る彼女が見える中、俺は一緒に向かうはずだった場所へと1人、足を進めるしかなかった。
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