命の対価

桜庭 葉菜

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命の記憶 2

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「でも、俺はちゃんと契約をして――」

「それはあくまでも生きているキミに対してであって、もう今のキミには関係のない話だよ」

 そんな屁理屈みたいな話……でも、

「ありがとう」

 俺の中にあった靄は完全に晴れた。

「死神、お前って本当に死神なの?」

「それってどういう意味?」

 少しイラっとしながらやっとこちらを向いた。

「実は死神じゃなくて天使だったりして」

 若干の笑みを浮かべながらそう言うと、そいつはあきれながら、天使ならキミの命を奪ったりしないでしょと言ってきた。

 確かにそうかもしれないけれど、それでも、俺にとっては天使みたいなものだった。

「俺、この1年、生きることができてよかった」

 これは本当に正直な気持ち。

 みんなともう会えないことを考えると辛い。

 でも俺は本当だったらあの1年前、事故にあったとき、もういなくなる運命だった。

 それが俺は死神に出会い、1年というとても長い時間をもらった。

 その間こいつは俺のことを一番そばで支えてくれて、俺の最期の願いもすべて叶えてくれた。

 本当は生きてやりたいことはいっぱいあったけど。

 1年前に死んでいたらできなかったことをたくさんさせてもらった。

「死神、本当にありがとう」

「こちらこそ、」

 ありがとう、そう言ったときにはもう、小さな背中がたったひとつ残っているだけだった。
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