命の対価

桜庭 葉菜

文字の大きさ
42 / 47

罪【佐倉雛子】

しおりを挟む
 大切な人を、事故で亡くした。

 大切な人といっても、家族でもなくて、ましてや彼氏でもない。

 ただ私が勝手に、1年と少しの間ずっと片思いをしていた人。

 高校に上がって初めて話をした男の子が彼で。

 ほとんど男の子と仲良くする機会がない私がそれでも話したことがある男の子が彼で。

 気が付いたら好きになってた。

 2年生になって、また同じクラスになれて本当にうれしかった。

 これから少しずつでも仲良くなっていって、いつか付き合ったりできたらなんて、そう思ってた。

 そんなある夏の日。

 私は、もう今は一緒に住んでいないお父さんと会う約束をしていた。

 もう思い出したくない。

 毎日あの日の光景が夢に出てくる。

 目の前で起きたその光景を理解できなくて。

 無傷なはずなのにふらふらとする体で彼のもとに駆け寄る。

 あんな形で彼に触れたくなかった。

 そしていつも、彼を目の前で看取ったところで目が覚める。

 これは私が一生背負わなければいけない罪。

 毎朝そう刻み付けてから、彼がもう行くことのできない学校に行く。

 どうして、どうしてなの。

 1ヵ月、半年、1年たっても、私は彼の死を受け入れることができなかった。

 そしてまた今日も、同じ夢を見る。

 ああ、また今日も彼は、私の目の前で――

「佐倉さん」

 彼が私の名前を呼ぶことなんて、今までなかった。

「もう、いいんだよ」

 弱った声で、震えた腕で。

「ずっと苦しめててごめん。ありがとう」

 そこで目が覚めた。

 夢の中で、彼は確かに私に向かってありがとうと言った。

「いいのかな、私……」

 これは彼の言葉じゃない。

 私が勝手に作り出しただけのもの。

 それでも少しだけ、ほんの少しだけ。

 いつもとは違う、暖かい涙が頬を伝った。

 佐々木幸介くん、大好きでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

好きって伝えたかったんだ。

まいるん
恋愛
ごめんなさい。 あの時伝えてれば。素直になれていたら。 未来は変わったのだろうか。 ずっと後悔してる。 もしもう一度君に会えたら。 もしもう一度君と話せたら。 高校1年生のすいは、同い年で幼なじみの蓮のことが好きだけど、告白できずにいた。想いを伝えることはできるのか。2人は結ばれるのか。 幼なじみ同士の少し不思議で切ない物語。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...