Perfect Vampire ~ 永遠の命も君とともに ~ 

月河未羽

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吸血鬼の集団

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 レインはラヴィをうながして、壁際かべぎわに隠れた。そして、レインだけが窓から外の様子を見て、苦い表情を浮かべる。やはり・・・と思う者たちがいる。その多くは柵で囲まれた庭の空き地に降り立ち、今はその全員がそこに集まっているようだ。

 輝く月光のもと、誰もかれもが青白い肌で、目の色は真っ赤だ。堂々とそのままの姿で現れたそれらは、そう・・・。 

 吸血鬼ヴァンパイア

 それを確認したレインはすぐに思い出した。街で聞いたあの噂・・・こいつらか。だが、同日、ほぼ同時刻・・・というより、これは・・・。

 不可解ではあるが、分からないでもない・・・とレインは推測した。集団で来たなら、ここが孤児院だと知ってのことだろう。狙いは子供たちか・・・。だが、そうだとしても、ここに来れば真っ先に目をつけられるのは・・・。

 ラヴィ。

「レイン・・・外・・・何がいるの?」
「そのまま・・・じっとしてて。」

 レインは頭が見えないように座りこんでいるラヴィに顔を寄せた。

「外にいる人たちと話をしてくる。そのあいだに皆を連れて、裏口からそっと抜け出して。そして、いちばん早く陽が射してくる場所へ向かうんだ。君なら知ってるだろ? 皆を守るのは君の義務だから、ほかのことは俺に任せて。」

「レイン・・・それって・・・。」

「あとで教えてあげる。」

 ため息交じりな微笑を残して、レインは一人で出て行ってしまった。





 レインは玄関から出て、それらがいる方へ真っ直ぐに歩いて行った。歩きながら、苦しまぎれな策をあれこれと考えた。見えすいたうそでも誤魔化ごまかしでもくだらない話でもなんでもいいから、とにかく、どうにか気を引き付けているあいだに逃げてもらうしかない。夜が明けるまで。正直、状況は絶望的だ。ちょっと意識を向けられれば、逃げたとすぐにバレるだろう。精度が優れていれば居場所もつきとめられる。それでも時間をかせぐ以外にできることがない。
 
 レインは東の空を見た。同じく吸血鬼である自分のことは気にしていられる余地がなかった。夜明けまで、あとどれだけ耐えられればいい?

 それら吸血鬼の集団が、何の武器も持たずに無防備で向かってくるレインに気づいた。そして注意深くレインを見つめ、そろって怪訝けげんそうな表情を浮かべている。いやに冷静なこの男は、何か交渉でもしようという気か?

「お出迎でむかえとはご丁寧だな。ここの管理人か?」

 いちばん手前にいる吸血鬼が言った。黒髪でまぶたにキズがあり、背が高くて貫禄かんろくがある。この男がリーダーでおおよそ間違いない。

「ある意味、そうだ。わざわざこんな所に来るなんて、街にはもう美味い獲物がいなくなったのか。」
 レインは不自然でないくらいに間をとったり、時間をかけてしゃべった。

「なにか勘違いをしているようだが、ここには用があって来た。」

「この建物がなにか知っているんだろう? 狩りをしに来たんじゃないのか?」

 レインが時間をかせごうと内心懸命になっているそのあいだ、男の方は急に顔をしかめて、いやにレインを凝視ぎょうししている。

「お前・・・。」

 当然すぐに気づくだろうと分かっていたレインは、男のこの反応にはまったく顔色を変えなかった。今ごろ気づいたのかと呆れただけだ。

「さっきから違和感を感じていたが、なんだ、お前も。何人も引き連れて来たから麻痺してたんだな。」
 男は自分の後ろにいる手下てしたを振り返り、レインに向き直ってニヤッと笑った。
「正体を現せ、仲間ヴァンパイアよ。」
  
 レインは、これには応じなかった。この展開から話題を増やすことだけを考えていた。

「なぜ集団で行動している。討伐隊とうばつたいが黙っていないぞ、迷惑だ。」

「はっ、知らぬとは暢気のんきな奴だ。いつから帰っていないんだ、お前は。」
 リーダー格のその男は腕を組み、ため息をついて言った。
「同郷のよしみで教えてやろう。革命だよ。」

 レインは驚いたが、話を引き延ばすには好都合。まずは得意げにしゃべるその男の説明を聞くことに。

「世襲君主制は崩壊し、もと王族は皆殺しの刑に処された。だが生き残りがいると聞いてな。それも種特異性吸血鬼パーフェクト・ヴァンパイアを作り出す変異種。我らの長がその力を手に入れ、永久に最強の王となる。これまで我々は人間から追われる立場でもあったが、これからは団結して人間界を支配するのだ。どうだ?お前にとっても悪い話ではないだろう。そういうわけで ―― あっ‼」

 男は突然大声を上げたかと思うと、うろたえてレインの両肩につかみかかった。

「いや、ちょっと待て、お前ここで何してる?まさか⁉」

 勢いに圧倒されて、レインは男の動揺まる出しの顔をただ見つめ返すしかできずにいる。

「・・・お前がもう手に入れたのか?」

 分かるようで分からないことを言う・・・と、レインは少し困惑した。これはプライベートな質問か?まだノーだよ、いろいろ複雑なんだよ、悪かったな。

「年頃の若い女がいなかったか?」

 レインはハッとした。さっきは勝手な解釈で腹を立ててしまったが、ラヴィのことだと断定できる言い方をしてきたのは、今が初めて。こいつら、もともと狙いはラヴィか。そういえば、生き残りがどうとか、ほかにも妙なことを言っていたな。

 レインは密かに力を使い、屋敷の気配を探った。そして、表情には出さずにホッとした。ひとまず、うまく出られたみたいだ。










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