イルマの東へ

月河未羽

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第2章  旅立ち

《原作》 嵐のあと

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 疲れがたまっている体で、薄暗い洞窟どうくつにいた二人が目覚めたのは、もう昼も近いと思われる頃だった。

 アベルの方は明け方から何度か目を覚ましたが、起き上がることができず、また眠るということを繰り返していた。同時にのどかわきが気になったものの、水筒は少し離れたところに置いてあり、取りに行く気力がわかなかった。

 リマールがやっと目覚めた時になって、理由が分かった。
 アベルは熱を出していたのである。

 リマールは、症状に合う薬を荷物の中から取り出した。
「薬も少しは持って来ていて良かった。」 

 アベルは薬と一緒に水を飲ませてもらい、やっと喉がうるおった。

 昨夜の暗い中で、この洞窟どうくつは立ち上がることができるくらいの高さだということ、そして入口の辺りに大きな岩が突き出していることだけは分かっていた。外から光が射しこんでいる今よく見回してみると、思ったよりも広くてずっと深い。奥へ向かって道のようなものが伸びている。大きな岩は所々にあり、少しこけむした灰色の岩肌いわはだおおわれた中は、ちょっとひんやりしている。だが幸い天気は回復し、文句無しの晴天とまではいかないものの、空は陽の光を感じられるほどには晴れていた。

 二人は陽射しを浴びたいと思い、アベルも少し無理をして洞窟の外へ出た。そこでリマールは軽く朝食をとったが、アベルは全く食欲がなく、一口も喉を通る気がしなかった。

「この奥、あとでちょっと調べてくるよ。」
 リマールが洞穴ほらあなの奥を振り返って言った。

 やがて食べ終わったリマールは、着替えて一人奥へと踏み込んで行った。

 ハーフケットにくるまったままのアベルは、大きな岩のかげにまた横になった。

 洞窟にひびく、リマールの足音が聞こえる。それは次第に小さくなっていき、消えた。

 どこまで続いているんだろう・・・大丈夫かな。そんなに離れないでほしいけど・・・。
 そう思っているうちにまた同じ足音がして、しばらくして戻ってきたリマールは、胸の前に枯葉かれはの付いた枝(太いものや細いもの、いろいろ混ざっていた)を10本くらい抱えていた。

「ほら、見て。前にも誰か来たんだ、これ使えるよ。」
 リマールは、抱えていたものを地面に置いた。そして自分のハーフケットを持ってくると、寒気がしているに違いないアベルに重ねてあげながら、言葉を続けた。
「それに、分かれ道がいくつもあった。そこへかくれられるし、もう一日ここに居よう。何か燃やせそうなもの、もっと探してくる。」

 アベルは行かないで欲しかった・・・けど、かすれた声しか出せなかった。

 リマールは、アベルが何か言いたそうにしていたことにも気づかず、行ってしまった。

 アベルは一人になった。

 なぜか言いようのないさみしさに襲われた。
 眠ろう・・・。目が覚めたら、リマールはきっとそこにいる。明日、先へ進むために、病気を治さなくちゃいけない。眠ろう・・・。

 アベルはじっと目を閉じた。眠ることだけを考えようとした。
 ところが・・・上手くいかない・・・寝すぎてしまったせいかな。
 アベルはため息をついて、小さな毛布をぎゅっとき寄せた。


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