18 / 34
十八 祖父への直談判
しおりを挟む
阿波尾鶏は、美味しい鍬焼きに化けた。こんがりと焼き目のついた鶏肉を食卓に運んでいると、あさぎが玄関で脱いだ靴をそろえていた。
千草が母と話し、鶏肉が料理されるあいだ、ずっとあさぎは、車のなかにいたのだろう。千草と目が合うと、いつものやわらかな表情が浮かぶ。そのようすに、気持ちが乱される。
あさぎは千草の手元の料理を見て、大袈裟なくらいに喜んだあと、こちらの背中をぱしりと叩いた。
「がんばりなさい。ちーちゃんには、あたしのぶんまで蒅づくりを学んでもらわな! ゆくゆくは、製藍所を継ぐのもええね!」
ごめんなさい。口をついて出そうな謝罪を飲みこむ。あさぎが求めているのは、そんなことばではないはずだ。だから、千草は、にっかりと笑った。
「──あとを継いで、叔母さんに蒅をお安く融通すればいいの?」
「よくわかってるじゃないの!」
掛け合いをして、あさぎとは別れ、皿を乗せた盆を運ぶ。途中から、松葉と神田も配膳係に加わる。
箸と箸置き、取り皿に大皿料理、個々に盛り付けられた中皿、ご飯茶碗に味噌汁椀、小鉢と湯飲み。てきぱきと並べていきながら、頭は完全に、どうやって祖父を攻略しようかと、そればかり考えていた。
交渉は、話術だ。千草は、保険外交員として、ひとと話す技術は人一倍磨いてきたつもりでいる。交渉の成否を握るのは、下準備の精度だが、それ以上に、双方に利を得ることが後腐れなく交渉を終えるうえで、何よりも大事なことだと思う。
──じいやんの利益って、なんだろう。
そこが最もアピールすべき点であるにも関わらず、まったくと言ってよいほど、千草が製藍所の仕事を手伝うことで得られる利益が思い浮かばない。跡継ぎは父がいるし、人手は足りている。特段、女手のいる仕事ではないし、女性が必要なら、今年は須原がいる。
そこまで考え至って、千草はぴたりと手をとめた。
──そうだ、須原さんだ。
手がかりを見つけ、千草は思考に沈んだ。須原のことを使うなら、ピークテクニックとフット・イン・ザ・ドアの組み合わせができる。ピークテクニックは、相手の意表をついて、話を聞いてもらうこと。フット・イン・ザ・ドアは、小さな肯定を積み重ねて、大きな目的にも頷かせるための技だ。
うわのそらのまま、食事の席に着いた千草に、注意を払うひとはいない。それをよいことに、交渉の段取りを組み立てつづける娘のまえで、母が父に声をかけた。
「このお肉、あさぎさんが持ってきてくれたのよ。どう、阿波尾鶏のお味は」
単純に、ただ『うまい』と答えた父は、そう思うだろう? と、質問の矛先を祖父に向ける。祖父は渋面のまま、箸を一度置き、少しばかりひねくれた回答をよこした。
「妙な名前の鶏じゃけんど、味は悪うない」
「あら! やっぱり、良いお肉は違いますね。お父さんのお気に召してよかったわ。近ごろ、めっきりお肉を召し上がらなくなったから、心配していたんですよ?」
母はそう言って話題を引き取ると、祖父の健康を気遣いつつも、食卓についた面々を見渡す。
「お若いかたは、もっと食べられるでしょう? おかわりはいかが?」
からだの大きな松葉や、背の高い神田は、こうしたときにターゲットになりやすいらしかった。ひたと見据えられた松葉は、やんわりとした拒否を述べる。
「おいしいものは、少しだけいただくほうが深く満足できる性質なものですから」
その表現に、神田がくちびるを尖らせた。
「松っちゃん、カッコイイこというよね! 僕は、おかわりをいただいてもいいですか?」
母に懐いている神田は、いつものきゅるんとしたあざとさを見せる。毎度の食事で餌付けでもされているのか。母のほうは、もうひとり息子が増えたくらいの感覚だろう。神田におかわりを用意してやっているようすは、兄たちの世話をする姿と、よく似ている。
千草は食事を終え、皿を盆のうえにさげると、祖父をうかがった。よほど、鍬焼きが気に入ったのか、祖父は空の皿を前に食後の茶を口にしながら、表情をゆるめている。
頼みごとをするのならば、相手の機嫌のよいときを狙うのが人付き合いの鉄則だ。千草は腰を浮かせ、祖父の近くに寄った。
「じいやん、話があるんだけど」
千草の呼びかけに相好を崩し、祖父は茶もなかばに自室へ行こうかと言いだした。そこへ来たのは、母だった。
母は祖父の食事の皿を片付け、かわりにいちごを盛ったガラス鉢を置いた。
「千草のぶんのデザートも、こっちに置くわね」
「わあ、ありがとう!」
タイミングを逃した祖父は、黙って湯飲みをまた手に取ると、話をうながすように千草を見た。千草は段取りを思い出しながら、ゆっくりと慎重に口を開いた。
「──あのね、じいやん。わたし、須原さんと仲良くなりたいの」
ちょっと甘ったれた子どもっぽい声を出しながら話しはじめると、あちらでゲホッと盛大に噎せた音がした。
祖父につられて視線をやると、咳き込む神田の背中を松葉がさすってやっていた。神田の涙目が、こちらを窺っている。
そうか、そちらにも聞こえていますか。きっと、松葉も聞いているのだろう。あさぎは知らんぷりだが、きっと内心楽しんでいるに違いない。千草はやりにくさと恥ずかしさを覚えながらも、祖父に向き直った。
「実はね、空港へお迎えに行ったときに、気に障ることをしてしまったみたいなの。それから、あんまりよく思われていないみたいで、そっけないんだ。須原さんは、他のおふたりみたいに下宿していないし、食事もいっしょにできないじゃない? 交流が持てるとうれしいんだけど」
「製藍所で会えばええ」
もじもじした態度を祖父に一刀両断されて、千草はややもするとガッツポーズを取りそうな自分を抑え、ことばを選んだ。
「うん、わたしもそうしたい。だからね、共通の話題が持てるように、わたしにも藍のことを教えてほしいの」
「……それは、千草も蒅を作りたいという意味か?」
だんまりをしている祖父のかわりに、父が口を開く。千草はからだを祖父にむけたまま、首を巡らせ、はっきりとうなずいた。
「藍の寝床での火傷のこと、あさぎ叔母さんから聞きました」
そのひとことを投下したとたんに、ぴんと空気が張りつめたのを肌で感じる。父も祖父も、知りたいとねだったところで「よし、教えてやろう」と言いだすような相手ではない。千草は居住まいを正し、前屈みになり、床に手をついた。頭を下げる支度をしながら、祖父を見据える。
「もう、あのころのように不注意で怪我をする年ではありません。どうか、わたしにも、藍に関わらせてください」
目線を落とした千草の両肩を押さえたのは、しわのよった祖父の手だった。
「女が、軽々しゅう頭をさげるもんじゃない」
「役場でもどこでも、わたしは深見製藍所のお孫さんって呼ばれるのよ。わたしは藍から離れられないのに、藍がどんなものかも上っ面しか知らない。須原さんにも言われたよ、藍師の孫娘なのにって」
使えるカードは、余さずすべて場に出した。千草はじっと祖父を見つめ、祖父は千草を見つめ返していた。だが、やがて目をそらし、ゆるゆるとためいきをついた。
「明日から、五時半に畑に来いや」
「はいっ」
顔がほころぶ。千草は思わず、祖父の首っ玉に抱きついた。
「ありがとう! ありがとう、じいやん」
「まったく、父さんはいつまでも千草に甘いんじゃけん」
父が呆れたように笑う。あさぎは、親指で目尻をそっと拭っていた。神田はぽかんとして、そして、松葉は興味深そうにこちらをみていた。
「みなさん、お手々がお留守ですよ。せっかくのいちご、召し上がってくださる?」
母のほがらかな声が響く。みんながそれぞれにガラス鉢を手に取るのを眺めながら、千草は何度か手を結んでは開いた。
勝ち取ったものは、確かにてのひらにあるような気がしていた。
千草が母と話し、鶏肉が料理されるあいだ、ずっとあさぎは、車のなかにいたのだろう。千草と目が合うと、いつものやわらかな表情が浮かぶ。そのようすに、気持ちが乱される。
あさぎは千草の手元の料理を見て、大袈裟なくらいに喜んだあと、こちらの背中をぱしりと叩いた。
「がんばりなさい。ちーちゃんには、あたしのぶんまで蒅づくりを学んでもらわな! ゆくゆくは、製藍所を継ぐのもええね!」
ごめんなさい。口をついて出そうな謝罪を飲みこむ。あさぎが求めているのは、そんなことばではないはずだ。だから、千草は、にっかりと笑った。
「──あとを継いで、叔母さんに蒅をお安く融通すればいいの?」
「よくわかってるじゃないの!」
掛け合いをして、あさぎとは別れ、皿を乗せた盆を運ぶ。途中から、松葉と神田も配膳係に加わる。
箸と箸置き、取り皿に大皿料理、個々に盛り付けられた中皿、ご飯茶碗に味噌汁椀、小鉢と湯飲み。てきぱきと並べていきながら、頭は完全に、どうやって祖父を攻略しようかと、そればかり考えていた。
交渉は、話術だ。千草は、保険外交員として、ひとと話す技術は人一倍磨いてきたつもりでいる。交渉の成否を握るのは、下準備の精度だが、それ以上に、双方に利を得ることが後腐れなく交渉を終えるうえで、何よりも大事なことだと思う。
──じいやんの利益って、なんだろう。
そこが最もアピールすべき点であるにも関わらず、まったくと言ってよいほど、千草が製藍所の仕事を手伝うことで得られる利益が思い浮かばない。跡継ぎは父がいるし、人手は足りている。特段、女手のいる仕事ではないし、女性が必要なら、今年は須原がいる。
そこまで考え至って、千草はぴたりと手をとめた。
──そうだ、須原さんだ。
手がかりを見つけ、千草は思考に沈んだ。須原のことを使うなら、ピークテクニックとフット・イン・ザ・ドアの組み合わせができる。ピークテクニックは、相手の意表をついて、話を聞いてもらうこと。フット・イン・ザ・ドアは、小さな肯定を積み重ねて、大きな目的にも頷かせるための技だ。
うわのそらのまま、食事の席に着いた千草に、注意を払うひとはいない。それをよいことに、交渉の段取りを組み立てつづける娘のまえで、母が父に声をかけた。
「このお肉、あさぎさんが持ってきてくれたのよ。どう、阿波尾鶏のお味は」
単純に、ただ『うまい』と答えた父は、そう思うだろう? と、質問の矛先を祖父に向ける。祖父は渋面のまま、箸を一度置き、少しばかりひねくれた回答をよこした。
「妙な名前の鶏じゃけんど、味は悪うない」
「あら! やっぱり、良いお肉は違いますね。お父さんのお気に召してよかったわ。近ごろ、めっきりお肉を召し上がらなくなったから、心配していたんですよ?」
母はそう言って話題を引き取ると、祖父の健康を気遣いつつも、食卓についた面々を見渡す。
「お若いかたは、もっと食べられるでしょう? おかわりはいかが?」
からだの大きな松葉や、背の高い神田は、こうしたときにターゲットになりやすいらしかった。ひたと見据えられた松葉は、やんわりとした拒否を述べる。
「おいしいものは、少しだけいただくほうが深く満足できる性質なものですから」
その表現に、神田がくちびるを尖らせた。
「松っちゃん、カッコイイこというよね! 僕は、おかわりをいただいてもいいですか?」
母に懐いている神田は、いつものきゅるんとしたあざとさを見せる。毎度の食事で餌付けでもされているのか。母のほうは、もうひとり息子が増えたくらいの感覚だろう。神田におかわりを用意してやっているようすは、兄たちの世話をする姿と、よく似ている。
千草は食事を終え、皿を盆のうえにさげると、祖父をうかがった。よほど、鍬焼きが気に入ったのか、祖父は空の皿を前に食後の茶を口にしながら、表情をゆるめている。
頼みごとをするのならば、相手の機嫌のよいときを狙うのが人付き合いの鉄則だ。千草は腰を浮かせ、祖父の近くに寄った。
「じいやん、話があるんだけど」
千草の呼びかけに相好を崩し、祖父は茶もなかばに自室へ行こうかと言いだした。そこへ来たのは、母だった。
母は祖父の食事の皿を片付け、かわりにいちごを盛ったガラス鉢を置いた。
「千草のぶんのデザートも、こっちに置くわね」
「わあ、ありがとう!」
タイミングを逃した祖父は、黙って湯飲みをまた手に取ると、話をうながすように千草を見た。千草は段取りを思い出しながら、ゆっくりと慎重に口を開いた。
「──あのね、じいやん。わたし、須原さんと仲良くなりたいの」
ちょっと甘ったれた子どもっぽい声を出しながら話しはじめると、あちらでゲホッと盛大に噎せた音がした。
祖父につられて視線をやると、咳き込む神田の背中を松葉がさすってやっていた。神田の涙目が、こちらを窺っている。
そうか、そちらにも聞こえていますか。きっと、松葉も聞いているのだろう。あさぎは知らんぷりだが、きっと内心楽しんでいるに違いない。千草はやりにくさと恥ずかしさを覚えながらも、祖父に向き直った。
「実はね、空港へお迎えに行ったときに、気に障ることをしてしまったみたいなの。それから、あんまりよく思われていないみたいで、そっけないんだ。須原さんは、他のおふたりみたいに下宿していないし、食事もいっしょにできないじゃない? 交流が持てるとうれしいんだけど」
「製藍所で会えばええ」
もじもじした態度を祖父に一刀両断されて、千草はややもするとガッツポーズを取りそうな自分を抑え、ことばを選んだ。
「うん、わたしもそうしたい。だからね、共通の話題が持てるように、わたしにも藍のことを教えてほしいの」
「……それは、千草も蒅を作りたいという意味か?」
だんまりをしている祖父のかわりに、父が口を開く。千草はからだを祖父にむけたまま、首を巡らせ、はっきりとうなずいた。
「藍の寝床での火傷のこと、あさぎ叔母さんから聞きました」
そのひとことを投下したとたんに、ぴんと空気が張りつめたのを肌で感じる。父も祖父も、知りたいとねだったところで「よし、教えてやろう」と言いだすような相手ではない。千草は居住まいを正し、前屈みになり、床に手をついた。頭を下げる支度をしながら、祖父を見据える。
「もう、あのころのように不注意で怪我をする年ではありません。どうか、わたしにも、藍に関わらせてください」
目線を落とした千草の両肩を押さえたのは、しわのよった祖父の手だった。
「女が、軽々しゅう頭をさげるもんじゃない」
「役場でもどこでも、わたしは深見製藍所のお孫さんって呼ばれるのよ。わたしは藍から離れられないのに、藍がどんなものかも上っ面しか知らない。須原さんにも言われたよ、藍師の孫娘なのにって」
使えるカードは、余さずすべて場に出した。千草はじっと祖父を見つめ、祖父は千草を見つめ返していた。だが、やがて目をそらし、ゆるゆるとためいきをついた。
「明日から、五時半に畑に来いや」
「はいっ」
顔がほころぶ。千草は思わず、祖父の首っ玉に抱きついた。
「ありがとう! ありがとう、じいやん」
「まったく、父さんはいつまでも千草に甘いんじゃけん」
父が呆れたように笑う。あさぎは、親指で目尻をそっと拭っていた。神田はぽかんとして、そして、松葉は興味深そうにこちらをみていた。
「みなさん、お手々がお留守ですよ。せっかくのいちご、召し上がってくださる?」
母のほがらかな声が響く。みんながそれぞれにガラス鉢を手に取るのを眺めながら、千草は何度か手を結んでは開いた。
勝ち取ったものは、確かにてのひらにあるような気がしていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる