聖娼王女の結婚

渡波みずき

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「ララが信じてくれていても、神殿長が通してくれないのなら、やむを得ないか」

 ひとりつぶやいて、セレスタンはライラに向かって腕を広げた。

「おいで、ララ」

 呼ばれて、床に膝をつき、迷いなく飛び込む。抱きしめられて、顔がゆるむ。間近に迫ったセレスタンの瞳を見上げると、頬を撫でられた。うれしくて浮かんだ笑みに、セレスタンは面映そうにした。

「ララは、思っていたよりずっと素直に感情が顔に出るんですね。こんなに可愛らしい顔をしてくれるなんて」

 くちびるを指でなぞられ、目を閉じる。体温を感じるほど、セレスタンの顔が近づいてくる。くちびるが合わさると、痺れるような感覚が首筋から下に向かって走った。舌も口のなかも何もかもが敏感にセレスタンを感じ取ろうとする。

「ふ……ぅ、は……ん………んん」

 口を開けるたびに漏れる自分の甘えた声を聞いて、気持ちが高まる。セレスタンに、とびきり甘やかしてほしい。うんと気持ちよくして、何も考えられなくしてほしい。

 セレスタンの衣装の胸元を掴む。すがりついた手の甲を撫で、セレスタンはくちびるを離し、優しく微笑んだ。

「私だけのものになってください。他の男に肌を許すなんて、もってのほかです」
「ええ、神殿から出ることがあれば、ティノのものになりましょう」
「──私でなければ嫌だと言わせたいな」
「えっ?」

 低い声で言われたことばに、聞き間違いかと思ったが、次の瞬間には、ライラは寝台のうえに連れていかれていた。セレスタンはライラを寝台のうえで転がすと、四つん這いにさせて、背後から抱きすくめた。

「儀式はします。その前に少しだけ、乱暴なことをするのを許してください」

 衣擦れの音が聞こえた。服を脱いだのだと気づいたのは、足が密着したときだった。セレスタンの肌が太ももに触れる。熱いものが太もものあいだに差し込まれて、違和感にライラはうしろを探ろうとした。

「ティノ、ねえ、何するの?」
「うわ、やわらかい──」

 ふたり同時に声を上げる。ライラは寝台についた両腕のあいだから、自らの下腹部を確かめようとした。服が邪魔で、裾を片手で持ち上げる。太ももと股の三角にできた隙間に、見慣れぬ赤いものがあった。

「ティノ、これって……」

 問いかけながら、指先で触れた途端に、セレスタンが高く啼いた。弾力のある柔らかいもの。しかも、ライラの体温よりちょっとだけ熱い。

「ララ、ダメです、触らないで! 限界なんです!」
「限界って、どうしたの。どういうこと?」

 混乱したライラの腰を掴んで、セレスタンは説明もなしに動きはじめる。肉がぶつかる音とともに衝撃が来た。腕では耐えきれず、寝台にうつ伏せになる。尻を高く突きあげた体勢に、さすがに羞恥心が拭えない。セレスタンが動くたび、陰部がこすれる感覚に、昨夜のことを思いだす。先ほど見たのが陰茎だったのかと気づいて、ライラは何をされているかうっすらと悟った。

「あっ、あっ、あっ、ん、はっ、はぁっ」

 規則正しい律動で刺激され、腹から空気が勝手に押し出される。擦られたところが熱を持ち、徐々にぬるついて滑りが良くなる。動きがなめらかになるにつれ、感覚が研ぎ澄まされていく。セレスタンの顔が見えないのが、何も声をかけてくれないのが、怖い。

「ティノっ、ティノ! これ、怖くて嫌!」

 叫ぶと、セレスタンの動きがぴたりと止まった。仰向けにひっくり返されて、心配そうながらも陶然とした彼の顔にほっとする。抱きついて、くちづけをねだる。軽い、触れるだけのくちづけを繰りかえし、セレスタンは掠れた声で言った。

「すみません、ララのからだに夢中になってしまって。うしろから見ると、背中から腰にかけての線がすごく煽情的でうつくしいんです。それに」

 ことばを止めて、視線をチラリと下に向ける。勃ちあがり、血管の浮き出た男根のようすに、ライラはついつい見入り、手を伸ばす。

「だから、ダメだと、う、あぁ……ッ」

 寸前で引き留められたものの、指先がほんのすこし触れた。セレスタンがぶるぶるっとからだを振るわせ、ライラの触れたところから白濁した粘液が噴き出した。二度、三度と脈打つように出てきては、指にどろりとまとわりつく。

 ライラは、初めて見た射精にぽかんとして、自身の手や太ももを濡らす液体をじっくりと確かめる。においを嗅ごうとして顔に近づけた手を、ガッと強い力で掴まれる。敷布の端ですべてをきれいに拭われて、改めて見つめたセレスタンは、目尻が赤かった。

「限界だって、言ったじゃないですか。ララがあんまり誘うから、あなたのなかに入りたくてしかたがなかったんです。……ああ、もう、こんなの、見せるつもりはなかったのに!」

 いつもの余裕がなくなり、言い訳がましく言い募る姿がまるで少年のようで、愛らしく感じて、ライラはセレスタンに寄り添って、頬にくちびるを寄せた。

「ふふ、可愛い」
「か、可愛いっ? 私が?」
「あら、いけない?」

 笑って、ライラは寝台のうえで膝立ちになり、服を脱いだ。最後の肌着も取り去る。自分のからだに目を奪われているセレスタンのようすに満足しながら、もう一度、先刻のように彼の手で乳房をこねる。彼の手に胸を任せて、自分はセレスタンの耳のふちをなぞる。

 胸の頂きをくりくりといじられ、喘いで、セレスタンの肩に寄りかかる。両足を閉じさせて太もものうえにまたがると、視線がだいぶ近くなった。足の下に巻き込んだ衣装を持ち上げ、手を差し入れ、肌をたどりながらめくりあげていく。腕が邪魔した。セレスタンがバッとその先を脱ぐ。

「ティノ、気持ちがいいの。もっとたくさん触って?」
「いくらでも、仰せのままに」

 余裕を取り戻して、セレスタンがライラの腰を抱き寄せた。みぞおちのあたりに顔を伏せ、舌とくちびるとでライラを攻め立てていく。あと一歩のところまで近づいては引いていく波に、もどかしさと苛立ちを感じる。舌は乳輪をぐるりとなぞっては、別の場所に向かう。いっこうに決定的な刺激を与えようとはしない。

 何度目かに焦らされ、ライラはやり返してやろうと、セレスタンのからだに触れた。首筋や喉に顔をうずめ、頬ずりとくちづけを繰りかえす。腹まで下りて、へそに辿り着こうというとき、待ったがかかった。

「ララ、そこまでにして。私がうまく触れない」
「いやよ。だって、ティノ、焦らすんだもの」
「ダメなものはダメ。触るなら胸からうえにして」
「……えいっ」

 触れられたくないのはコレだろうと、ライラは陰茎を手に取る。セレスタンは泡を食ったようすで、素早くライラの手を引き剥がした。そのわずかなあいだにも、彼自身は硬く力を取り戻して勢いづいていた。

「ララ。こういう悪戯は、してはいけません。私はあなたを楽しませたい。こんなことをされたら、余裕を失って、自分の快楽ばかりを追ってしまう」
「ティノもちゃんと気持ちいいの?」
「もちろん。──あなたが気持ちいいときは、特に最高です」
「ふうん。じゃあ、さっきのを、顔を見ながらして欲しいって言ったら、してくれる?」
「さっきの?」

 思い当たらなかったのか、セレスタンは悩むようにする。ライラは、これ、と、内腿に自身の腕を挟んでみせた。

「それ? 嫌だったんじゃ?」
「気持ちよかったけど、ティノの顔が見えなくて、怖くなったの」

 説明に納得したのか、セレスタンはライラの願いをすぐに叶えた。両膝を抱えて腰を突きだされると、まるで交わっているような感触だった。

「ふ、あ、あっ、はっ、んん、んっ……」

 先程同様、肺が圧迫されて、喘ぎ声が止まらない。セレスタンの顔が見える。眉根をやや寄せた苦しげな顔が、快楽をこらえてのことだと、なんとなくわかってきた。

「足、開きたい」

 膝を解放されると、セレスタンの動きが鈍った。何を考えたかわかって、ライラは腕を伸ばす。上半身を倒してくれた彼を抱きしめ、腰を持ちあげる。

「あっ……」

 セレスタンが上擦った声を上げる。腰を引こうとするのを、足を絡めて押し留める。からだの奥までセレスタンを招き入れただけで、ライラは満足感で軽く達した。

 そこからは、無我夢中だった。


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