わたしのねがう形

Dizzy

文字の大きさ
2 / 161
わたしのつなぎたい手

【第1話:でこぼこコンビ誕生】

しおりを挟む
 仁王立ち。
 すこし上向いた顔で見下ろすユア。得意げな顔。明るい茶髪、肩までのショートカット。

「身長的にもあたしがおねーさん。はいこれ決定!」

 一方、見上げるその子、幼さの残る柔らかそうな頬の少女。背中まで流れるストレート銀髪ロング。
 すん、とした無表情のアミュア。

「せいしん年齢的にわたしのほうが、”おねーさん”ですが?」

「ぐふっクール幼女破壊力たけえ…だがまけぬ。あたしの胸のあたりまでしかないじゃん、そりゃ妹でしょ!」

 ユアはおおげさにうずくまって見せる。
 今度は見下ろすアミュア、相変わらず表情は変わらない。

「しんちょーは成長のしひょーとしては不確かです、だいたい、実年齢とそぐわないのは…お互いさまでは?」

 泉の祠を後にした二人は、やわらかな緑のトンネルを抜けていく。

「さあ、街まではまだまだあるよ。足元には気をつけてね」

 ユアは少し前を歩きながら振り返る。アミュアはその後ろをぴたりとついてくる。

 足元の根っこに気づかず、アミュアの身体がふらりと前へ傾いた。

「わっ──」

 とっさに伸びたユアの手が、アミュアの手首をつかんでいた。

 ユアの手。
 思ったよりひんやりとして、けれどしっかりと力強い。

「……ありがとうございます」

「うん。今さらだけどアミュって、けっこう軽いんだね!」

「当たり前です。ユアさんが重いだけです」

「それ容赦なくないぃ!?」

 けれど手はしばらく、つながれたままだった。

ーーー

「それでね、昔ここを買い出しに行くのに通ったんだけど。なんだかなつかしいなって」

「買い出しは、たくさんのかいものですか?」

「そうそう、村のみんなにたのまれたお使いみたいな感じだね!」
 
 ユアの答えを聞き、ブツブツと口の中で唱えているアミュア。
「かいもの、かいだし、かいですと?」
謎の三段活用か呪文のような呟き。

 しばらく歩き続けて

 ふとアミュアが尋ねる。

「ユアさん、この道…どこにつくんですか?」

「ユアでいい!あたしもアミュって呼ぶ」
「いえアミュアです」
 かなり食い気味にアミュアが割り込む。
「あふぅ…」
 高速切り替えしでユアは心のダメージ。

「コホン。森の小道。泉から街につづく道だよ。昔からある道で、けっこう道がでこぼこしてるけど」

「でこぼこ……」

 アミュアは不思議そうに道の石を指さした。

「うん、だから私たち“でこぼこコンビ”ってわけ!」

 ユアはお日様のように、にっこり笑いながらそう言った。

「……ふふっ、名前だけはセンスあるねユア」

 アミュアもわずかに口元を緩める。ちょっとだけほほに色を指すのは、ユアの笑顔が思いがけず魅力的にみえたからだ。

 小鳥のさえずりと、葉のざわめきが耳に心地よい。

 二人の影が伸びて、小道にぽつりぽつりと光がこぼれていく。

 けれど、街へ向かうその道は、まだまだ長い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

これでもう、『恥ずかしくない』だろう?

月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。 俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。 婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。 顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。 学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。 婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。 ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。 「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」 婚約者の義弟の言葉に同意した。 「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」 それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか…… それを思い知らされたとき、絶望した。 【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、 【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。 一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。 設定はふわっと。

処理中です...