わたしのねがう形

Dizzy

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わたしがわたしになるまで

【第41話:親密と親密に見えるの違い】

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 スリックデンの馬車工房にて修理を依頼し、ユアとアミュアは改めてカーニャの家に挨拶に行く。
今日から二人でまた南に移動するのだ。
馬車は一月くらいで修理できるとのことで、その間にラウマ様のお使いに行くのだ。
「そのノアって女の子すぐ見つかるといいね」
ユアがアミュアを振り向き後ろ向きに歩きながら言った。
「ラウマさまがそうしてといいました。あの黒いのを捕まえてと」
すこしユアとアミュアで認識に差異があるよう見えるが、会話としては成り立つのであった。
さすがのバディであった。
「カーニャ達にはこれからゆっくりして欲しいんだ!」
前を向き直り宣言するユア。
カーニャはユアに連れられて実家に戻り、ミーナにだけ挨拶して王都に向かった。
王都までも汽車が出ており、2泊で付くそうだ。
おそらく夜霧が本気で走ったらもっと早くつくかもしれないが、今のペースなら同じくらいであろう。
カーニャが王都に向かったのは、魔法学校と寮の手配でミーナを家族皆で送り出すこととなったのだ。
あわせてカーニャは王都に定宿を移し、あちらで活動しながらミーナを見守るとのこと。
両親には謝罪の手紙を出すと、ユアには告げていたので、仲直りしたらいいなと思っているのだ。
面識もできたし、ミーナを激励したいと言うことで、出発を何日か遅らせたユア達であった。
今日挨拶ができたら、ユア達も出発するのだ。
以前戦った城塞近くにある館で、人型影獣がでたとの情報をカーニャからもらっていた。



「お世話になりました!」
「お世話様でした」
ユアとアミュアがヴァルディア家の玄関先で挨拶する。
「こちらこそ、また遊びに来るといいよ。我が家の恩人二人なのだから、いつでも歓迎する」
とはカーニャの父レオニス・ヴァルディアだ。
「どうかこれからもミーナとカーニャをよろしくねユアさん、アミュアさん」
これはカーニャの母エリセラであった。
ミーナもすっと横にならびご挨拶。
きれいなカーテシーを披露した。
「ユアさんアミュア。本当にありがとう、休みには帰宅するし王都でも会えるからね!」
こうしてユア達は笑顔で送り出してくれる知人を、スリックデンで得たのだった。



 さすがに夜霧にも慣れてきたので、いちいち騒がず走れるようになった二人である。
今日はアウシェラ湖まで行ける予定であった。
馬車の3~4倍の速度で進めるのだ。
今日の騎手はアミュアで、ユアは横すわりしてアミュアの首に掴まっていた。
先日カーニャを乗せたとき、楽しかったので自分もやってみたかったのだ。
「ほんとだ、お姫様になった気分味わえるこれ」
「ふむふむ。明日は交代ですよユア」
アミュアも気になるようで、やりたがった。
そうしてしばらく進んでからふとユアは尋ねる。
「アミュア、ミーナとなんかあったの?なんだか二人の感じ変わったね」
スリックデンを出るときいつものように抱きつかず、握手をして別れたアミュアとミーナであった。
少し長い時間握手して、じっと見つめ合っていた二人は、ユアにはなにか新しい関係に見えたのだった。
「たいしたことではないけど。ミーナが大人になったんじゃないかな。13才になったらしいし」
ユアにはあわせてアミュアも大人になったなと感じたのだが、それはにやにやするだけで指摘しなかった。
「ああ、そういえば来月にはあたしも17才になるよ。アミュアって誕生日いつなんだろう?あたしとあった日かな?」
ふむふむと考えてみたが、アミュアには解らなかった。
「どうでしょう?解らないのでその日にします」
「じゃああたしと同じ日にしよう!一緒に17才になろうね!」
「いえアミュアは1才になります」
「それだめでしょ!?マルタスさんにまた怒られるやつだから!」
「そうでした‥‥では17才を詐称しましょう」
「詐称ってww?!」
いつものように話題に困ることなく、アウシェラ湖まで夕方にはつくのだった。



丘の上の展望台に並ぶ二人。
今日は先日よりも一層の輝きをみせる湖に、声もなく立ちすくんでいた。
美しすぎる自然は、時に人から言葉を奪い去るのだった。
先日はミーナと繋いでいた手を今日はユアとつなぎ、同じく沈んでいくにつれ変化する湖面に目を奪われるのであった。
「そういえば、こないだの朝に何をお祈りしたの?アミュア」
ちょっとだけ考えて、アミュアは答えるのであった。
「ないしょです」
「ガーン」
クスクスと含み笑いが漏れ、二人は丘をあとにするのであった。
「最近のアミュアは、なんだかかわいいよ!」
とちょっとだけ頬をそめユアがいった。
「ユアも見ようによってはかわいいですよ。足とか」
「なにそれ?!ほんとにほめてる?!」
そうして騒がしく宿に向かうのであった。



 自分の寝室にノアを寝かしつけ、出てくるセルミア。
「待たせたわね。感じはどうかしら?スヴァイレク」
間違いなくオーラが増したスヴァイレクは、微動だにせずそこにいた。
「思考は特に変わりませんが、力は3倍増し程度でしょうか?試してみないとはっきりとは」
にやりとセルミアは笑みつつ更に質問する。
「どうかしら?もう一度いける?それとも限界?」
顔を上げたスヴァイレクは素直に答えた。
「おそらく限界かと。いまでも溢れ出しそうな力の制御に戸惑っております。しばらく慣らしてみたらまた違うかもしれませんが、現状はこれ以上は無駄かと思います」
ソファにすわり長考にはいるセルミア。
しばらくの後スヴァイレクを下がらせた。
「ありがとう。しばらくは慣らしてみて。なにか解ったら報告を。もういいわよ」
「はっ」
すっとスヴァイレクが闇に消える。
一人残されたセルミアはノアの眠る寝室にちらりと一瞥し呟く。
「ではレヴァントゥスで試そうかしら‥」
セルミアの呟きからはレヴァントゥスやスヴァイレクに対してすら親密さはなかった。
その表情の抜け落ちた顔からは、セルミアの真意は伺い知れないのであった。


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