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わたしがわたしになるまで
【第49話:ラウマとアミュア】
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一晩ラウマの像の後ろで眠ったアミュアが目覚めると、そこにはラウマがいたのだった。
像の後ろで眠ったので、目が冷めたらそこに像があるのが当たり前たが、少し状況が違うようだ。
ラウマ像は変わらずあるのだが、その手を掴むラウマが別にいるのだった。
ぱちっと閉じていた目を開くラウマ。
「ああ、起きたのですねアミュア。大分情報と魔力を像から引き出すことができました」
アミュアはまだ少し寝ぼけていたので、一回で理解できなかった。
「これで体を出していられますし、アミュアのそばなら移動も可能です」
はっとアミュアが状況を理解した。
「おはようございますラウマさま。そのままで居られるのですね?」
「はい、特別な力はありませんが昨日と違いこのままで大丈夫です」
少しだけ考えて、アミュアが答える。
「服はだせないのですか?」
「??」
ラウマは服を着ていなかった。
先日ユアに教えられた事を思い出すアミュア。
このままではまずい。
強力な魔法が発動し、みさかいなく男性を狂わせるだろう。
アミュアは恐ろしくなりなんとかならないか考えた。
「なるほど、アミュアやユアのような洋服が必要なのですね。ちょっと能力で作るのは無理なので、貸してもらえませんか?アミュア」
じっとラウマの顔を見ながら考え込むアミュア。
「わたしもこの服しか今はないので、半分こしましょう」
今日のアミュアは夏服なので、薄手の白い腰までのフード付きマント。
水色のノースリーブ、膝丈の白いプリーツミニスカート。
後は下着と靴だけであった。
(これは半分こできないのでは?)
せめてマントが旅行用の長いものならよかった。
夏なので衣服が少ないのも不利な点であった。
「やれるだけやってみましょう。きっとこのままよりは良いはず」
そういってぱぱっと衣服を脱ぎ始めるアミュア。
試行錯誤の末に、比較的納得の行くコーディネートが二組完成したのだった。
ラウマの方が破壊力が有るだろうと、アミュアの想定から露出少なめである。
上半身は水色ノースリーブで、下半身はミニスカート。
下着類は無く、靴下だけ履かせた。
そして残りがアミュアの装備となるのであった。
フードマントを裂いて、セパレートのきわどい水着くらいなものを作った。
「ふぅ、これで大分危険度は下がりました。くれぐれも激しく動かないでくださいラウマさま」
「ええ、人の世界にそんな危険な魔法があるとは知りませんでした。アミュアのおかげで危地を脱しました。ありがとう」
真剣な顔でうなずきあう二人であった。
ラウマにもユアから教わった女の子魔法について、しっかりと説明したアミュアであった。
若干アレンジが入り、より危険なものとして伝わったようだが。
着替えさせながら、ラウマに触れたアミュアはそのとても上質な肌触りにドキっとしたのだった。
(まちがいなく存在している。ラウマさま。わたしもこうして作られたの?)
喉が乾いたならすぐそばに泉があるので、そこで飲めば良く。
食事はアミュアの好きなベリーの非常食を2本持っていたのでそれを分け合った。
「お口にあいましたか?ラウマさま」
「とてもおいしいです。ありがとうアミュア」
にこっと、とても自然な笑顔でこたえるラウマ。
最初の頃あったぎこちなさは影を潜め、普通の人間にしか見えないのであった。
「ラウマさま、少ししつもんがあるのですが。よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです。ああ、そうです、どうかわたくしにもユアのように気安くお話してくれませんか?」
じっとラウマを見るアミュア。
「女神様にそんな不敬ははたらけないと、わたしは思うのですが?」
「今のこのわたしは女神ではなくただの人間と同じです。なんの力もありません。敬意など不要ですよ」
「ししょうから目上の人には敬意をはらえと教わりました」
ちくっとだけ寂しさがさしこみ、ふんわりとあたたかさが滲む。
ソリスを思うアミュアの、今の心はそのように動くのだった。
そんなアミュアの少しだけ影をにじませる笑顔を、ラウマはとても敏感に察してしまう。
なにしろ人の悲しみや苦しみを救う女神の分体なのだ。
それは実はアミュアやノアも同じはずなのだが、ラウマはより一層その特色が濃い。
「とてもご立派なお師匠さまでしたのですね。よかったらお話をしてくれませんか?」
そういってラウマは階段に座りながら向き合っていたアミュアの手を取るのだった。
ラウマの手は暖かく柔らかで、それだけでアミュアは何かが救われた気すらしたのだった。
「ありがとうございます、亡きししょうもお喜びでしょう。でも今はおききしたいことがありました」
アミュアの目をみて大丈夫と思ったか、手を話し膝の上に重ね真剣な表情に戻すラウマ。
「どうぞ、なんでもお尋ねください」
「朝お話したときに、お力と情報を取り出したとおっしゃいました。そこの神像はやはり特別なものなのですか?」
ああ、といった表情にふわりとかわりラウマが答える。
「今現在どれくらいの像が残っているのかわかりませんが。かつては世界中に同じ神像がありました」
そういってラウマは神像と自分本体の関係を、簡単にアミュアに説明したのだった。
「かつて2度あった消失で、像とのつながりは絶えておりました。先程その像から本来もらうはずの力を取り出したわけです」
ぱあっと笑顔になり続ける。
「ユアの思いが沢山のこっていて、とても嬉しい気持ちにもなりました」
そこですっと寂しそうにし、告げる。
「はやくユアにも会いたいですね。どうしたら良いのでしょう?わたくしはこの世界を本当はなにも知らないようです。わたくしを導いてくださいアミュア」
ラウマはこうして人となってから、とても沢山の感情を見せてくる。
もしかしたら、アミュアから存在を分け与えられたことで、似てしまったのかも知れなかった。
「きっとユアはわたしを探し出してくれます。時々わたしの魔力を発しながら、元いた場所を目指しましょう。必ず探してくれますよユアは」
自分自身にも言い聞かせるよう、ユアの名を繰り返すアミュアであった。
北部で雪月山脈を背後にひかえるこの場所は、森の木陰も手伝い夏の気配を遠ざけてくれた。
少し薄着の二人にも柔らかな日差しを届けてくれるのであった。
像の後ろで眠ったので、目が冷めたらそこに像があるのが当たり前たが、少し状況が違うようだ。
ラウマ像は変わらずあるのだが、その手を掴むラウマが別にいるのだった。
ぱちっと閉じていた目を開くラウマ。
「ああ、起きたのですねアミュア。大分情報と魔力を像から引き出すことができました」
アミュアはまだ少し寝ぼけていたので、一回で理解できなかった。
「これで体を出していられますし、アミュアのそばなら移動も可能です」
はっとアミュアが状況を理解した。
「おはようございますラウマさま。そのままで居られるのですね?」
「はい、特別な力はありませんが昨日と違いこのままで大丈夫です」
少しだけ考えて、アミュアが答える。
「服はだせないのですか?」
「??」
ラウマは服を着ていなかった。
先日ユアに教えられた事を思い出すアミュア。
このままではまずい。
強力な魔法が発動し、みさかいなく男性を狂わせるだろう。
アミュアは恐ろしくなりなんとかならないか考えた。
「なるほど、アミュアやユアのような洋服が必要なのですね。ちょっと能力で作るのは無理なので、貸してもらえませんか?アミュア」
じっとラウマの顔を見ながら考え込むアミュア。
「わたしもこの服しか今はないので、半分こしましょう」
今日のアミュアは夏服なので、薄手の白い腰までのフード付きマント。
水色のノースリーブ、膝丈の白いプリーツミニスカート。
後は下着と靴だけであった。
(これは半分こできないのでは?)
せめてマントが旅行用の長いものならよかった。
夏なので衣服が少ないのも不利な点であった。
「やれるだけやってみましょう。きっとこのままよりは良いはず」
そういってぱぱっと衣服を脱ぎ始めるアミュア。
試行錯誤の末に、比較的納得の行くコーディネートが二組完成したのだった。
ラウマの方が破壊力が有るだろうと、アミュアの想定から露出少なめである。
上半身は水色ノースリーブで、下半身はミニスカート。
下着類は無く、靴下だけ履かせた。
そして残りがアミュアの装備となるのであった。
フードマントを裂いて、セパレートのきわどい水着くらいなものを作った。
「ふぅ、これで大分危険度は下がりました。くれぐれも激しく動かないでくださいラウマさま」
「ええ、人の世界にそんな危険な魔法があるとは知りませんでした。アミュアのおかげで危地を脱しました。ありがとう」
真剣な顔でうなずきあう二人であった。
ラウマにもユアから教わった女の子魔法について、しっかりと説明したアミュアであった。
若干アレンジが入り、より危険なものとして伝わったようだが。
着替えさせながら、ラウマに触れたアミュアはそのとても上質な肌触りにドキっとしたのだった。
(まちがいなく存在している。ラウマさま。わたしもこうして作られたの?)
喉が乾いたならすぐそばに泉があるので、そこで飲めば良く。
食事はアミュアの好きなベリーの非常食を2本持っていたのでそれを分け合った。
「お口にあいましたか?ラウマさま」
「とてもおいしいです。ありがとうアミュア」
にこっと、とても自然な笑顔でこたえるラウマ。
最初の頃あったぎこちなさは影を潜め、普通の人間にしか見えないのであった。
「ラウマさま、少ししつもんがあるのですが。よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです。ああ、そうです、どうかわたくしにもユアのように気安くお話してくれませんか?」
じっとラウマを見るアミュア。
「女神様にそんな不敬ははたらけないと、わたしは思うのですが?」
「今のこのわたしは女神ではなくただの人間と同じです。なんの力もありません。敬意など不要ですよ」
「ししょうから目上の人には敬意をはらえと教わりました」
ちくっとだけ寂しさがさしこみ、ふんわりとあたたかさが滲む。
ソリスを思うアミュアの、今の心はそのように動くのだった。
そんなアミュアの少しだけ影をにじませる笑顔を、ラウマはとても敏感に察してしまう。
なにしろ人の悲しみや苦しみを救う女神の分体なのだ。
それは実はアミュアやノアも同じはずなのだが、ラウマはより一層その特色が濃い。
「とてもご立派なお師匠さまでしたのですね。よかったらお話をしてくれませんか?」
そういってラウマは階段に座りながら向き合っていたアミュアの手を取るのだった。
ラウマの手は暖かく柔らかで、それだけでアミュアは何かが救われた気すらしたのだった。
「ありがとうございます、亡きししょうもお喜びでしょう。でも今はおききしたいことがありました」
アミュアの目をみて大丈夫と思ったか、手を話し膝の上に重ね真剣な表情に戻すラウマ。
「どうぞ、なんでもお尋ねください」
「朝お話したときに、お力と情報を取り出したとおっしゃいました。そこの神像はやはり特別なものなのですか?」
ああ、といった表情にふわりとかわりラウマが答える。
「今現在どれくらいの像が残っているのかわかりませんが。かつては世界中に同じ神像がありました」
そういってラウマは神像と自分本体の関係を、簡単にアミュアに説明したのだった。
「かつて2度あった消失で、像とのつながりは絶えておりました。先程その像から本来もらうはずの力を取り出したわけです」
ぱあっと笑顔になり続ける。
「ユアの思いが沢山のこっていて、とても嬉しい気持ちにもなりました」
そこですっと寂しそうにし、告げる。
「はやくユアにも会いたいですね。どうしたら良いのでしょう?わたくしはこの世界を本当はなにも知らないようです。わたくしを導いてくださいアミュア」
ラウマはこうして人となってから、とても沢山の感情を見せてくる。
もしかしたら、アミュアから存在を分け与えられたことで、似てしまったのかも知れなかった。
「きっとユアはわたしを探し出してくれます。時々わたしの魔力を発しながら、元いた場所を目指しましょう。必ず探してくれますよユアは」
自分自身にも言い聞かせるよう、ユアの名を繰り返すアミュアであった。
北部で雪月山脈を背後にひかえるこの場所は、森の木陰も手伝い夏の気配を遠ざけてくれた。
少し薄着の二人にも柔らかな日差しを届けてくれるのであった。
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