わたしのねがう形

Dizzy

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わたしがわたしになるまで

【閑話:いまとどいた気持ち】

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疎遠になっていた長女から手紙が届いた。
両親と長女は少し不思議な関係になっていたのだ。
あの6年前の決別から。

居間のソファに座り、手紙を読み終えた母。
その双眸からは少し前から、とどまること無く涙が落ちる。
そっと隣に座っていた父が、肩を抱き寄せ胸でささえる。
父はすでに自分も一読した手紙を、そっと母の手から取りテーブルに置いた。
父の服を両の拳で握りしめる母。
そこに頭を押し付けすすり泣きがもれる。
その手が作るひきつったしわに万感の思いが込められたようで、父の胸もまた締め付けられるのであった。

手紙には丁寧な謝罪があった。
まず、かつて許可なく二人の過去を暴くようなことをしたこと。
二人の想いに気づけず勝手な振る舞いをして、家に帰らなかったこと。
病気の妹のそばに居てあげなかったこと。
それら全ての自分の罪を知りながら、今日まで省みなかったこと。
そういったことが丁寧に言葉を選びながら、礼を尽くし距離を置きすぎることなく綴られていた。

遠い昔に傷ついた心に、癒やして余りある愛の言葉が還ってきたのだ。
ずっと我慢していた父の目にすら涙が浮かぶ。
それでも母を支えなければと、堪えるのであった。

妹の進学を全力で応援し、自分が王都で見守ると。
機会があれば必ず帰省すると。
そして、叶うなら自分を許して欲しいと。
また4人で家族になれたなら嬉しいと。
そういったことも恥ずかしそうに書かれていたのだ。

そっと手紙を折り封に戻した母は、とても大切そうに胸に抱えるのであった。
その綺麗な白い封筒には赤い封がされている。

ーーーあの子は小さいときから赤が好きだったわね。
そんな昔のことも胸をよぎり、母の心はあたたかくなるのだった。
あのノートを捨てなくてよかったとも。


ただただ文末に記されていた、短くまとめた娘の思いに癒やされるのであった。








ーーーー

お父様、お母様。
勝手とは思いますが、もう一度あなた達の娘にしていただけないでしょうか。

改めて心からの謝罪を添えて。
頂いていた愛をお返ししたいと思います。

                            愚かな娘より
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