139 / 161
わたしがわたしになるまで
【第53話:ヴァルディア家にて】
しおりを挟む
夜霧はちょっと張り切っていた。
小柄とはいえ女の子を3人も乗せているからだ。
かつてアミュアが小さかった頃は気を使い早く走れなかったし、とても軽かったので頑張らずとも進めたのだ。
それなりにずっしり重く、また少々本気をだしてもユアが落ちないよう見ててくれると学んでいた。
まさに風のように駆け抜けた夜霧であった。
「ふわわわわわ」「はわわわわわ」
前席に乗せて、落ちないように縛ったラウマと、腕の間にいるアミュアが口をあけ風圧でわわわとなっていた。
いまだかつてない速度であった。
「あははっ!」
ユアもとても楽しそうで、夜霧も走りがいがあった。
祠で再会したユアとラウマは手をつないで、ぴょんぴょんするくらい息ぴったりで喜んだ。
ラウマが下着をつけていないことに気づいたユアが、夜霧を呼び出してサイドバックから予備の服を一式出してくれたのだった。
そうして今はアミュアは元の夏服で、ラウマはユアっぽいひまわりセットの上下とちゃんとユアから借りて下着もつけた。
アミュアとユア、それにラウマも図ったように各部のサイズが同じで、着回しがスムーズにできる。
夜霧走行風圧対策として、髪の長い二人は三つ編みにして先っぽは暴れないよう服にしまってある。
夜霧最速(ユア体感比)で移動する3人であった。
ラウマ像の祠をでた後は、まずルメリナでアミュアが見つかったと報告。
アミュア捜索の依頼を取り下げてもらい、手数料などの経費はユアが払うと申し出た。
そこに現れたマルタスが、「見つかった祝いだ」といって経費を払ってくれるのだった。
ここで王都のカーニャ宛に、移動の休憩時にアミュアが書き上げてあった短い詫びの手紙を出す。
ルメリアに寄り道しながらも夕方にはスリックデンについたのであった。
夜霧はスリックデンで騎獣登録してあり、その首輪には登録番号の入ったタグが揺れている。
スリックデンには馬や牛以外のモンスターも多く働いていて、同様のタグをつける個体も少なくない。
なので、荷物が多いときはそのまま街中を連れて歩くこともある。
今回は足腰立たなくなったラウマ様が一番の大荷物であった。
到着したのが午後遅かったので、ひとまずカーニャの実家ヴァルディア家へ直行するのだった。
ばぁーんと正面の両開きの扉が両方開き、ミーナが飛び出してアミュアに突撃してくる。
こうなるなと覚悟していたアミュアは正面で受け止める準備をしながら待っていたのだ。
毎度門番の人が知らせに行く度にこれやってる気がする、とアミュアは思ってしまうのだった。
「アミュア!」
「ごめんねミーナいっぱい心配かけました。大事な時期だったのに」
「平気!ユアさんが一度来て教えてくれたから。きっと帰ると信じてた!」
ミーナはアミュアが小さかった頃からの親友だ。
アミュアだってこうして会うのは楽しみなのだが、ミーナに申し訳ない気持ちのほうが大きいのだ。
やっと回復したラウマ様は、ヴァルディア家入口でちゃんと降りて自分で歩いていた。
なので残りのユアの荷物だけおろし、門の所で夜霧は帰していた。
夜霧用サイドバックはユアが改良を重ね、二つ折りにして背負える用になっていた。
もちろんひまわりマーク付きになっている。
そうして玄関まで迎えに出てくれたカーニャの両親ともご挨拶するのであった。
「ご心配おかけしました」
「お世話になりました。お陰で連れ帰れました!」
ペコリとお辞儀するアミュアと、エリセラの手を両手でにぎるユアであった。
両親ともににこやかに二人を迎えてくれた。
そしてちゃんと礼儀に基づけるアミュアがラウマを紹介するのだった。
移動中に相談して、ラウマはアミュアの親戚ということになった。
ハンターになる修行中という事にして、連れて歩く不自然にも説明をつけたのだった。
「アミュアちゃんに本当に似ているわね」
「ほんとう!とても綺麗です」
にこにこのエリセラとミーナに両側から腕組で連行されるラウマ。
ラウマと言う名前も女神様にあやかってと、女子にはそんなに珍しい名前ではないので受け入れられた。
本人だとは気づくまい。
カーニャの父レオニスにもしっかりお礼を言えたユアも成長が見えた。
快く迎えてくれたヴァルディア家に今夜は泊めてもらうことになった。
実は明日の朝ミーナが王都へ旅立つのだ、今夜は送別の宴を予定していたので、むしろ歓迎されたのであった。
食事もとても豪華で、最近野宿ばかりだったユアはたくさん食べてしまうのであった。
ミーナは昔に戻ったようにアミュアにベッタリで、アミュア成分をたっぷり補給する作戦のようだ。
お風呂だろうと食事だろうとそばを離れないのだった。
両親もほほえましくそのミーナを見て、アミュアへの信頼を厚くしたのだった。
一方ラウマはこういったやり取りが初めてで、とまどうことばかりであった。
お風呂はユアが一緒に入り、いろいろ指導したのであった。
女の子魔法の説明は、アミュアに教えを受けたと答えられた。
「ユアって呼んでくださいね!あたしも周りの人が不審に思わないようにラウマってよんでもいいですか?」
にっこり笑顔になってラウマは答える。
「もちろんです!ぜひ丁寧語もいらないのでアミュアと同じく扱ってください」
とてもうれしそうなラウマ様であった。
ユアはカーニャの両親やマルタスにすら敬意をあまり示さない。
「うん。仲良くしようね!ラウマ」
ラウマにだけそれをするのは不自然だったのだ。
「とてもうれしく思います、わたくしもユアって呼びますね」
にこにこでユアの背中を洗うラウマ様。
女神に背中を洗わせるユアに真なる信心はあるのであろうか。
もちろんラウマ様の背中も交代ですでに洗ったのだが、ユアをして誤爆技を発動せしめられない神威は残っていたのだった。
ちょっとだけしたい気持ちはあった。
そうして仲良くなったラウマ様はミーナを手本にしたのか、ユアにべったりであった。
それを見てちょっと複雑な気分を味わうアミュアであった。
小柄とはいえ女の子を3人も乗せているからだ。
かつてアミュアが小さかった頃は気を使い早く走れなかったし、とても軽かったので頑張らずとも進めたのだ。
それなりにずっしり重く、また少々本気をだしてもユアが落ちないよう見ててくれると学んでいた。
まさに風のように駆け抜けた夜霧であった。
「ふわわわわわ」「はわわわわわ」
前席に乗せて、落ちないように縛ったラウマと、腕の間にいるアミュアが口をあけ風圧でわわわとなっていた。
いまだかつてない速度であった。
「あははっ!」
ユアもとても楽しそうで、夜霧も走りがいがあった。
祠で再会したユアとラウマは手をつないで、ぴょんぴょんするくらい息ぴったりで喜んだ。
ラウマが下着をつけていないことに気づいたユアが、夜霧を呼び出してサイドバックから予備の服を一式出してくれたのだった。
そうして今はアミュアは元の夏服で、ラウマはユアっぽいひまわりセットの上下とちゃんとユアから借りて下着もつけた。
アミュアとユア、それにラウマも図ったように各部のサイズが同じで、着回しがスムーズにできる。
夜霧走行風圧対策として、髪の長い二人は三つ編みにして先っぽは暴れないよう服にしまってある。
夜霧最速(ユア体感比)で移動する3人であった。
ラウマ像の祠をでた後は、まずルメリナでアミュアが見つかったと報告。
アミュア捜索の依頼を取り下げてもらい、手数料などの経費はユアが払うと申し出た。
そこに現れたマルタスが、「見つかった祝いだ」といって経費を払ってくれるのだった。
ここで王都のカーニャ宛に、移動の休憩時にアミュアが書き上げてあった短い詫びの手紙を出す。
ルメリアに寄り道しながらも夕方にはスリックデンについたのであった。
夜霧はスリックデンで騎獣登録してあり、その首輪には登録番号の入ったタグが揺れている。
スリックデンには馬や牛以外のモンスターも多く働いていて、同様のタグをつける個体も少なくない。
なので、荷物が多いときはそのまま街中を連れて歩くこともある。
今回は足腰立たなくなったラウマ様が一番の大荷物であった。
到着したのが午後遅かったので、ひとまずカーニャの実家ヴァルディア家へ直行するのだった。
ばぁーんと正面の両開きの扉が両方開き、ミーナが飛び出してアミュアに突撃してくる。
こうなるなと覚悟していたアミュアは正面で受け止める準備をしながら待っていたのだ。
毎度門番の人が知らせに行く度にこれやってる気がする、とアミュアは思ってしまうのだった。
「アミュア!」
「ごめんねミーナいっぱい心配かけました。大事な時期だったのに」
「平気!ユアさんが一度来て教えてくれたから。きっと帰ると信じてた!」
ミーナはアミュアが小さかった頃からの親友だ。
アミュアだってこうして会うのは楽しみなのだが、ミーナに申し訳ない気持ちのほうが大きいのだ。
やっと回復したラウマ様は、ヴァルディア家入口でちゃんと降りて自分で歩いていた。
なので残りのユアの荷物だけおろし、門の所で夜霧は帰していた。
夜霧用サイドバックはユアが改良を重ね、二つ折りにして背負える用になっていた。
もちろんひまわりマーク付きになっている。
そうして玄関まで迎えに出てくれたカーニャの両親ともご挨拶するのであった。
「ご心配おかけしました」
「お世話になりました。お陰で連れ帰れました!」
ペコリとお辞儀するアミュアと、エリセラの手を両手でにぎるユアであった。
両親ともににこやかに二人を迎えてくれた。
そしてちゃんと礼儀に基づけるアミュアがラウマを紹介するのだった。
移動中に相談して、ラウマはアミュアの親戚ということになった。
ハンターになる修行中という事にして、連れて歩く不自然にも説明をつけたのだった。
「アミュアちゃんに本当に似ているわね」
「ほんとう!とても綺麗です」
にこにこのエリセラとミーナに両側から腕組で連行されるラウマ。
ラウマと言う名前も女神様にあやかってと、女子にはそんなに珍しい名前ではないので受け入れられた。
本人だとは気づくまい。
カーニャの父レオニスにもしっかりお礼を言えたユアも成長が見えた。
快く迎えてくれたヴァルディア家に今夜は泊めてもらうことになった。
実は明日の朝ミーナが王都へ旅立つのだ、今夜は送別の宴を予定していたので、むしろ歓迎されたのであった。
食事もとても豪華で、最近野宿ばかりだったユアはたくさん食べてしまうのであった。
ミーナは昔に戻ったようにアミュアにベッタリで、アミュア成分をたっぷり補給する作戦のようだ。
お風呂だろうと食事だろうとそばを離れないのだった。
両親もほほえましくそのミーナを見て、アミュアへの信頼を厚くしたのだった。
一方ラウマはこういったやり取りが初めてで、とまどうことばかりであった。
お風呂はユアが一緒に入り、いろいろ指導したのであった。
女の子魔法の説明は、アミュアに教えを受けたと答えられた。
「ユアって呼んでくださいね!あたしも周りの人が不審に思わないようにラウマってよんでもいいですか?」
にっこり笑顔になってラウマは答える。
「もちろんです!ぜひ丁寧語もいらないのでアミュアと同じく扱ってください」
とてもうれしそうなラウマ様であった。
ユアはカーニャの両親やマルタスにすら敬意をあまり示さない。
「うん。仲良くしようね!ラウマ」
ラウマにだけそれをするのは不自然だったのだ。
「とてもうれしく思います、わたくしもユアって呼びますね」
にこにこでユアの背中を洗うラウマ様。
女神に背中を洗わせるユアに真なる信心はあるのであろうか。
もちろんラウマ様の背中も交代ですでに洗ったのだが、ユアをして誤爆技を発動せしめられない神威は残っていたのだった。
ちょっとだけしたい気持ちはあった。
そうして仲良くなったラウマ様はミーナを手本にしたのか、ユアにべったりであった。
それを見てちょっと複雑な気分を味わうアミュアであった。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
これでもう、『恥ずかしくない』だろう?
月白ヤトヒコ
恋愛
俺には、婚約者がいた。
俺の家は傍系ではあるが、王族の流れを汲むもの。相手は、現王室の決めた家の娘だそうだ。一人娘だというのに、俺の家に嫁入りするという。
婚約者は一人娘なのに後継に選ばれない不出来な娘なのだと解釈した。そして、そんな不出来な娘を俺の婚約者にした王室に腹が立った。
顔を見る度に、なぜこんな女が俺の婚約者なんだ……と思いつつ、一応婚約者なのだからとそれなりの対応をしてやっていた。
学園に入学して、俺はそこで彼女と出逢った。つい最近、貴族に引き取られたばかりの元平民の令嬢。
婚約者とは全然違う無邪気な笑顔。気安い態度、優しい言葉。そんな彼女に好意を抱いたのは、俺だけではなかったようで……今は友人だが、いずれ俺の側近になる予定の二人も彼女に好意を抱いているらしい。そして、婚約者の義弟も。
ある日、婚約者が彼女に絡んで来たので少し言い合いになった。
「こんな女が、義理とは言え姉だなんて僕は恥ずかしいですよっ! いい加減にしてくださいっ!!」
婚約者の義弟の言葉に同意した。
「全くだ。こんな女が婚約者だなんて、わたしも恥ずかしい。できるものなら、今すぐに婚約破棄してやりたい程に忌々しい」
それが、こんなことになるとは思わなかったんだ。俺達が、周囲からどう思われていたか……
それを思い知らされたとき、絶望した。
【だって、『恥ずかしい』のでしょう?】と、
【なにを言う。『恥ずかしい』のだろう?】の続編。元婚約者視点の話。
一応前の話を読んでなくても大丈夫……に、したつもりです。
設定はふわっと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる