きぃちゃんと明石さん

うりれお

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本編

告白

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「ずびっ、はぁ……っ、うぅー~っ、ぐすっ。」

「あぁ~、……ずるるっ、ヤバい、
  ……最高、ずびッ。」

「セカンドおじででよがっだぁ~っ、
  あがじざぁんっ。」

「う''んっ。このだめにお''れらはいぎでるんだねっ。」

感動的なMCからアンコールまで駆け抜けた結果、二人とも号泣。
ティッシュで鼻をかみながら、どうにか気持ちを落ち着ける。

このまま余韻に浸っていたいが、季衣には大きな課題が残っていた。
明石さんに告白をしないといけない。
このままの関係で、今日を終わらせたくない。
あぁ~、緊張するっ。
いつ?今?
どのタイミングで告白すんのが正解?

『ゆーうきをあげるよ~。

  ほら君が好きって~、
  言ってみるだけじゃん、好きって~、
  ooh~yeah~。

  言ーってみようよ、わーたしがずっと、
  エール送るからぁ~。
 ♪
 「「ユナチャーんっ!」」
 ♪
   「……すきだよ」』

ユナがそう囁くライブ映像が頭に流れて、自分もユナみたいに可愛く言えたら苦労しないのになぁ、なんて考えて。

「……きぃちゃん?」

急に静かになった季衣に違和感を感じた明石さんが声を掛けてくる。

「明石さん。」

「ん?」

心臓がバクバク言って、手も震える。

それでも、伝えたいから、応援して、ユナ。


「…………いーますぐ君が好きって~、
  言ーいたいんだよ、好きって~、
  うーぅう、いぇぃいぇ。

  つーたえるため、あーなたに今、
  会ーいにいく~からぁ~。」

「…………? ……きぃちゃーんっ!」

「明石さん、…………………………好きですっ。
  付き合ってくださいっ。」
 
 










意外と短い明石さんの睫毛が、パシパシと瞬くところまで鮮明に見えるほど、世界がスローモーションになった。
瞳が驚いたように開いて、ひゅっと息を飲むのがわかる。
例の如く明石さんはフリーズしてしまったけれど、もはやそれすらも可愛く見えて、あえて解かずに見守る事にした。



















十秒程経っただろうか、いや、もしかするとほんの数秒だったかもしれない。
とにかく季衣からすれば長いような短いような、そんな時間が過ぎて、明石さんが動いたと思ったら、壊れ物にふれるように優しくハグされた。

「……………………本当はあの朝言うべきだったんだろうね。
  ……きぃちゃん、好きでもない女の子を
  抱くような男じゃないよ、俺は。」

「……え。」


ちょっと待った、…………………………………………………
…………………………………………え?

「あの時、家に連れてきた時は
  手ぇ出すつもりじゃなかった。
  必死に我慢して、帰すつもりだった。
  ……まぁ、結局無理だったんだけど。
  でも、いいって言ってくれる女の子が
  そこに居たからじゃない。
  きぃちゃんだから抱いたんだよ。
  きぃちゃんじゃないと嫌なんだ。
  ……………………それだけは誤解しないで。」

………………………………………………きぃやから……?
きぃじゃないと嫌……?

「………………明石さん……は、
  きぃの事が好き……ってこと……?」

何か言わないとと思うのに、口が上手く動いてくれなくて、ようやく声が出たと思ったら、無意識に心の声が漏れ出てしまった。

そんなこと……ある?

明石さんのことが好きって、ついこないだ気づいたばっかりやのに、そんなご都合主義みたいな……。


「うん、俺はきぃちゃんのことが好きだよ。
  だから、俺からもお願いさせて。」

季衣を抱きしめていた腕を解いて、正面から目を合わせる。


「田所季衣さん、俺の恋人になってください。
  ……ごめんね、言うのが遅くなっちゃった。」

へにゃっと笑う明石さんの顔を見て、やっと閉じたと思った涙腺が決壊する。


「ぁ''いっ、恋人にしてぐだざいっ。」

恋人という単語から両思いだという実感が湧いてきて、ぽろぽろと涙が溢れて、あふれる涙を明石さんが指で拭ってくれる。

「……いづがら?」

「うーん……、分かんない。
  気付いたら、きぃちゃんに会える金曜日が
  楽しみになって、
  デートしてるカップルを見たら、
  俺もきぃちゃんとデートしたいなって思って。
  いつの間にか、好きになってた。
  ていうか多分、初めて会った時から、
  いいなって、思ってた。」

そんなこと考えてくれてたんですか。
全然気付かんかった。

いや、気付きかけても、明石さんが季衣の事を好きな訳がないと、かき消した。

「きぃちゃんは……いつから?」

「……ぐすっ、正直、好きって自覚したのは、
  ほんまについこないだで。
  ……でも今考えれば、ずびっ、美味しいもん
  食べたら明石さんに教えてあげようとか、
  ずびっ、明石さんセカンドの動画見たかなぁとか、
  すんっ、なんか、どんどん、頭ん中が
  明石さんでいっぱいになってた、ずびびッ、
  気がします。
  あはっ、私結構明石さんの事好きなんやなぁ、
  あははっ。」

ぎゅっ。
再び明石さんに抱き締められる。
今度は少し苦しいくらい。

嬉しい。
明石さん……、いい匂い。
どさくさに紛れて明石さんのうなじに鼻をうずめて、気付かれないように匂いを嗅ぐ。
やっぱり安心するぅ。


「きぃちゃん………、キスだけしていい?」

「ん。」

小さく頷くと優しく頬を包まれて、柔らかい感触が季衣の唇に当たる。
あの日の激しいものとは違う、優しく甘い味のするキスだった。



















 
 
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