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本編
仕事出来なくなるとか聞いてない
しおりを挟む「はぁぁー~。」
「……おい明石、何クソデカため息ついてんだよ。
あっ、お前アレだろ!
例のあの子に彼氏でも出来たんだろっ!
あぁあ~、だから早くしねぇと取られんぞ
って言ったのに。」
「そんなんじゃない。」
カタカタとキーボードを叩きながら否定の言葉を返すが、頭の中を支配しているのはもちろん季衣との事で。
取られた訳では無くむしろ逆で、しかし事態としては最悪であった。
嫌いになっていないという言葉も、自分の犯した過ちの重さが疑わせて、やっぱりもう一緒には飲まないなんて言われたらどうしようかと、思い悩むのに加え、
幼いとまで思っていた彼女の、愛らしい痴態と翌日の朝からの甘いやり取りが何度脳内再生されたか分からず、全く仕事が捗らない。
「なんだっけ、え~っと、きぃちゃん?だっけ。
……そんなにコーヒー飲むぐらいなら
俺に話してみろよ、な?」
デスクの隅に三本置かれた缶コーヒーを横目に、馴れ馴れしく肩を組んでくる男は、柊真の同期で、営業の浅沼新吾である。
絡みが鬱陶しいことこの上ないが、柊真が頭を悩ませている時、コーヒーを飲みまくる癖がある事を知る少ない人物だ。
「別に話すような事は何もないよ。
ていうか自分の仕事してこいよ浅沼。
休憩時間じゃないだろ。」
話せと言われても話せる訳が無い。
好きな子に告白もせず酔っ払って、手を出しましたなんて、何やってんだ、クソ野郎だなと言われるに決まっている。
自分でもそう思うのだから。
「はーん、ぐちゃぐちゃ考え事しながら
仕事してるお前と違って、
俺はもう今回の案件の準備は完璧なんだわ。」
本当に耳が痛い。
柊真をよく知るこの男は、容赦なく痛い所を的確に刺してくる。
私生活の事で悩んで、仕事が疎かになるとか社会人何年やってんだよ俺。
かといって、今のこの気持ちをどう消化していいのかも分からない。
ただの飲み友で無害と思っていた男にお持ち帰りされて、初めてなのに手加減なく抱かれたにも関わらず、翌朝彼女はケロッとした様子で。
嫌うどころか、迷うこと無く抱き着いてきて、一緒に飲めなくなったら困ると言う。
セカンドヲタク仲間が居なくなるのが嫌なのか、それとも脈アリと思っていいのか。
さっきだって、なんの連絡かと思ったら、飲みに同期の男が付いてくるとか言って、
手出した事がバレていて、シバかれんのかなとか想像して。
かと思ったら、土曜日に俺の家に来るかと誘ったら、声を弾ませて楽しみだと言う。
季衣の頭の中では、一夜限りの事故として無かったことにされているのだろうか。
それはそれでツラいな……。
「つぐが心配してたぞ。
明石先輩がため息ばっかついてるって。」
「マジか……内山にまで心配させるとか……。」
頼りにしている後輩の名前を出されて、どれだけ周りに迷惑を掛けていたのかを実感する。
もう彼女からの連絡を心待ちにスマホをチラチラ見るヤツらの事を叱れる立場では無くなってしまったじゃないか。
「……浅沼、どうにかしようと努力はするけど、
来週にならないと、多分復活出来ないから、
……その間、ちょっと色々頼んでいい?」
一人で焦っても、空回りして失敗するのは、経験から分かってる。
入社当時から苦楽を共にし、時にライバルだったこの男ほど、信頼出来るやつはいないと思っているから。
「はぁ……、明石がこんなんなのも珍しいし、
別にかまわねぇよ。
その代わり、高めの焼肉奢りな。」
かける迷惑に比べたら焼肉なんて安いものだ。
いつも適当そうで、お世辞にも礼儀正しいとは言えなくて、なのに面倒見は良くて、こんな時でも嫌な顔ひとつもしやしない。
「ごめん。助かる。」
「謝るならつぐに言え。
…………あんまり困らせんなよ。」
浅沼のその言葉に、後輩を可愛がる以上の感情を感じて、こいつも拗らせてんなと思って苦笑する。
「うん。内山も一緒に焼肉連れてくよ。」
「あははっ、
あいつ肉好きだから喜ぶんじゃねぇか?
俺から伝えといてやるから、
お前は自分の仕事に集中しろ、いいな?」
「分かったよ。」
それはお前が内山に話しかける口実が欲しいだけじゃないかと、つっこみたくなるが、浅沼の言葉は的を得ていた。
「あっ、あと上手くいったら全部話せよー。
約束だかんなー!」
やめてくれよ、俺が一生話さなかったら、
フラれたって事だろっ!
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