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番外編Ⅱ
一つ目のお願い
しおりを挟むなんでや、なんで負けたん。
最初勝てたのに……。
季衣と柊真のオセロ真剣勝負は、1-2で柊真が一勝多い結果となった。
初戦はするすると季衣の思った通りに進み、これは全勝もあるのでは?と調子に乗っていたところ、柊真が『なるほどねぇ』と呟いた。
そこからはもうどうしようもなくて、季衣が考えた手は次々と潰され、角もほとんど取られて惨敗。
初戦は完全に様子見だったのである。
「ぐやしぃ~~っ。」
「ふふっ、実は俺、ボードゲーム得意なんだよねぇ。」
負けず嫌いの季衣が、悔しがって顔をゆがめている向かいで、柊真がしてやったりという顔をしている。
なにそれぇ。
その情報、始める前に知りたかった。
悔しい。
とても悔しいが、言い出しっぺは自分なので、約束を反故にする訳にはいかない。
負けたんやから、覚悟決めろっ、きぃっ。
「二回……私が負けたんで、
柊真さんのお願い、二つ、教えてください。」
「柊真。」
「え?」
「きぃちゃんは今日から敬語禁止。
もちろん名前も呼び捨てで。
これが一つ目のお願い。」
……………あーー、そういう感じですか。
なんかえらいウキウキで付き合ってくれるなぁとか思っていたら、そういう。
マジかぁ……、タメ口、呼び捨て。
うわぁ…マジかぁ……。
「……………………………………………………
……………………………分かった、頑張る。」
前から思ってたけど、なんでそんな呼び捨てにこだわってんのこの人。
敬語で喋られたら年の差感じるとか……?
いやぁ、柊真さんがタメ口で、私が敬語でって先輩と後輩みたいで好きやねんけどなぁ。
「きぃちゃん、な・ま・え、呼んでみて。」
うわ、来たァ。
「ちょッ、ちょっと待って。
心の準備しま…っ、準備する、から。」
あぁっ、そんなニッコニコな顔でこっち見んとってッ。
呼び捨てなんて、どう頑張ってもあの日の事が頭に浮かんでしまう。
『とぉまっ、きすしてっ、とーまぁ』
時間差恥ずか死は聞いてないって。
文字通り、ぐちゃぐちゃになる程溶かされて、もう勘弁してくれと言いたくなる程愛を囁かれた記憶が、季衣の顔を赤く染める。
いや……、待って。
今更じゃない?
一回言っちゃったんやったら、一回も二回も一緒じゃない?
あの夜言わされた事に比べれば、どうってことないような気もしてきた。
『かたいので、奥、とんとんしてっ。』
うわあ''あ"ぁぁ、とんでもない黒歴史は思い出さんでよろしッ。
とにかく、どれだけ引っ張ったところで結局呼ばなければならない事に変わりは無い。
覚悟を決めて、彼と目を合わせた。
「……柊真。」
「~~ッ、
…………………………あぁぁぁヤバいかわいぃ……。」
柊真の方も心の準備をしていたはずなのに、クリーンヒットという言葉が相応しい程、恋人からの呼び捨てをモロに食らって、ブワッと赤くなった顔を手で覆い隠した。
あーーーー、これ、すんげぇ照れるね、思ってたより百倍ぐらい照れる。
ヤバい、嬉しい、可愛い。
恥ずかしいだの、心の準備がだの言うくせに、腹を括ったらきっちり目を合わせてくるとことか、ホントずるい。
「きぃちゃん、……もう一回呼んで?」
「柊真……って、これからいっぱい呼ぶんやから、
今じゃなくても良くない……?」
不服そうな顔をしているものの、多分照れ隠しだろうな可愛い。
ていうかこれからいっぱい呼んでくれるんだ。
そういう約束とはいえ、恋人からの嬉しい宣言に心が踊る。
「駄目。照れてるのが可愛いから、今がいい。
ほら、もう一回。」
「照れてないしっ。
あぁもうっ、……柊真。
……柊真、とぉま、とーまっ!」
明らかに『可愛い』に反応して、さらに顔を赤くした季衣が、これでいいんだろとやけくそのように名前を呼んでくる。
うちの彼女って、いつからツンデレ属性になったんですか?
あ、結構前からか。
「きぃちゃん。」
「何?」
今度は何をやらされるのかと疑うような目で見られるが、やはり口調が変わってから遠慮が前より無くなった気がして、嬉しくなる。
「明日デート行かない?」
柊真からの突然の誘いに、季衣が目を見開いて、
「……デート?」
確認するように首を傾げる。
「うん、デート。」
「それが二つ目のお願い?」
「いや、これはお願いじゃなくて、ただの提案。」
そう、提案。
季衣が行かないと言えば行かない。
いつものデートの誘い方と変わんないんだから、これぐらいノーカンでいいよね。
「別にいいけど……、どこ行くん?」
「それは明日のお楽しみー。
……んで、きぃちゃんのお願いは?」
深掘りされるのは少し困るので、サラッと話題を変えてみるが、訝しがられるだろうか。
「ん~~、まだ考えちゅー。
思いついたらでいい?」
「いいよ。」
良かった、不審に思ってはいなさそうだ。
てか、『ちゅー』って何、『考えちゅー』って。
可愛いが過ぎるよ?
「明日ってなんか服装とか気ぃ付けた方がいい?
動きやすいとか、鞄デカい方がいいとか。」
うぉっと、明日の話題に戻って来たぁ。
「う~~ん、気持ちキレイめ?の方がいいかも?
まぁ、そんなに気を使うもんでもないから、
好きな服着ておいで。」
「えっ、キレイめ?
えー、何着て行こっかなぁ。」
多分、柊真の言葉の後半は聞こえてないんだろうなぁと思いながら、愛しい恋人の顔を見つめた。
あー、俺が選んだ服を着てもらうっていうのもいいなぁ。
また今度しよっと。
明日何時集合にしようかと話し合いながら、柊真は一人、頭の中で今後の楽しみに妄想を膨らませた。
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