ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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プロローグ

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私がいたところは本当にどうしようもなくつまらない場所だった。

誰もが前を向き、皆が足並みをそろえて歩くのだ。

隣を見て少しでも線から足が出ていれば、すかさず潰されてしまうのだ。

本当につまらない。

義務教育とはいえ、知らぬ他人が寄せ集められた狭い部屋に毎日行かなければならない。

それが皆に提示された約束された未来へのたった一つの行き方だと思っていたのだ。

しかし、私はそれが嫌だった。

どうしようもなく嫌だったのだ。

私には私のペースがあるし、他人には他人のペースがある。

生き方は千差万別、十人十色。

私がそう思うように、他人もそう思うのだ。

私はそんな考えを持っていたからか教室でも孤立し徐々に人と距離を置き、だれも私に寄り付かなくなっていった。

学校という私の世界は酷く狭く、息苦しいだけだった。

いつからか私は嫌なことがあるとすぐに本の世界に逃げるようになった。

それが今、考えれば単なる現実逃避だと理解できる。

そんなモラトリアムを良しとする自分を今、鑑みれば馬鹿だったなと笑い飛ばせるだろう。

しかし、その時の私には分からず、徐々に世界は狭まっていった。

 

 

 

それはある日、突然起こった。

何が原因だったのかはもう思い出せないが、おそらくその何かが彼らの勘に障ったのだ。

合唱コンクールだったか、授業のグループワークかなにかの班決めの時に私という存在が邪魔になったからだったか。

私の持ち物が消えたり、椅子や机が酷く汚れていたりと身に覚えのないいたずらをされるようになった。

それが世間一般でいういじめだと気づいたのは私が中学の入学祝いに父から貰ったアクセサリーが消えてからだった。

これは誰かの悪意でそれも単独犯ではなく、複数人による作為的なものだと気づいたのだ。

初めは単なる私のことが嫌いな人間の一人や二人が個人的にやっていることだと考えないようにしていたが、あるグループが私の悪口を回りに吹き込んでいる様を目撃してからはどうにもこれは取返しのつかないところまで来ていることに気が付いた。

他の所持品や、私に対しての直接的な行為については我慢出来ていた。

しかし親からのプレゼントを盗まれるのはなぜだか酷く腹が立ち、悲しさが体に染み渡るようで耐え切れず人目を盗んで泣いてしまった。

何故だか分からないが悲しさが体を蝕む。その頃には泣く癖がついており、この程度の事ですぐに綻ぶ自分の弱さにも苛立ちが募った。

そんなとき、ある少年が私に何故泣いているのかと問うた。

その少年はクラスでもあまり目立たずいつも早く帰るか、隣のクラスの子と意味の分からない会話をしていた記憶がある。

魔族だ、右手が疼くだの意味の分からない会話だ。しかし、彼はクラスに馴染んでいた。

私はその少年を無視した。

彼をこんなバカなことに巻き込みたくないし、今の状況をどう説明して、どう助けを求めたらいいのか分からなくなっていたのだ。

それに彼に助けを求める自分が想像できなかったのだ。

少年は何故か私のところに毎日来た。

彼は私を馬鹿にするわけでも何か危害を加えてくるわけでもなく、ただいつも同じ質問をしてきた。

ある日、耐え切れず号泣し、言わなくてもいいことなのに、ことの顛末を話してしまった。それは初めて私が人前で見せた弱さであった。

もう決壊寸前だったのかもしれない。

覚えのない悪口にも、物を隠されるのにも耐えられなくなってきていたのかもしれない。

彼は私に言った。

「よし、分かった。俺がそのアクセサリーを取返してやる!…………ふっ。俺の手には魔族の力が宿っているんだぜ?そこらの下等生物なぞイチコロよ。」

後半部分は何を言っているのか分からなかったが、彼は言った通りに次の日には私のアクセサリーを取り返してきた。欠損が酷く、修復不可能なほどであったが。

その取り返してきたアクセサリーを見て私がまた泣くものだから、彼はものすごく焦っていたが、違うの。

別にアクセサリーが壊れていたことに泣いたわけではないの。彼が輝いて見えて、眩しくてどうやって生きていったらいいか分からなかった自分のなにもない人生に光が射した気がしたの。

そこから彼の友達の手を借りて、私に対してのいじめは終わった。

そうして私は彼と出会った。

 

 

 

「あいつに進路先教えてもらえた?」

「いいえ。彼は何も言わなかったの。…………何故だか分からないけれど。」

「そっか。なんでだろうな。なんとなくは分かるけれど俺の口からは何とも。」

「そうなの?なんで肇(はじめ)は私に教えてくれないの?南くんはなにか知らない?」

「だから、それは俺の口からは何も言えないんだって。」

「貴方は私以外の女子には優しいのよね。」

「そら君に優しくしたら、鉄拳が飛んでくるだろ?」

「意味が分からないわ。」

ため息を吐く私に、南くんは憐れむような目を寄越す。
それが少し気にかかったが、やはり分からないのだ。
彼が私に進路をひた隠しにする理由が。

「それが分かったらなんであいつが君に進路を言わないかも分かるかもね。」

「なんの建設性もない会話ね。もういいわ。」

「駄目だよ。ちゃんとそこを考えないと元の木阿弥でしょ?」

「それはそうだけど。」

私は考える。

しかし分からないのだ。

どれだけ考えても分からないのだ。

彼に聞いても、いつもはぐらかされてしまう。そしてまた、馬鹿な会話をし始める。

彼が隣のクラスの子に恋をしていることも、未だに中二病をひきずっていることも知っている。

しかし何故かそれだけが分からなかった。

その進路先も、なぜ私に教えてくれないのかも分からなかった。

そんなとき、見つけたのがこの時計だった。

学校からの帰り道に落ちていたのだ。

何故そんな物が目に入り、拾いあげたのかは分からない。

それはカウンターの様に、時計の形をしながら、メモリしかついておらず数だけが表示されている。

私が拾う前は100回ほどカウントされていた。

私は何故かそのカウンターを拾うと右手に付ける。

なんで自分がそんな落ちているものを無闇に拾ったのかも分からない。無意識的に気づけばそのカウンターは右手についていた。

メモリは0を表示する。

それは何かを数えている。

次に見たら1回だった。

次に見たら100回だった。

そうして始まった。

すべてが始まったのだ。

彼と私のどうしようもない世界が始まったのだ。

 

 

 

また、彼は馬鹿なことを話している。

「うーん。天に雷鳴が嘶きとかの方がいいのか?いや轟きだな。そうだ。その方がいい。」

ほら、また馬鹿な話が始まった。

いつものことである。

そう。いつものことである。

 

 

 
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