ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第1章 異能力の目覚め

第1話 中二病の西京くん

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天に雷鳴が轟き、大地は割れ、世界の終わりが訪れた。

その者たちは目に入るものすべてを黒く染め上げ、無にしていった。

民衆は恐れおののき跪き祈った。

救世主の存在を。

中には絶望し打ちひしがれる者。

虚空に向かって泣き叫ぶ者。

終わりを悟り焦燥感から怒り狂う者。

しかし、皆が一様に求めていた。

そう。救世主の存在を。

誰かこの現状を打開してくれと。

皆が祈ったのだ。

その時、一人の男が立ち上がる。

その男の目は暗闇に赤く揺らめき、手には業火がうねりを上げ、覇気を纏い人々の前に立つ。

その男の善悪は分からないが、この現状を打開してくれるならと皆はその男に救いを求める。

そうして、男は右手を天にかざすと、その名を叫ぶ。

「ゴッドブレス!!!」

すると男の手から怒りの炎が放出され、空を射抜く。

町に堕ちた空は二つに割れ、そこから日の光が差し込む。彼らは救世主に狼狽し、身動きひとつとれず、息つく暇もなく屠られていく。

そして、男は群集に振りむき…………………

 

 

 

「ダサい。それはダサいのよ。もっとなんかあったでしょ?技名?っていうの?なにかもっと捻ってよ。なによ?神の息?いや。もっとなにかあったでしょ?」

「いや。これがかっこいいんだ。このダサさも味なんだよ。故に最強。」

「いや。こういう技とか。中二病の美徳は分からないけど、この出だしもなんか馬鹿っぽい。もっとあるでしょ?それに安易に火とか風とかそういう能力はどうなの?」

「故に最強。」

「うん。いつもそうやって俺は中二病だからとか胸をはって堂々と言ってくるけど。もうやめなよ。もう高校生なんだから。ほら。部活とか入ったら?体を動かしたらそんな馬鹿なことも考えなくなるでしょ?」

「故に最強なのだ。」

「次にそれ言ったらぶち殺すわよ?」

「故に……………………あ。はい。ごめんなさい。」

「はい。素直でよろしい。」

俺の親父は悪魔の血を引く一族の者で、母は堕天した天使の娘だった。俺の両翼は右翼に悪魔を左翼に天使を背負っている。業を背負いし者なのだ。

また片目には鬼の力を宿し、見る者を瞬殺してしまう。

右腕に業火を、左手に紫電を纏い、俺の前に現れる人間は誰しもが俺に畏怖するのだ。

「故に俺はさいきょ…………えっと。いえ違います。えっとはい。そうです普通の高校生です。」

「よろしい。はい。もう帰るよ。」

「はい。」

そうだ。俺こと西京 肇(さいきょう はじめ)は普通の高校生だ。

なんの変哲もない市立北山高校の二年生だ。もちろん、帰宅部である。

この口うるさい奴は俺の幼馴染の東 彼方(あずま かなた)だ。彼女はいろいろあって小学生のころからの付き合いである。腐れ縁というやつだ。

特筆すべき点が一つもないのが俺という人間だ。

別に勉学に秀でているわけでも、運動が得意なわけでもない。ルックスがいいわけでもない。身長も高くも低くもない172㎝だ。そんな俺が部活に入っても活躍など出来ず真の天才の下に埋もれていって気が付けば学生生活は終わっているだろう。

平々凡々。凡庸な有象無象の一人だ。

そんな俺はファンタジーの世界に夢見ていた。

なんでもいいんだ。

急に力が芽生えたり、実は親が悪魔の血をひいていたり。
異世界に転生して無双したり。

なんでもよかった。

しかし、俺はごく普通の人間だった。もちろん空は割れないし、手から火も出ない。親は会社員だし、母は専業主婦だ。

分かっている。

そんな馬鹿な世界が無いことくらい。

痛いほど分かっている。

しかし、何の才能もない自分を自覚し、どうにか納得させて生きていく覚悟も持てなくてそういった世界にすがってしまう。

そんな普通の人間だった。

なんにも変えられない。なんの力もない普通の高校生だった。

日常からも逃げてしまう情けない普通の人間だった。

 

 

 

「いやいや普通じゃねぇだろ?あんな可愛い幼馴染がいるだろ?俺も欲しいよ。あんな幼馴染。お前、朝起こしてもらったりするんだろ?いやきっとそうに違いない。」

「いや。ないだろ。そんなこと。ゲームのやりすぎだ。それにあいつは単なる幼馴染だ。それ以上でも以下でもない。それにあいつは俺の幼馴染であることと同時にお前の幼馴染でもあるだろ?」

「本当か?…………なら俺がアタックしても」

「…………。いや駄目だな。」

「は?…………まあ。東さんは一部に人気だし俺がいかなくても引く手数多だぞ。あの控えめな胸もあのショートカットから見える首筋もいいっていう男子は結構いるぞ。なによりあのとがったSっ気のある目で見られたらぞわぞわするんだ。」

「うえ。気持ちが悪い。…………それ言ってるやつ誰だ?教えろ。」

「無論。俺だ。」

「死ね。」

「まあ。お前はそうだよな。あの子が好きだもんな。…………北条さんだっけ?」

「あんまデカい声で言うなよ。聞こえたらどうする。まあ、北条さんはお前には分からない魅力を持った女子だからな。」

「うん。あの子は別にいいわ。ああいう私、可愛いでしょ?キャハッ!みたいな子はちょっと無理だわ。」

「ああ。いいんだ。まだお前には分かるまい。あの子の良さが。」

そう。俺は同じクラスの北条 美紀(ほうじょう みき)に恋をしている。

一目ぼれだった。

こういう人が自分の傍にいたらなにかが起こりそうだと妄想してからはもう彼女のことが好きになってしまったのだ。

それは一種の現実逃避かもしれないが一度目に入ってしまえば意識してしまい目で追ってしまう自分を自覚してしまった。

これは恋だと。

「おい。悦に浸るな。気持ちが悪いだろ。」

「お、そうか。すまん。」

この無礼な男は所謂、悪友というやつだ。

名は南 和樹(みなみ かずき)という。

彼は美少女ゲームが好きだという俺と同類のオタクではあるが、俺とは違い社交性もあり、顔もそこそこかっこいい。

こいつは俺とは違ってモテるし、気の利く男である。そこがまた腹立たしいのだが。

「今日も東さんと帰るのか?」

「多分そうなるだろ。」

「そうか。俺との友情を育むという選択肢もあるぞ?」

「ないぞ?」

「そうか…………。なら今日は後輩と帰ることにするよ。薄情な男だ。本当に薄情な男だ。俺は寂しいよ。」

「え…………?」

「いや。悲しいんだ。こんな気持ちになったのは初めてだったんだ。俺、気が付いたんだ。お前が東さんとは付き合ってないって聞いた時からずっと苦しいんだ。だから…………。」

「先輩!南先輩!早く行きましょ!」

「あ!唯ちゃん。加奈子ちゃん。うん。今いくね。」

廊下を見ると二人の女の子が立っており南を呼んでいる。二人とも見た目は可愛く、教室の男子もチラチラと見ている。

「おい。南先輩。呼んでるぞ。友情とかどうでもいい女大好き南先輩。呼んでるぞ?」

「いや…………まあ。なんだ。お前も幼馴染と仲良くやれよ。じゃあな。」

南は放課後になるといつも違う女子を連れて歩いている変態野郎であった。かといって付き合っているという女子は一人もいない。なんでも美少女ゲームのやりすぎで頭がおかしくなり運命的な出会いでないと駄目なんだと断言していた。

軽薄な上に頭がお花畑なやばい奴である。

例えば空から美少女が降ってくるとか。

急に世界を救ってほしいと言われて二人で世界を救うとか。

海に行くとたまたま美少女がいて、千年の呪いを解くとか。

まあ、彼は頭がおかしいのだ。

しょうがない。しょうがないのだ。

「人のこと言えないでしょ?」

校門に行くとそこにはいつも通り東が待っていた。

「いやいや。俺はやつとは違い常識のある男だ。」

「どうかしらね。まあ、とりあえず早く行きましょう。」

「おう。…………。あ。俺、ちょっと用事が出来たわ。先に帰っておいて。」

「え?今日は一緒に本屋に寄る約束でしょ?」

「悪い。今度一緒に行くから。すまん。」

東と帰っているときに目の端に捕らえた。そう。北条だ。

遠目でも気が付いた。

今日も綺麗だ。

容姿端麗、才色兼備。謹厳実直。彼女を表す言葉は数多く存在するが、俺は彼女を初めて見たとき思ったことは一つだ。

可愛い。

これに尽きる。

背中まで伸びた長く綺麗な黒髪に、大きな双眸、高い鼻梁、慎ましくも艶かしい唇。成長が著しいその肢体にも何人の男を虜にしてきたか分からない。

いつもなら彼女は友達と一緒に三人ほど徒党を組んで帰っているため声をかけられないが、今日は一人だ。

あの女友達の壁にはさしもの俺も敵わないのだ。

そうでなくても、意中の人間に声をかけるというのは緊張するし、それ相応の勇気がいるのだ。

俺は東と別れると、すぐに彼女のもとへ駆け寄った。

「あの。…………えっと北条さん?偶然だね。」

「あ。西京くん。偶然だね。」

「そうだね。えっと。よかったら北条さん俺と一緒に帰らない?」

「うん。いいよ。」

言ってやったぜ。ふぅー。嫌に心臓の鼓動がうるさい。

にしても「うん。いいよ。」って言った時の小首をかしげる仕草。可愛すぎるだろ。

しかし東にならすぐに言えるのに、北条さん相手だとこんなに緊張するのか。

こんなフウに軽く女子を誘うことは難しいと思っていたが、どうも最近、南のやつと一緒にいるからか俺にも軽薄な空気が付いたのかもしれない。

前は初対面の人と話すときは声が震えたり、上擦っていたが今は何とか矯正できたのかもしれないな。

それにしても、北条さんをこんなに至近距離でみたのは初めてだ。

同じクラスにしてくれた教師ありがとう。おかげで声をかけても大丈夫な関係を作れました。

彼女、めちゃくちゃ可愛いです。

「そういえば、西京くんはあの東さんとも仲良かったよね。」

「あの…………東さん?えっとそうだね。」

「東さんだけ今度のグループワークの班を決めてないの。彼女に会ったら、私の班に入れてもらうようにしてもらったって言っておいてくれないかな?」

「ああ。北条さん。クラス委員長だもんね。」

「うん。東さん。ちょっと人を寄せ付けないところあるから心配なの。」

「分かった。言っておくよ。」

ああ。いいな。こんなフウに好きな女子と一緒に帰るのはすごく良い。緊張感もあるが、それよりもこんな高揚感は初めてだ。

彼女と話しながら、もっと仲良くなって繁華街やら、水族館やらデートコースを北条さんと歩く自分を想像してしまう。

「あ。私、ここ曲がるけど、西京くんは?」

「そうなんだ。俺はこのまま道なりだから。…………じゃあ。ここで。」

もうお別れか。

なんだ。楽しい時間は短いとは聞くがこんなに短いのか。

もっと話したいことが両手には収まらないほどあったのに。

趣味とか。

休日何してるとか。

好きな音楽とか。

ん?お見合いみたいな質問ばっかりだな。

しかし、今日が終わればまた、ただの同じクラスの人になるのか。

どうにかこの絶好の機会をものにしなくては。

どうにかして彼女とお近づきにならなくては。

こんな機会はもう二度と起こらないかもしれないのだから。

「そうだ。北条さんってこの後ヒマ?なんか駅前に新しくクレープ屋が出来たそうでそこに行きたいんだけど、男一人ではちょっと行きづらくて…………」

自分で言っていて思うがいかにもって感じだな。

慣れてない男の誘いってのは傍から見ていて痛々しいのかもしれないが咄嗟に出たのがこれだったのだ。

それに声も上擦って、片言みたいになってしまった。

「ごめん。今日はこの後、友達と遊びにいく予定なの。でも、西京くんってそういう店行くんだ。なんか意外だね。」

「え?」

「ほら西京くんってそういう甘いもの苦手そうなイメージがあったから。」

「そうかな?まあ甘いもの好きだよ。」

「そうなんだ。やっぱり話してみないと分からないことってあるね。…………じゃあ。また明日。」

「うん。また明日。」

まあ。そうか。

こんな急に誘っても来てもらえるわけないか。もっと南と作戦を練ってきたらよかった。それとも普通に嫌だから断られたのだろうか。

頭の中に後悔と疑念が錯綜する。

まあ考えても仕方ない。

今日は家に帰って反省会もといアニメ鑑賞でもするか。

と、諦めて帰ろうとしたとき、北条さんがこちらに振り向いた。

「あ…………でも明日なら行けるかも。明日の午後なら。なんにも予定ないし。」

「え…………?ほんと?じゃあ。明日行かない?」

「うん。いいよ。」

やっぱり彼女の可愛い仕草に俺の心は射抜かれた。

 

 

 

 
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