ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第1章 異能力の目覚め

第4話 テレキネシス日吉

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「まさかこんなにも早くファウストの奴らが勘付くとはな。」

シャクンタラーのメンバーである日吉 友則(ひよし とものり)は怪しげな三人の男たちを前につぶやく。

彼は異能探知の能力を有するレベルBのテレパス瀬川が探知した二人のレベルAの異能力者を追いかけてとある町に来ていた。

その異能力者はこの町の高校生という情報をもとに動いていた日吉は、しらみつぶしにこの辺り一帯の高校を巡回しており、瀬川の連絡を公園にて待っていたのだ。

昼から異能者の探索にこの町に訪れていたが、夜まで不審な人物もおらず小休止といったように公園のベンチに腰掛け缶コーヒーを飲んでいたところであった。

その時、急に目の前に暗闇から三人の男が現れた。

彼らは自らをファウストであると明かし、こちらに接近してきたのだ。

「おい。おっさん!お前シャクンタラーの犬だろ?異能力者の情報を吐いてもらうぜ。」

三人の男のうち、年若く頭を刈り上げている人相の悪い男が日吉に罵声を浴びせる。

敵が三人ということに焦りを見せる日吉にファウストの面々はにじり寄る。

日吉は少なくともレベルBに認定されているテレキネシスを有する。しかし情報の少ないファウストの男たちに囲まれれば恐怖心から焦燥感も芽生えるものだ。

テレキネシスとは思念により物体を動かす能力である。日吉のレベルはBであり、流石に車や家など自分がじかに持ち上げることが不可能な物は無理だが、そこらの物なら意のままに動かせる。

確か、この人相の悪い男はレベルⅮのテレキネシスの小田であったはずだ。その他の男については情報がなく分からないのでどう対処すればよいかという最善手を模索する。

瀬川の野郎。こういうときのために情報共有はしておけとあれほど言われていたのに。

敵前逃亡も視野に入れなくてはならない。

日吉は瀬川に対する舌打ちと共に後方の二人の男に目をやる。

一人は長髪の男で、肩まである髪の間から首筋の入れ墨がチラチラと見え隠れする。外灯の下に彼の顔が明るみに出る。かっこよくはない。

ああ。長髪なのに鼻筋も低く、目も小さい。これではファッションではなくただの薄汚い不労者に見えても仕方ない。

とそんなどうでもいいことを考えているうちに、もう一人の背の低い仏頂面の男が日吉に手をかざす。

その瞬間、日吉が先ほどまで腰かけていたベンチが宙へと浮く。

地面の根本ごとベンチは持ち上がり、そのまま日吉めがけて飛来してきた。

日吉は自らの異能力を使い、浮いているベンチを地面にたたきつける。

あの小さい男は俺と同じテレキネシス使いだと把握し、その男に目をやると、長髪の男がこちらに手をかざしているのが見える。

すると公園の網目のごみ箱が勢いよくこちらに飛来する。寸でのところでなんとか躱すと、そのままごみ箱に自らの異能を乗せて、彼らめがけてごみ箱を投げつける。

小田を含めた三人の男は皆一様に手をそのごみ箱に向けると、ごみ箱は宙で制止し地に落ちた。

ごみ箱の落ちた音がけたたましく夜の公園に響く。

こいつらは皆、俺と同じテレキネシスだ。しかしながら全員が自分よりもレベルが低いことに少し気が楽になる。

「分かったぞ。あんたテレキネシスの日吉だろ?確かにレベルBだけあって俺らの異能が通じないわけだ。」

小田は威勢よく日吉に話しかける。

話すたびに宙を舞う唾は異能ではない。彼の前歯は数本しか残っておらず飛沫が地に落ちる軌道を見るたびに日吉は眉を顰める。

「そういうお前は小田だな。確かに人相の悪い顔をしている。」

「おお。シャクンタラーの犬にまで俺のことが知れ渡っているなんてな。」

「どうします小田さん?こいつ結構強いですよ?」

背の低い男が小田に問いかける。

腰の低い男である。

「はっ!ビビんなよ。日比谷(ひびや)。あいつは一人だぜ?」

日比谷。

なんてかっこいい名前なんだ。あの男には何故だか不釣り合いに思える。と日吉はその男に目を移す。

「おい!日吉。お前はレベルBかもしれないが、こっちには異能者が三人もいるんだぜ?」

小田の言葉を最後にファウストの三人は一斉に日吉の体に直接、異能の力をかける。
三人が同時に日吉めがけて異能を行使し、彼をその場から弾き飛ばそうとしているのだ。

日吉は自分の体にテレキネシスを使い、地に縫い付ける。こうして彼らの異能の力を相殺しているのだ。

やはり、時代劇のように順番に斬りかかってくるようなことはしないのだ。
次々から次に日吉の体に異能の力が飛来する。

これでは防戦一方になってしまう。どうにかしなくては。

日吉は焦る気持ちを落ち着け、なんとか攻撃出来る機会を伺う。

「おいおい。こんなショボい攻撃じゃあ俺の異能は倒せねぇぞ?」

挑発により、彼らの動揺を期待する。

この状態では救援を呼ぶことも出来ない。奴らは見逃してはくれないだろう。

なんとかしなくては。

「…………日吉よぉ。お前は馬鹿だな?」

「なんだと?」

「上だぜ!!!」

その瞬間、頭上から一気に重力がかかる。それは奴らの今までの攻撃がブラフであり、こちらが本命であると裏付けている。

三人のテレキネシスの加重攻撃になんとか耐えるが、その攻撃はあまりに重く、見る間に日吉の顔は地面に吸い寄せられ、地に打ち付けられる。

その衝撃で日吉の意識は途切れ、視界はブラックアウトした。

 

 

 

「なあ。南。俺には異能の力があるかもしれない。」

「ああ。今日、放課後東さんから連絡があった。お前がちょっといかれたちゃったから病院に付き添ってくれってSОSをな。」

「あいつはちょっとファンタジーが欠落してるんだ。まあいいから。マジであるんだよ。俺には。異能ってやつが。」

「ねぇよ。馬鹿になったのか?…………いやもともとか。」

「は?お前ってやつは。いいか見ておけよ。こう手を伸ばすだろ?」

「ああ。はいはい。もういいか?ここから最寄りの病院にお前を叩きこんで、俺は美人と夜の街に消えていくんだ。」

今日は放課後、偶然南と会った。

それから、南に様子がおかしい、お前はろくなもんじゃないと馬鹿にされたわけだ。俺は自分がおかしくなったわけではないと異能を見せつけるため公園に赴いた。

もし、次に異能が発動しなければ、俺は本当に普通の人だと認めよう。

それでもいいのかもしれない。

それはやっぱり異能なんてものはないという現実とあの惨状は白昼夢だったという安心につながる。

逆に俺の異能が証明されれば、確かにあのデートの時の惨状も現実だと断定されるし、この異能であの時のデパートの人々も助けられたことの証明にもなるかもしれない。

どちらにしても南の証言があれば、この出来事は確証につながり安心できる。

なにより、もう終わったことなのに固執するのは自分が異能を持っていないと落胆したくないだけなのかもしれない。

「マジでやるぞ?」

「もういいだろ?帰るぞ?」

「いや、本当にやるぞ?すごいぞ?後になって吠え面かいても知らんぞ?」

「ああ?いいから帰ろう。美人ちゃんとの約束は取り消して一緒に行ってやるから。」

「やるぞ?衝撃波を出して、この辺の公園にいる奴らの服を剥がしてやるぞ?」

「わかったわかった。早くやれよ。
………ん?なんでそんなくだらない異能なんだ?もっとやばい異能使えよ。妄想にしても馬鹿だな。」

「いや。なんかまわりの被害を考えるとちょっと抑え目の方が良いかなって…………。」

「妄想なのに配慮すんなよ。ほら?お前の両親はやばい悪魔なんだろ?それこそ悪魔を降臨させて、手から火とか出せよ。」

「ふっ。真の異能者はそんな大げさなことはしないんだ。静の美学というものがある。それは緩やかに静かに。まるで蝶のように業(わざ)を綺麗に見せるんだ。」

「腰抜けが。」

「なんだと?」

「いいからやれよ。」

南はどうでもいいと手をふらふらさせて帰っていく。

「やってやるからな?…………おら!!!」

その瞬間、南の体はフワッと風船のように宙に浮き、服がはじけ飛んだ。

 

 

 

 
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