ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第1章 異能力の目覚め

第6話 テレキネシス南

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「西京。俺たちは夢でも見ていたのか?」

「分からないがお前が裸だったのは本当だ。その証拠にお前は俺が買ってきた服を着ている。」

「そうか。…………そうだな。なあ、彼らについてはどうするんだ?」

「警察に連絡はしただろ?俺らに出来ることはそれまでだ。とりあえず今日は帰ろう。風呂に入って寝て、冷静になったら話そう。」

「そうだな。帰ろう。」

「なあ、そういえば美女との待ち合わせはいいのか?」

「ああ。もういい。今日は帰りたい。」

「そうか。」

南は謎に衰弱しており、言葉もポツリポツリと小さく小鳥の羽音のような声だった。

何が彼をここまで追い詰めたのだろう。

裸に剥いた時まではいつも通りの南だったのに。

もしかしてあの三人の裸体の男に何かされたのか?

それは言葉にするのも憚(はばか)られるようなことなのかもしれない。

俺がいないうちにわが校の校則に反するようなふしだらな行為をしていたのかもしれない。

「南?大丈夫か?」

「いや、少し疲れた。もう休みたい。」

「そ、そうか。尻とかどうだ?大丈夫か?」

「尻?なぜだ?まあ大丈夫だ。」

「そうか。そこは阻止したんだな。よかった。」

「まあ。色々と危なかったな。お前が来てよかったよ。」

「そ、そうなのか。危なかったのか。…………うん。今日はゆっくり休め。そんな日もあるさ。」

「なんだ?今日はえらく優しいじゃないか?…………そうか。やっと俺という友人の大切さに気が付いたか?」

「ひっ!!…………うん。帰ろう。」

「ん?お、おう。今日は疲れた。未知の経験もしたしな。本当に疲れたな。」

「未知の経験…………。お、おう。帰ろう。」

俺たちはそうして公園を後にした。

その後のニュースで四人の裸体の男たちが公園で集団自殺を図っていたと流れていた。

そのニュースの話を南にすると悲痛な面持ちで押し黙るものだから、二人でいるときにこの話題を出すこともなくなっていった。

 

 

 

「そういえば、南。新しく時計買ったのか?」

「いや、この間の公園での一件の時に家に帰ったら勝手に付いてたんだ。お前が俺に買ってくれたんじゃないのか?」

「いや、知らない。なんだそのダサい時計は?時間もバグってるし、なんか変な模様の時計だな。」

「ああ。でも腕から外せないんだ。なんなんだろうな。…………。明日、時計屋かなんかで取ってくるよ。」

「そうか。」

俺と南は昼食を食べながら、異能についての話をしていた。

最近ではいつも俺の異能について南の考察を聞いては、色々試しているが異能はあの公園の一件以降、全く発動しなくなっていた。

試しに何かの漫画の詠唱を大声で叫びながら手を前に突き出したが発動しなかった。

それ以外にも、南が裸になってその周りを小躍りしながら手を前に突き出したが無理だった。

百通りをも超える試みはすべて無に帰した。

それでも異能があることは分かっているので、どうにかしてこの力の謎を解き明かさなくては夜もおちおち眠れないのだ。

そんなとき、妙な人間がいることに気づく。

「おい。南。なんかあの人こっちに近づいてきてないか?」

「あ?」

話ながらチラチラ目の端に見える人間がいた。

それは知らない生徒だったが、見るに体は俺たちの二倍はあろうかと疑うほどの大男であった。多分、上級生だろう。

こちらに睨みをきかせ、ズカズカと近づいてくる。

その足取りは酷く緩慢であるのに対し、すごい勢いでこちらに近づいてくることから彼の体がとてつもなく巨大であることが伺える。

その時、声が聞こえてくる。

「おい!!南!!…………おい!!聞こえてんだろ!!クソガキが!!」

それは太った体躯に合った低くこもった声であった。

「おい。南。あれお前のこと呼んでないか?」

「ああ。舘口先輩だな。…………あの人しつこいな。」

「え?なんだ?彼氏か?」

「は?お前は馬鹿なのか?」

「だってそういう趣味に目覚めたんだろ?あの公園で。…………違うのか?」

「…………ああ。お前はやっぱり馬鹿だが当たっていることがある。」

「やっぱりモーホーに?」

南は俺を無視しゆっくり腰をあげると、巨体の舘口先輩に近づいていく。

彼と南が遠くから見て重なるとやはり南の体に対して舘口先輩の体は二回りほど大きく見える。

そして、南は舘口先輩に肉薄すると思い切り彼の中腹に一撃お見舞いする。

いや、南は喧嘩は驚くほど弱い男である。か細い手に筋肉質とは言えない中肉中背である。

そこらの小学生にだって負けた経験がある男だ。本当に頼りない男である。

そんな男の拳があの巨体に通用するとは思えない。

しかし、舘口先輩はその場に伏していた。

音もなく地に倒れたのだ。

南は俺の方に振り返り、こう言った。

「言い忘れていたが、俺にも異能が芽生えた。それは確かただ。」

 

 

 

その後、倒れた舘口先輩は気絶しており、今ごろは保健室で安静にしている。

「え…………。お前異能って…………。」

「ああ。この間、公園から帰った夜のことだ。体の奥からせり上がってくる力を感じたんだ。そして、起きたら力が宿っていた。」

「リビドーじゃなくてか?」

「黙ってろ。いいか?俺の力は物を思念で動かす能力だ。それは色々試して分かったことだ。俺の異能はお前の服を脱がす力なぞ優に凌駕する能力だぞ。」

「いや。モーホーのおっさんを三人も召喚する異能とかでなくてよかった。…………安心したぞ。」

「そうか。俺もその点についてはものすごく安心している。…………そういえばお前、異能について東さんに言ったか?」

「いや、言ったが信じてもらえなかった。だから…………。」

「お前…………もしかしてお前、東さんを素っ裸にしたのか?見損なったぞ!!外道が!!」

「してねぇよ。だから、お前が病院の付き添い頼まれたんだろうが。」

「そういえば、そうでしたね。すいません。」

「お前今、東の裸を想像しただろ?」

「していませんよ。何のことですか?」

「あ、そう。」

ため息をこぼして、南を見る。

南に異能が芽生えたということは周りの奴らも何らかのきっかけで異能が芽生える可能性があるってことだ。

これは、考えるも恐ろしい話である。

いつあのデパートの時の変人が現れるか分からないってことだ。

「とりあえず、東さんには言わない方が良いだろう。異能を持っているとそれこそこの間の小田さんみたいに襲ってくる奴がいるかもしれない。彼女に危険が迫るのはお前が一番恐れている事だろ?あの時みたいにな。」

「まあ、そうだな。…………その話はやめろって言っただろ?」

俺たちがまだ中学生の時の話だ。

その時の幼い俺たちが想像もしないような災難が東に降りかかった。それが東を虐めていた奴らが図ったことであると分かった時、俺は自分を止めることが出来なかった。

そいつらを片っ端から殺してやろうとしていたのだ。

そんな自制心を失った俺を止めてくれたのが南だ。

その件ついては南と二度と話さないという取り決めをしていた。その虫唾が走るような話を聞くと今でも怒りが収まらないのだ。

「…………まあ。そう怒るな。とりあえず、お前の異能が何なのかを考えないとな。それに発動条件だ。それが分からないと襲われたとき対処できないだろ。」

「…………確かにな。よし、とりあえず俺は午後から北条さんとデートの予定があるから今日は無理だ。」

「またあの女か………お前も懲りない奴だよ。本当に。」

その後、北条さんに連絡するも、他の女子との予定が入ったとかなんとかでデートの話は潰れた。

 

 

 

 

 

 

 
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