ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第2章 シャクンタラー対ファウスト

第15話 桝原 隆は恋に落ちる

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「誰だ、あんたら?」

桝原は気怠そうに俺たちに当たり前の問いかけをする。

そら、急にこんな奇妙な組み合わせの三人に声を掛けられたら困惑するのも無理はないだろう。
結局、北条に言われて俺たちはこの不良さんをシャクンタラー勧誘に訪れたのである。

俺たちは一応、相手が不信感を持たぬよう北条さんが初めに声をかける役として作戦を練っていた。

しかし、その後ろに変な男が二人いてはこの作戦も意味がなかったのかもしれない。あのロリッ子もとい宮ちゃんにも同行してもらえばよかった。

「なんの用かは知らないが俺は今、虫の居所が悪いんだ。今度にしてくれ。」

一瞬、北条さんに見惚れていた癖に何か不良らしいことを宣う桝原。まあ。やっぱりここは南の出番かもしれないなと彼を見ると、彼もこちらを見ていた。

俺の考えは彼に伝わったようだ。

そう、彼の社交性で桝原を篭絡すれば…………「おら!!死ね!!!」

「え?」

南はいきなり、桝原に向かって駆け出すとそのまま彼に正拳突きをかます。話し合いも何もあったもんじゃない。しかも、今のは明らかにテレキネシスを乗せた異能を用いた攻撃だ。

しかし、彼の渾身の一撃を桝原は余裕の表情で受け止めていた。それはそうだ。南のレベルはBである。それに対して瀬川の調べでは桝原のレベルはAである。勝ち目はない。

「なにすんだ?この野郎。」

桝原は眉間に皺を寄せて、怒気の孕んだ声で南を威圧する。

「やるじゃないか。」

「…………ん?あんたは確か北高のたらしで有名な南。」

「そういうお前は明桜の現トップである桝原だろ?最近、有名になったようだな。」

南の拳を受け止めたままの桝原。二人はそのまま睨み合ったまま固まっている。

次の攻撃を考えているのだろう。
しかし、俺たちは別に奴に喧嘩を仕掛けに来たわけではないため仲裁に入らざるを得ない。

「いやいや。ちょっと待て。南。お前なにしてるんだ?この人を勧誘しに来たんだろ?攻撃してどうする?」

「まあ、先に力を誇示したほうが相手も分かりやすいだろ?いきなり俺たちが異能者だよ~!仲間になって~!なんて言っても信じてもらえないぜ?」

「まあ、その通りだが。」

俺たちが言い合いをしている間、北条さんはもう帰ってもいいかしらと面倒そうに自らの長い髪先をいじっている。

「待て…………お前ら今なんて言った?異能?」

「そうだ。お前も最近になっていきなり喧嘩が強くなっただろ?お前、変な腕時計を拾ったんじゃないか?」

「は…………なんでそれを知っている?」

桝原は体をのけ反らせて驚いている。ノリのいい奴である。

「いや、桝原さん。あなたは身体向上の異能を有していますね?俺たちも異能を持っているんですよ。南の拳を受けて違和感を感じませんでしたか?」

俺はとにかく、何も分かっていないだろう桝原に説明をする。

「いや、特には。」

「なんだと!!この野郎!!ぶっ殺してやる!!」

何が癇に障ったのか南は舗道の端にあった自転車を念力で持ち上げ、桝原に向かって投げ飛ばす。

「…………!!?」

一瞬、戸惑っていた桝原だったがその攻撃に反応し、飛来する自転車を受け止めると、そのまま地面に置いた。

今のは結構、南も本気でやっていたが、この男はその攻撃を軽々と受け止めていた。見た目は普通の高校生だが、その力は確かに異能というだけあって人間離れした身体能力を有していた。

「…………なんだ今の。自転車が浮いていた。マジックかなにかか?」

「いや、だから異能力です。」

「マジックか?」

「馬鹿なのか?」

「…………………」

「いや…………気が動転していた。こ、これがその異能か。俺にもそれが宿ってるんだな?」

「そうです。それで俺たちの他にも異能者が何人もいて組織だって動いているのですが、単刀直入に言うと俺たちの仲間になってくれませんか?」

桝原は苦い顔をしながらこちらを見る。

急な俺の誘いに戸惑っているのか、それとも何か事情があるのだろうか。

南は結構本気で行使した自分の異能が易々と桝原に受け流されたことにショックを受けたのか何も言わずに呆けている。

北条さんはやっと話がまとまってきたことを確認して、話しに加わってくる。

「うちの組織はアットホームな雰囲気で新しい人はいつでもウェルカムよ。」

「いや。ちょっと北条さん黙っておいて。」

「何よ。暇なのよ。」

北条さんがブーたれて、その辺の石ころを蹴飛ばしている間に桝原の意思は固まったようだ。

「いや…………その組織か。…………うーん。いや。やめとくわ。もう団体とか組織とか懲り懲りなんだ。」

今北条さんを一回チラ見して悩んでから答えを出したな。これはもうちょい押せばいけるのでは。

「なんだお前。今は明桜のトップなんだし一つも二つも変わらねぇだろ?不良は馬鹿なんだから考えずに進め!」

南が桝原に茶々を入れる。

おい。今押せば行けたのに余計なことすんなよ南。と彼を睨みつけるも彼は知らんぷりして桝原と話しを続ける。
しかし、その話題が出た途端、桝原は乾いた笑いとともに自分語りを始めた。

「いや。その明桜の暴走族も抜けたしな。」

「は?」

「俺はもうそういった団体さんには属したくなんだよ。これからは学生らしい生活をおくりたいんだ。部活をしたり。勉学に励んだりな。」

「彼女といちゃついたりか?」

「ん?…………ああ。そう。そうだよ。その通りだ。ああ。彼女に会いたいぜ。」

「はい。分かりました。この人彼女いませんね。俺のセンサーが察知した。こいつは魔法使い見習いだと。」

その瞬間、桝原は赤くなって俯く。そら美女の前でこんな恥を晒せば顔を背けたくもなるさ。

俺は彼が可哀想に思い、南を制止する。

「おい。やめとけ。可哀想だろ?」

「ああ。ごめん。お前もいたな。西京。」

「西京くん…………え?」

いややめて。北条さんそんな顔で見ないで。

「…………てか。高校生なんだし普通だろが。ぶち殺すぞ。南。この野郎。」

「そうだよな。普通だよな?なんだ焦ったぜ。最近の高校生はもうそんな進んでいたのかって。」

桝原は俺の言葉に勇気付けられたのか、少し控えめに笑いながら顔を上げる。

「あれ…………北条は焦らないの…………あぎゃ!!」

「何か言った?南くん?」

「いえ。なんでもないです。」

隣で仲よさそうに戯れている二人は無視し、俺は桝原に再度、勧誘を持ちかけるも桝原は最後まで首を縦には振らなかった。

彼はもうそういった組織のしがらみみたいなものが嫌になったそうだ。

それでいて、興味もない不良のトップになってしまったことから最近ではいらぬ心配が増えたとか。不幸な男である。

そういった彼の事情を考慮して俺も異能を使って彼から異能を奪うことはしない方向で話は進んだ。

今、彼から異能を奪えば、彼は自己防衛力を失ってしまい、町の不良に狩られてしまうだろう。

話を聞けば彼は喧嘩が嫌いで、好きなのは可愛い子とゲームという。何か俺たちと似通った人間だということも分かり、そこからは世間話に花を咲かせ、気が付けば南は彼の携帯のアドレスを聞いていた。

今度、南が合コンを開いて彼を招待するらしい。

「そういえばお前が喧嘩しているのを見て、カッコいいって言ってたやつがいたわ。」

「本当か!?…………いや。待て。そういう子じゃなくてもっと大人しい子が良いな。ほら。こう図書委員みたいな?」

「なるほどな。いかにも童貞臭い意見だが。いいだろう。セッティングは任せろ。」

その時の桝原は本当に嬉しそうな顔をしていた。

勧誘は失敗したが、パイプは繋げたしまあいいかと俺たちは一旦引き上げることにした。

本部に帰った際は一応、植木への報告も忘れずに。

勧誘は失敗した。南と俺でも敵わなかったし、彼は悪い人間ではないので大丈夫だと。連絡先も交換したので今後は彼の動向を決まった日に報告すると。今後、ファウストを名乗る組織が勧誘に来たら断るようにと、連絡をしてくれとも伝えてある。

噓八百の内容に植木は「そんな逸材ならぜひともうちに欲しかったのにな」と残念そうにはしていたが、納得してまたアホな顔を晒しながらタバコを吹かしていた。
彼は癖なのか、タバコを吸う際におちょぼ口に目を大きく開けて、スーハースーハー音を立てて吹かす。こんな大人の痴態を見せつけられる俺の気持ちも考えてほしいものだ。

こうしてレベルA身体向上の異能を持つ者の件は幕を下ろした。しかし、俺はこの後、南に任せた彼があんなことになるとは露にも思っていなかった。

 

 

 

それは彼と接触して三か月後のことだった。

何の気なしに南に植木への報告のため、桝原のことを訊ねたのだ。

「そういえば、あの後、合コンはうまくいったのか?」

「合コン?」

「ああ。桝原のだ。」

「ああ。ペタとやった合コンか。ああ。概ね良好だったぞ。」

「ペタ?」

「うん。ペタってあだ名だ。」

「それはまたなんで?」

「話せば長くなるぞ?」

「いや聞こう。俺にはその義務がある。」

彼の話を聞くと、それは本当に遅すぎたモテキを迎えた憐れな男の話であった。

彼は南が主催した合コンで確かに女子ともうまく話せていたそうだ。その後、相性の良かった女子とデートにも行ったとか。ここまでは順調であった。

しかし、そのせいで彼は勘違いをしてしまう。
俺はモテるのではないかと。

そこから彼は誰彼構わず女子と知れば遊びに行くようになる。そして高校生から大学生へと範囲は拡大していく。

そうして、彼曰く最高の女性と出会ったそうだ。彼女は大学生。花屋でバイトをしているという。コケティッシュな魅力を持つアジアンビューティーだそうだ。南はその人を写真で見せてもらったらしい。それから分かったことがある。

「その人、ちょっとな…………。」

「ちょっとなんだ?」

「うーん。まず知り合いがその女性と知り合いだったから、その人について色々聞いたんだが。」

「ああ。なんだ?」

「結果的に言うと、その人は大学生ではなかった。」

「は?どういうことだ?」

「自称23歳の30オーバーってところだな。」

「え?」

「30オーバーのアラフォーってやつだな。」

「待て待て待て。なんか急に膨れ上がったぞ。どういうことだ?」

「つまりそういうことだ。桝原に聞けば、たまに話題が合わなかったり、自分より博識なんだそうだ。でもそこが魅力かなって。すごい楽しそうな顔で言うんだよ。俺、もう何も言えなかったんだ。」

「そうか。…………。だからペタか。ペタジーニのペタだな。また古い野球選手の名前を引っ張ってきたな。その名を継いで別れないといいが。いや。どうなんだ。別れた方がいいのか?彼が幸せなら別にいいのか?」

「そうだな。俺にはもう分からないよ。いや。だが写真を見たら目を疑うだろう。あれは騙される奴のが馬鹿だ。」

「そうか。」

俺と南はその後、二人とも昼食を食べた終わるまで黙っていた。

もう話すことは何もなかったのだ。

彼の初恋に幸多からんことを祈るばかりだ。

 
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