ワールドメイク 〜チート異能者の最強くん〜

プーヤン

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第3章 ワールドメイク

エピローグ

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また、彼は馬鹿なことを話している。

「うーん。天に雷鳴が嘶きとかの方がいいのか?いや轟きだな。そうだ。その方がいい。」

ほら、また馬鹿な話が始まった。

いつものことである。

そう。いつものことである。

愛すべき日常である。

 

 

 

 

天に雷鳴が轟き、大地は割れ、世界の終わりが訪れた。

その者たちは目に入るものすべてを黒く染め上げ、無にしていった。

民衆は恐れおののき跪き祈った。

救世主の存在を。

中には絶望し打ちひしがれる者。

虚空に向かって泣き叫ぶ者。

終わりを悟り焦燥感から怒り狂う者。

しかし、皆が一様に求めていた。

そう。救世主の存在を。

誰かこの現状を打開してくれと。

皆が祈ったのだ。

その時、一人の男が立ち上がる。

その男の目は暗闇に赤く揺らめき、手には業火がうねりを上げ、覇気を伴い人々の前に立つ。

その男の善悪は分からないが、この現状を打開してくれるならと皆はその男に救いを求める。

そうして、男は右手を天にかざすと、その名を叫ぶ。

「ゴッドブレス!!!」

すると男の手から怒りの炎が放出され、空を射抜く。

町に堕ちた空は二つに割れ、そこから日の光が差し込む。彼らは救世主に狼狽し、身動きひとつとれず、息つく暇もなく屠られていく。

そして、男は群集に振り向き…………………

 

 

 

「ダサい。それはダサいのよ。もっとなんかあったでしょ?技名?ていうの?なにかもっと捻ってよ。なによ?神の息?いや。もっとなにかあったでしょ?」

「いや。これがかっこいいんだ。このダサさも味なんだよ。故に最強。」

「いや。こういう技とか。中二病の美徳は分からないけど、この出だしもなんか馬鹿っぽい。もっとあるでしょ?それに安易に火とか風とかそういう能力はどうなの?」

「故に最強。」

「うん。いつもそうやって俺は中二病だからとか胸をはって堂々と言ってくるけど。もうやめなよ。もう高校生なんだから。デートの時もそういう話ばっかりだよね。」

「故に最強なのだ。」

「次にそれ言ったらぶち殺すわよ?」

「故に……………………あ。はい。ごめんなさい。」

「はい。素直でよろしい。」

彼は未だ、馬鹿な話を続けていた。

最近になって出来た私の彼氏はいつもこんなフウに馬鹿な話をする。

中学の頃からか私は彼に対する気持ちが恋だということに気が付き、高校に入ると同時に肇から告白された。

私は快く受け入れ、今に至るのだ。

私はそんな彼が愛おしくて、とりあえず、頭を撫でながら、来週の予定を決めようと言う。

昨日も放課後、遊ぶ約束をしていたが、彼はその約束を急に断って、私の友達の北条さんと遊びにいっていたのだ。

問い詰めると、それはデートに行く服がないとか、髪を切りたいといった初デートへの彼なりの気持ちの表れだったのだそうだ。

そう北条さんに聞くまでは気が気ではなかったが、まぁそういう理由なので許すとしよう。

そういった経緯もあり、肇は今、私のやることに口出し出来ない。今もこうして良いように頭を撫でられようと不貞腐れた顔でジッと耐えているのだ。

二人でそんないつも通りの話をしていると、ちょうど北条さんが部室に顔を出した。

「あら。西京くん。さっき南くんが貴方のこと探していたわよ。」

「え?そうなのか。ずっと部室にいたのにな。わかった。ありがとう。メールしとくよ。」

「ええ。あ、そうだ。彼方。私は今日はちょっと用事があるから、先に帰るわね。ラブラブするのも大概にしなさいよ。」

「ラブラブって…………。うん。わかった。じゃあね。あ、北条さん。今度遊ぼうね。」

肇は私と北条さんが会話しているといつも親のような暖かい微笑みを浮かべる。素直に恥ずかしいなと思っていると、北条さんは蠱惑的な笑みを顔に貼り付けていた。

「あのおかしな部屋を片付けたらね。西京くん、おたくの彼女は変態だから気をつけなさいよ。写真撮られないようにね。」

肇は苦笑いしながら北条さんを見る。前に彼女が私の部屋に遊びに来た時、肇には死んでも見せられぬような部屋を北条さんについうっかり見られてしまったのだ。
それは秘密の部屋なのだ。

「うるさい。早く帰りなさい。」

「はいはい。お邪魔なようだし先にお暇するわ。じゃあね。」

私が睨みつけると軽口を叩いて北条さんは部室を後にした。

文学部は最近になって部に昇格した。この部室も前はアニメ研究部と地域研究部の物だったが、その両部活が混同すると同時に、女性関係のトラブルが発生し廃部となった。
その空いた部室を私たち文学部がこうして使わせてもらっている。
高校一年生の時は、私と肇の二人しかおらず、同好会という形でなんとか存続していたが、最近になって気が変わったのか南くんが入ってくれて、高校二年生で同じクラスになった北条さんも快く入部してくれたことから部活として今は四人で活動している。

といっても南くんと北条さんは部室にほとんど来ることはないので、実質、私と肇だけの部活だ。
だからよく南くんには愛の巣やら、北条さんにはイチャイチャクラブと馬鹿にされる。

「お。なんか南がくるらしいぞ?」

「そう。めずらしいね。」

「そうだな。あいつ基本的にこの部室に寄り付かないしな。」

「あ。そういえば今日、進路希望のプリント配られてたよね?肇はもう進路決まってる?私は県内の国立狙いだけど。」

肇はその質問に頭を悩ませており、何故かため息をついた。

「なるほどなぁ。俺はまだ決めてないんだよ。いってもまだ高校二年生だろ?どうしようかなぁ。」

「そうだね。まぁゆっくり考えたらいいよ。まだ時間はあるんだし。」

私は初めてこの質問を肇にした。
そして、その質問の問いに対して彼に明確に答えてもらえないことに何故か心臓の鼓動が早くなり、焦る気持ちが生まれた。
どうしても彼の意思を聞きたいと思う気持ちは不安へと繋がり、何故だかその焦燥感から泣きそうになった。
謎の気持ちの昂りに困惑して、どうしたら良いのか分からなくなって思わず彼の顔を見た。
そしたら、肇は少し照れた顔で小さく呟いた。

「そうだな…………。まぁ出来たら彼方と同じ大学に行きたいな。」

「そうだね。」

私もそう小さく呟いて、その瞬間、何故だか泣いてしまった。
理由はわからないけれど、安堵のため息とともに、心を暖かい光が照らすような幸せが私を包んだ。
私は彼に泣いている姿を見られぬよう、本を広げて顔を隠した。

その時、素っ頓狂な運動部の掛け声が耳に入り、思わず私たちは二人しかいない部室でお互いの顔を見て、照れて微笑んでしまう。

そうして、話に一旦区切りが付けば、私たちは各々の時間を過ごす。

こうして二人でいて、話したいタイミングで話し、本を読みたいときには黙って本を読む。しかし、二人でその沈黙の中にいても何も不安に駆られたり、気まずいといった雰囲気はなく、自然体でその時間を過ごす。

それがなにより幸せに思えた。

こうして夏が始まる前に、暑くなってきた部室で、時に「暑い」と愚痴りながらも、時間の流れを楽しみ、時に部室に吹き付ける風に肌を撫でられれば心地よさを感じる。

そうして、時間は緩やかに過ぎてゆく。

二人で見つけた安寧の時間。

小学校から中学校にかけて私は軽いいじめにあっていた。

小学校時代は肇と出会い、私は救われた。それからは周りに全く興味を持てず、ただ生きるために生きていた自分にとって、やっと生きる意味が出来た気がした。

初めはこの私を救ってくれた人に恩返しがしたいとただそれだけだった気がする。

そうして、私は中学校に入り、またいじめにあった。

しかし、その時は小学校の頃のようにそれは私の悩みにならず、特に気にも止めていなかった。

しかし、肇が悲痛そうな顔で、そのいじめを止めたいと言うので、私は仕方なく、そのいじめの主犯格の相手をしてあげることにする。 
興味もなかったが、所持品を隠されたりするのは流石に癪だったので、ちょうど良かったのだ。

その子は鬼嶋あかりという名前の子だった。

全く興味もなかったが、肇の顔を見ると問題を早急に解決しないといけないという焦りから、私はその子のもとに単身で乗り込み、とりあえず、市販のナイフをその子の首に当てて脅せば、押し黙って、少しの血が彼女の首を滴る頃には泣いて謝ってきたので、許してあげれば、問題は解決した。

その報告を聞いた肇が心底、安心した顔をしたので、やって良かったなぁと思っていれば、彼女がまた懲りずに私の良からぬ噂を吹聴していると聞き、もう一度、その報復に赴いた話は彼には内緒だ。

その時の話は本当に冗談では収まらないレベルで脅して、彼女は多分、今頃、病院にいることだろう。

その話を冗談半分に南くんに話せば、真っ青な顔で一言「こわっ」と漏らし、西京には言わない方がいいよと念を押されたので、これは墓場まで持って行こうと思う。

肇がまたよく分からない長いタイトルの小説を開いたなと視界に入った時、ドアの開く音が聞こえた。

「おい。西京。教室で待っておいてくれって言っただろ?」

その声に反応して、肇は顔を上げる。

「ああ。悪い。忘れてたわ。で、どうした?」

「いやぁ。ちょっとお二人さんに紹介したい人がいてな。」

「なんだ改まって。」

南くんはそう言うと、ドアを全開にして、ある女性を部室に入れる。

その子は肩まである黒髪を揺らして、前髪は綺麗に眉のところで切り揃えられており、大きな双眸がパチクリと瞬きを繰り返し、部室内を見渡す。

南くんは確かにモテるが最近はあまり女遊びもしなくなっていた。私と北条さん以外の女子と話しているところも見なくなった。

そんな南くんが女子を紹介したいということはもう決まっている。

肇は分かっていないのか、目を丸くして彼女を見ていた。

控えめな唇が小さく開き、言葉を発する。

「えっと。私、西山 香です。よろしくお願いします。」

「えっとはい。よろしくお願いします。」

肇は急に現れた少女に戸惑いながらも挨拶をする。

「えっと南くん。入部希望者?」

「ああ。そうだ。それで俺の彼女だ。」

「へぇ~…………まぁそうよね。おめでとう。」

「おお。ありがとう。」

彼は人懐っこい笑みを浮かべる。

「マジで?西山さんが南の彼女?」

もう分かっているであろうに、肇は驚きと嬉しさからか、頬を痙攣しながらも持ち上げてぎこちなく笑うと、その問いを彼に投げかける。

「マジで。」

そう言って本当に嬉しそうに笑う南くんの顔と、西山さんの陽だまりのような朗らかな笑顔が似ていて、自然と私の口角も上がっていた。

 

 

 

俺は南から彼女の紹介を受けた後、彼方と西山さんと別れて、南と帰っていた。

なんでも女の子同士で話したいこともあるらしい。

「それで…………。なんかいい感じにごちゃ混ぜになったな?」

南はこちらに苦笑いしながら言う。

「そうだな。…………にしてもなんであの時、異能を行使しなかったんだ?お前、時計をわざと俺に触らせただろ?」

彼は前の世界最後の時、俺と何故か握手をし、意図的に俺に時計を触らせた。

そう。

今の世界は俺の想像する世界へと変わってしまったのだ。

「ああ。あれか。まぁなんだ。結局、それまでの世界も言ったら西京が起こしたことだろ?じゃあ自分で責任を取るべきだと思っただけだよ。それが逃げないってことじゃないのか?」

「確かに。そうだな。じゃあ自分が使うって言い出したのは?」

「ああ。あれは東が納得してなかったから、適当に言っただけだ。俺は初めから西京に異能を使わせる気だったよ。」

「そうか。」

俺はふぅーと息を吐く。もうすぐ夏が来るからか暑さに当てられて、頭から滝のように汗が出て、それをぬぐった。

収まるところに収まったというかなんというのか。
結局、俺が納得しようがしまいが世界は勝手に回るのだ。

「まぁ、今のところ東の調子も良さそうだし、万事上手くいってよかったな。」

「それはそうだが。油断は出来ないな。俺が異能を行使したから、これから何が起こるか分からないし安心はできない。」

「まぁまたヤバくなったら言えよ。東にも言ってやったらいい。それでまたその時、考えようぜ。でも、多分大丈夫だろ?俺はそんな気がする。うん。大丈夫だよ。俺が保証してやるよ。」

「そんな適当な。…………でも、そうだな。なんか大丈夫な気がする。俺が彼方を離さない限りあんなことはもう起きないだろう。」

「そうだな…………そんなに不安ならあえて、その時計破壊してみるか?」

「え?それは流石にまずくないか?」

今、時計は俺が持っていた。

使用者の俺に時計は譲渡され、俺の記憶が引き継がれるのは分かる。

しかし何故か、この世界では南の記憶も引き継がれていた。東や他の人間はもう全てを忘れてしまったようだが。

それにこの世界は前の世界と同じような事象が多々見受けられる。

「そうか?逆にそんなもん持ってたほうが不安になると思うがな。…………お。あれ見てみ西京。」

「ん?」

俺は南が指さす方向に視線を向ける。俺たちの通学路の鉄橋の上に、何人かの高校生がたむろしていた。

ガラの悪そうな生徒が制服を着崩して、地面に座り込み、橋を渡ろうとする俺たちを睨みつける。

制服を見るに、あれは明桜高校の生徒だ。

その生徒の中に、一人見たことのある人間がいた。

「ほら。あれペタだよ。」

「マジか。ん?やめてやれよ。もうそのあだ名。こっちの世界まで持ち込むなよ。」

「いや。こっちの世界でもあいつはペタだよ。」

「ん?てことは?」

「ああ。ちゃんと大人の女性と付き合ってるよ。」

「なんかそんなところまで反映しなくてもいいのにな。」

俺は同情の視線を彼に向けつつ、それもまたワールドメイクだねっと南に言う。彼は俺の小ボケに取り合わず、ペタに視線を向け、手を振る。

気が付けば、ペタもこちらに手を振っていた。

「あ。南じゃん。」

「お。ペタ。久しぶりだな。」

「だからそのあだ名やめろ。」

「すまん。でもまだあの人とは上手くやってるんだろ?」

「まぁな。」

彼は頬を赤らめて、照れたように頭を掻いた。

いや。やっぱりお前が紹介したのかよ。

どういう繋がりで南とペタが知り合ったのかは知らないが、今回もやはり南の紹介でペタはペタになったみたいだ。

「そういえば、沙代里さんが南にあったら、彼女見せてって言ってたぞ。」

ペタは思い出したように宮姉妹の姉の名を出す。

「え~嫌だよ。」

「亜里沙さんも見たいって言ってたぞ。」

「あ、なら近々、会いに行くよ。」

「なんで亜里沙さんには甘いんだよ。」

そうして、世間話が終わればペタと不良の間を縫って、橋を渡る。

不良たちは口々に桝原さんっとペタを呼んでいる姿を見るに、彼はまた明桜の頭になったようだ。なんだ。あの男、普通に喧嘩強かったのか。

南曰く、彼は前明桜のトップであった橋爪を倒して、次のトップに躍り出たらしい。ご苦労なことである。

「なんだかいい感じに捻じ曲がってんなぁ。この世界は。」

「まぁそれもいいだろ?俺とお前が創った世界にしてはよく出来た方だよ。」

「そうか?」

「ああ。…………そういえば、お前この時期じゃないか?北条に惚れたとか世迷言を言ってたのは?」

「ああ。言ってたなそんなことも。」

「残念だが、あの女はもう…………。」

南はわざとらしく俯き、頭を左右に振る。

「いや、いい。言わなくても。こないだ見たから知ってるよ。背の低い男とデートしているのを。」

「そうらしいな。あの四天王の一人だろ?」

「そうそう。あいつだよ。北条さんって根っからのショタコンだったんだな。」

「まぁそれもいいだろ。そういうもんだ。俺等が手を加えなくてもなるようになってんだよ。」

「それもそうか。」

「あ、そういえば南は進路どうするんだ?」

「進路?ああ。東京の大学受けるけど。香もそうらしいし。」

「マジか?…………。」

「なんだ悲しいか?」

「まぁ。そうだな。」

「お?素直だな。でもお前、夏休みは俺抜きで東と遊ぶらしいじゃないか。この裏切り者め。」

「まぁ彼氏だしな。」

「まぁいいさ。俺にとっては嬉しいことだしな。…………なんだろう。あの馬鹿な世界を振り返ると思うことがあるんだ。多分これからも、驚くようなことだったり、悲しいことも嬉しいこともあるさ。それこそ俺らが想像も出来ないようなことも。でもいつでも笑って乗り越えていきたいな。出来ることなら。」

「無理だろ?それこそ異能でも使わないとな。」

「そうか?…………ところで、あの腕時計は?」

南はいたずらっ子のような顔で俺のポケットを指さす。

「なんだ。分かってたのかよ。」

俺はポケットに手をいれ、その手を引き抜き、手中にあった腕時計を南に見せる。

そこには壊れた腕時計があった。ベルト部分が引き千切られ、時計の文字板も大きく破損していた。

「もう使えないのか?」

「ああ。もう無理だな。でもなんか晴れ晴れとした気持ちだ。こいつに頼って、こいつに悩んで、こいつに泣いたんだ。でも今では、それも意味があったのかなとか思ってしまう。結局、俺って勝手なんだなって。そう思うんだ。」

「そうか?その時計を破壊したってのはある意味、過去との決別って気がするけどな。いいだろ勝手で。俺等は勝手に生きて、勝手に幸せになるんだ。それが異能とか、よくわからんものに左右されるなんてバカバカしいだろ?」

「まぁそうか。…………おお。そうだ。今思いついた。この半分を南にやろう。」

そう言って、俺は彼に時計の半分を渡す。

「なんでだよ。」

「なんでだろ。とりあえず戒めかな。それと俺一人では持ちきれない過去を半分コするんだよ。すまんが頼みましたよ。」

「はいはい。頼まれましたよ。」

そう言って彼が半分を受け取り、二人して笑い合うとこの世界もまぁ捨てたもんじゃないなと思えてくる。

これから先になにが待っているかは分からないが、まぁ希望を持って生きるに越したことはない。

改変なんてものは逃げ道と変わりなく、それを塞げば歩くしか方法はない。
偶に振り返る過去を後悔出来ないのは、それもまた悲しいような気がする。

それに未来は勝手に作られていくから、そこに幸せを足していくのに異能はいらない。
俺らにも出来ることだって。

そう思えてくるんだ。

 

 

 

次の日、朝のホームルームに新しく来る教師の説明があった。

その新任教師は銀のフレームの眼鏡をはめて、こちらに強張った笑顔を向けて挨拶をする。

その顔を見て、俺と南が笑ってしまったのはやはり言うまでもないことだった。

 
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