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七将編(剛腕将軍グラドン)
第6話 野営の夜を過ごす勇者
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夕暮れの冷たい風が街道を吹き抜けていく。鉱山都市へ向かう道は長く、太陽が沈む前に目的地へは到底着けなかった。
仕方なく一行は、街道沿いに設けられた石組みの広場――旅人や兵士が使う野営地に馬車を止めた。
「ここで休みましょう」
リオネルの声に、兵士たちが手際よく荷を下ろす。松明を設置し、焚き火の準備に取りかかる。
鎧の擦れる音、木を割る音、馬のいななきが夕暮れの空気に重なっていった。
悠は馬車から降りると、大きなあくびをひとつ。
「……まだ着かないのかよ。遠いなぁ」
愚痴を零しながら、寝袋を引っ張り出すと、そのまま地面に広げてごろりと横になった。
兵士たちは目を丸くし、互いに視線を交わす。
「ゆ、勇者殿は……警戒はなさらないのか?」
「見張りの分担は……」
しかし悠は毛布に潜り込み、眠そうにぼそりと呟いただけだった。
「起きたら着いてるといいのにな……」
あまりの気楽さに、兵士たちは唖然とした。
リオネルが慌てて言葉を補う。
「勇者様は……そういう方なのです。ですが、実力は誰よりも確かです。皆さん、見張りは交代でお願いします」
兵士たちは頷き、火の周りに座り込んだ。
やがて焚き火がぱちぱちと音を立て、冷え切った夜気をわずかに和らげた。
食料の袋が開かれ、兵士たちに干し肉と黒パンが分配される。
リオネルも少しちぎったパンを悠の前に置いた。
「勇者様、少しでもお召し上がりください」
悠は顔を出し、パンを一瞥する。
「柔らかいパンって......硬そう……。歯ぁ疲れるからいいや」
「……」
兵士たちは顔を引きつらせ、リオネルは深いため息を吐いた。
夜が深まるにつれ、野営地は静けさに包まれた。
交代で見張りに立つ兵士たちの表情は硬い。
昼間に出会った旅人たちの「人が消える」という証言が、彼らの心に暗い影を落としていたのだ。
「……勇者殿がいてくださる。それだけで心強い」
誰かが呟くと、隣の兵士が苦笑する。
「いや……あの様子を見ると、本当に大丈夫なのかって気もしてくるが」
冗談のつもりだった。だがその声には、不安が混じっていた。
その時だった。
森の奥から、不気味な遠吠えが響いた。
狼の声――いや、普通の狼ではない。低く濁った唸りには、魔力の揺らぎが宿っていた。
「来るぞ!」
見張りの兵が叫ぶ。
闇の中から、赤く光る瞳がいくつも現れた。
狼型の魔物。十を超える影が焚き火を囲むように広がり、牙を剥いて唸り声を上げる。
「構えろ! 陣形を保て!」
兵士たちが慌てて剣を抜き、盾を構える。火花が散り、鋼の音が夜空に響いた。
「ぐっ……速い!」
「一匹突破してきたぞ!」
魔物の群れは統率が取れており、兵士たちは必死に応戦するが、防戦一方に追い込まれる。
焚き火の周りは混乱し、叫び声と唸り声が交錯した。
その騒ぎの中、寝袋から気の抜けた声が漏れた。
「……眠いんだけど」
悠がのそりと起き上がり、髪をかき乱しながら立ち上がった。
眠そうに目をこすりながら、一歩前に出ると、兵士も魔物もその存在感に一瞬動きを止めた。
「仕方ねぇな……」
悠が軽く足を踏み出した瞬間、風が唸った。
狼型の魔物の一匹が音もなく吹き飛び、次の瞬間には二匹、三匹が地面に叩きつけられていた。
兵士たちは何が起こったのか理解できず、ただ呆然と目を見開く。
悠は拳を振るい、蹴りを放つたびに魔物が消えていく。
十を超える群れは、ほんの数呼吸の間に蹴散らされていた。
最後の一匹が短い悲鳴を上げ、森の奥へと逃げていく。
静寂が戻り、焚き火の火がぱちぱちと音を立てる。
「……終わった?」
悠はあくびをし、肩を軽く回した。
その背中を見つめ、兵士たちは誰も言葉を発せなかった。
「な、なんという……」
「一瞬で……」
誰かが呟き、別の兵士が唾を飲み込んだ。
リオネルでさえ、息を呑んで立ち尽くしていた。
彼は勇者の力を知っているつもりだったが、それでも目の前の光景には圧倒されざるを得なかった。
しかし悠は、皆の視線を気にも留めず、寝袋に戻っていった。
「……もう寝ていい?」
その言葉とともに毛布を頭までかぶり、すぐに寝息を立て始める。
残された兵士たちは顔を見合わせ、呆然と立ち尽くした。
やがて一人がぽつりと呟いた。
「……やはり本物の勇者だ」
別の兵士が苦笑混じりに返す。
「だが、こんな勇者がいていいのか……?」
リオネルは小さく笑みを浮かべ、焚き火を見つめながら心の中で呟いた。
(勇者様……あなたがどんな人であれ、この国を救うのはあなたしかいない)
夜空には星が瞬き、冷たい風が焚き火を揺らしていた。
勇者の寝息に守られるように、一行は長い夜を越えていった。
仕方なく一行は、街道沿いに設けられた石組みの広場――旅人や兵士が使う野営地に馬車を止めた。
「ここで休みましょう」
リオネルの声に、兵士たちが手際よく荷を下ろす。松明を設置し、焚き火の準備に取りかかる。
鎧の擦れる音、木を割る音、馬のいななきが夕暮れの空気に重なっていった。
悠は馬車から降りると、大きなあくびをひとつ。
「……まだ着かないのかよ。遠いなぁ」
愚痴を零しながら、寝袋を引っ張り出すと、そのまま地面に広げてごろりと横になった。
兵士たちは目を丸くし、互いに視線を交わす。
「ゆ、勇者殿は……警戒はなさらないのか?」
「見張りの分担は……」
しかし悠は毛布に潜り込み、眠そうにぼそりと呟いただけだった。
「起きたら着いてるといいのにな……」
あまりの気楽さに、兵士たちは唖然とした。
リオネルが慌てて言葉を補う。
「勇者様は……そういう方なのです。ですが、実力は誰よりも確かです。皆さん、見張りは交代でお願いします」
兵士たちは頷き、火の周りに座り込んだ。
やがて焚き火がぱちぱちと音を立て、冷え切った夜気をわずかに和らげた。
食料の袋が開かれ、兵士たちに干し肉と黒パンが分配される。
リオネルも少しちぎったパンを悠の前に置いた。
「勇者様、少しでもお召し上がりください」
悠は顔を出し、パンを一瞥する。
「柔らかいパンって......硬そう……。歯ぁ疲れるからいいや」
「……」
兵士たちは顔を引きつらせ、リオネルは深いため息を吐いた。
夜が深まるにつれ、野営地は静けさに包まれた。
交代で見張りに立つ兵士たちの表情は硬い。
昼間に出会った旅人たちの「人が消える」という証言が、彼らの心に暗い影を落としていたのだ。
「……勇者殿がいてくださる。それだけで心強い」
誰かが呟くと、隣の兵士が苦笑する。
「いや……あの様子を見ると、本当に大丈夫なのかって気もしてくるが」
冗談のつもりだった。だがその声には、不安が混じっていた。
その時だった。
森の奥から、不気味な遠吠えが響いた。
狼の声――いや、普通の狼ではない。低く濁った唸りには、魔力の揺らぎが宿っていた。
「来るぞ!」
見張りの兵が叫ぶ。
闇の中から、赤く光る瞳がいくつも現れた。
狼型の魔物。十を超える影が焚き火を囲むように広がり、牙を剥いて唸り声を上げる。
「構えろ! 陣形を保て!」
兵士たちが慌てて剣を抜き、盾を構える。火花が散り、鋼の音が夜空に響いた。
「ぐっ……速い!」
「一匹突破してきたぞ!」
魔物の群れは統率が取れており、兵士たちは必死に応戦するが、防戦一方に追い込まれる。
焚き火の周りは混乱し、叫び声と唸り声が交錯した。
その騒ぎの中、寝袋から気の抜けた声が漏れた。
「……眠いんだけど」
悠がのそりと起き上がり、髪をかき乱しながら立ち上がった。
眠そうに目をこすりながら、一歩前に出ると、兵士も魔物もその存在感に一瞬動きを止めた。
「仕方ねぇな……」
悠が軽く足を踏み出した瞬間、風が唸った。
狼型の魔物の一匹が音もなく吹き飛び、次の瞬間には二匹、三匹が地面に叩きつけられていた。
兵士たちは何が起こったのか理解できず、ただ呆然と目を見開く。
悠は拳を振るい、蹴りを放つたびに魔物が消えていく。
十を超える群れは、ほんの数呼吸の間に蹴散らされていた。
最後の一匹が短い悲鳴を上げ、森の奥へと逃げていく。
静寂が戻り、焚き火の火がぱちぱちと音を立てる。
「……終わった?」
悠はあくびをし、肩を軽く回した。
その背中を見つめ、兵士たちは誰も言葉を発せなかった。
「な、なんという……」
「一瞬で……」
誰かが呟き、別の兵士が唾を飲み込んだ。
リオネルでさえ、息を呑んで立ち尽くしていた。
彼は勇者の力を知っているつもりだったが、それでも目の前の光景には圧倒されざるを得なかった。
しかし悠は、皆の視線を気にも留めず、寝袋に戻っていった。
「……もう寝ていい?」
その言葉とともに毛布を頭までかぶり、すぐに寝息を立て始める。
残された兵士たちは顔を見合わせ、呆然と立ち尽くした。
やがて一人がぽつりと呟いた。
「……やはり本物の勇者だ」
別の兵士が苦笑混じりに返す。
「だが、こんな勇者がいていいのか……?」
リオネルは小さく笑みを浮かべ、焚き火を見つめながら心の中で呟いた。
(勇者様……あなたがどんな人であれ、この国を救うのはあなたしかいない)
夜空には星が瞬き、冷たい風が焚き火を揺らしていた。
勇者の寝息に守られるように、一行は長い夜を越えていった。
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