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七将編(剛腕将軍グラドン)
第14話 坑道に眠る亡骸と勇者
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カン……カン……カン……。
規則正しい金属音が、湿った坑道の奥から反響していた。
耳を澄ますと、それは一定の間隔で繰り返され、まるで誰かが鍛冶場で槌を振るっているかのようだ。
兵士の一人がごくりと唾を飲む。
「……まさか、生き残りの鉱夫が……?」
希望とも恐怖ともつかぬ声が漏れた。
別の兵士が首を振り、低く返す。
「こんな深部で……生きていられるはずがない……」
リオネルは前を見据え、短く言い放つ。
「確かめるしかない」
兵士たちは唇を噛みしめ、勇者の背に視線を向けた。
悠は片手で耳を掻きながら、いつもの調子でぼやく。
「まだ叩いてるのか……徹夜残業かよ。ブラックだな」
緊張で押し潰されそうだった兵士の数人が、思わず吹き出す。
その一瞬の笑いが、恐怖を和らげた。
やがて通路は開け、広間に辿り着く。
そこはかつて、鉱夫たちが採掘を行っていた作業場だった。
松明の光が照らしたのは、壁に突き立てられたツルハシ。
崩れかけた支柱に押されて揺れ、柄が岩に当たるたびに乾いた音を響かせていた。
「な……人じゃなかったのか……」
「誰かが生きてるんじゃと……」
兵士たちは胸を撫で下ろす。
しかしその安堵は、すぐに打ち砕かれる。
広間の床には、壊れた採掘道具が散乱していた。
折れたシャベル、砕けたランプ、裂けた麻袋。
鉄の匂いを帯びた赤黒い染みが点々と広がり、乾いたはずの血が未だ湿り気を帯びている。
「……血痕だ」
リオネルの声が低く落ちる。
松明の光がさらに奥を照らし出す。
そこにあったのは、積み上げられた人間の亡骸だった。
十、二十、三十……数える気さえ失せるほどの数。
肉体は無造作に投げ捨てられたように重なり、腐敗が進んで黒ずみ、衣服は血と泥で固まっている。
鼻を突く腐臭が広間全体を満たし、兵士たちの顔が蒼白に染まった。
「う……うぇっ……!」
一人が耐えきれず、胃の中のものを吐き出す。
嘔吐の音が引き金となり、他の兵士たちも口を押さえ、必死に堪える。
「ひどい……こんな……」
「魔物が……やったのか……」
絶望と恐怖が、兵士たちを覆った。
悠は鼻をつまみ、顔をしかめた。
「……後始末まで押し付けられるのか? やっぱり面倒くせぇな」
兵士たちはぎょっとして振り返る。勇者の冷たい言葉に、空気が一瞬凍った。
だが悠は、瓦礫の山へ歩み寄り、片手で岩を軽々と持ち上げながら続けた。
「……まぁ、生き残った奴らが忘れなきゃ、それで十分だろ」
その一言に、兵士たちは目を見合わせる。
皮肉混じりの言葉だったが、そこには確かな慰めがあった。
リオネルはわずかに目を細め、安堵の息を吐く。
「……勇者様」
悠は耳を掻き、そっぽを向いた。
「ほら、進むぞ。……早く片付けて寝たいんだ」
リオネルは亡骸の前に膝をつき、祈りを捧げた。
「王国のために汗を流し、ここで命を落とした者たちよ。
その労苦と犠牲、我らは決して忘れぬ。
安らかに眠れ――」
静かな声が広間に響く。兵士たちは自然と頭を垂れ、亡き者たちの冥福を祈った。
悠はその横で無言のまま瓦礫をどけ、通路を切り開いていた。
広間を抜けた先、通路の壁に深々と刻まれた爪痕が残っていた。
岩を容易く抉るその力は、人間のものではありえない。
「……これだけの力、人間ではない」
リオネルの声には怒りと緊張が混じっていた。
悠は肩をすくめ、片眉を上げる。
「副官クラスってやつか?」
兵士たちがざわつき、再び緊張に包まれる。
副官――魔王軍七将に次ぐ幹部。魔物の軍勢を率い、都市を丸ごと滅ぼす力を持つ存在。
その時だった。
通路の奥、闇がゆらりと揺れた。
冷たい風が吹き抜け、松明の炎が大きく揺れる。
同時に、兵士たちの肌から体温が奪われるような圧が押し寄せた。
リオネルが即座に剣を構える。
「……来る!」
悠は欠伸を噛み殺し、肩をぐるりと回す。
「ったく……寝かせてくれねぇな」
闇の奥。そこに潜んでいたのは、副官級の影だった。
規則正しい金属音が、湿った坑道の奥から反響していた。
耳を澄ますと、それは一定の間隔で繰り返され、まるで誰かが鍛冶場で槌を振るっているかのようだ。
兵士の一人がごくりと唾を飲む。
「……まさか、生き残りの鉱夫が……?」
希望とも恐怖ともつかぬ声が漏れた。
別の兵士が首を振り、低く返す。
「こんな深部で……生きていられるはずがない……」
リオネルは前を見据え、短く言い放つ。
「確かめるしかない」
兵士たちは唇を噛みしめ、勇者の背に視線を向けた。
悠は片手で耳を掻きながら、いつもの調子でぼやく。
「まだ叩いてるのか……徹夜残業かよ。ブラックだな」
緊張で押し潰されそうだった兵士の数人が、思わず吹き出す。
その一瞬の笑いが、恐怖を和らげた。
やがて通路は開け、広間に辿り着く。
そこはかつて、鉱夫たちが採掘を行っていた作業場だった。
松明の光が照らしたのは、壁に突き立てられたツルハシ。
崩れかけた支柱に押されて揺れ、柄が岩に当たるたびに乾いた音を響かせていた。
「な……人じゃなかったのか……」
「誰かが生きてるんじゃと……」
兵士たちは胸を撫で下ろす。
しかしその安堵は、すぐに打ち砕かれる。
広間の床には、壊れた採掘道具が散乱していた。
折れたシャベル、砕けたランプ、裂けた麻袋。
鉄の匂いを帯びた赤黒い染みが点々と広がり、乾いたはずの血が未だ湿り気を帯びている。
「……血痕だ」
リオネルの声が低く落ちる。
松明の光がさらに奥を照らし出す。
そこにあったのは、積み上げられた人間の亡骸だった。
十、二十、三十……数える気さえ失せるほどの数。
肉体は無造作に投げ捨てられたように重なり、腐敗が進んで黒ずみ、衣服は血と泥で固まっている。
鼻を突く腐臭が広間全体を満たし、兵士たちの顔が蒼白に染まった。
「う……うぇっ……!」
一人が耐えきれず、胃の中のものを吐き出す。
嘔吐の音が引き金となり、他の兵士たちも口を押さえ、必死に堪える。
「ひどい……こんな……」
「魔物が……やったのか……」
絶望と恐怖が、兵士たちを覆った。
悠は鼻をつまみ、顔をしかめた。
「……後始末まで押し付けられるのか? やっぱり面倒くせぇな」
兵士たちはぎょっとして振り返る。勇者の冷たい言葉に、空気が一瞬凍った。
だが悠は、瓦礫の山へ歩み寄り、片手で岩を軽々と持ち上げながら続けた。
「……まぁ、生き残った奴らが忘れなきゃ、それで十分だろ」
その一言に、兵士たちは目を見合わせる。
皮肉混じりの言葉だったが、そこには確かな慰めがあった。
リオネルはわずかに目を細め、安堵の息を吐く。
「……勇者様」
悠は耳を掻き、そっぽを向いた。
「ほら、進むぞ。……早く片付けて寝たいんだ」
リオネルは亡骸の前に膝をつき、祈りを捧げた。
「王国のために汗を流し、ここで命を落とした者たちよ。
その労苦と犠牲、我らは決して忘れぬ。
安らかに眠れ――」
静かな声が広間に響く。兵士たちは自然と頭を垂れ、亡き者たちの冥福を祈った。
悠はその横で無言のまま瓦礫をどけ、通路を切り開いていた。
広間を抜けた先、通路の壁に深々と刻まれた爪痕が残っていた。
岩を容易く抉るその力は、人間のものではありえない。
「……これだけの力、人間ではない」
リオネルの声には怒りと緊張が混じっていた。
悠は肩をすくめ、片眉を上げる。
「副官クラスってやつか?」
兵士たちがざわつき、再び緊張に包まれる。
副官――魔王軍七将に次ぐ幹部。魔物の軍勢を率い、都市を丸ごと滅ぼす力を持つ存在。
その時だった。
通路の奥、闇がゆらりと揺れた。
冷たい風が吹き抜け、松明の炎が大きく揺れる。
同時に、兵士たちの肌から体温が奪われるような圧が押し寄せた。
リオネルが即座に剣を構える。
「……来る!」
悠は欠伸を噛み殺し、肩をぐるりと回す。
「ったく……寝かせてくれねぇな」
闇の奥。そこに潜んでいたのは、副官級の影だった。
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