『腰は重いけど速攻解決!』 ~異世界最速のめんどくさがり~

KAORUwithAI

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七将編(剛腕将軍グラドン)

第42話 血痕に導かれる勇者

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広場にはすでに兵士たちと数名の市民有志が集まっていた。彼らの顔には恐怖と覚悟が入り混じっている。
 領主も姿を現し、頭を深く下げた。
「勇者殿……どうか、再びこの街をお救いください」
「はいはい……」悠は片手をひらひら振りながら、馬車の中に投げ込まれるように腰を下ろした。

 ――ガタガタと馬車の車輪が石畳を転がる。
 鉱山までの道はもう何度も通ったはずなのに、今日はやけに長く感じられた。

「……まだ着かねぇのか」
 馬車の窓から外を眺め、悠が欠伸を漏らす。
 リオネルは膝の上に広げた地図を指差しながら答える。
「あと少しです。前回の崩落した坑道より奥に、まだ未調査の坑道があると報告されています」
「未調査ねぇ……。わざわざ奥に行く必要あんのか? もう十分だろ」
「そうもいきません。あの血痕の量……間違いなく、まだ何かが潜んでいます」

 兵士たちは黙り込んだまま、ただ緊張で喉を鳴らす音だけが響いた。


 坑道の入り口は、前回よりもさらに不気味な静けさを放っていた。
 誰も口を開かない。風は止まり、ただ湿った冷気が肌を撫でる。

「……相変わらずじめじめしてんな」
 悠は鼻を鳴らし、肩を竦める。
「湿気でカビ生えそうだ。布団干したいわ」
 場違いなその言葉に、兵士たちは一瞬だけ緊張を忘れて苦笑する。

 松明を掲げ、坑道の奥へと進む。
 するとすぐ、彼らは“それ”を目にした。

 壁にも床にも、赤黒い染み。
 乾いてこびりついたそれは、まるで坑道全体を染め上げるかのように点々と続いている。

「……っ!」
 兵士の一人が声を詰まらせ、吐き気を堪えるように口を押さえた。
 リオネルが険しい顔で言う。
「ここにも犠牲者が……」

 だが悠はというと、血痕を一瞥して肩を竦めた。
「処理が追いついてないだけだろ。こんな量、気にしてたら前に進めねぇぞ」
 あまりに軽い言い方に、兵士たちは顔を見合わせる。恐怖と安堵が入り混じった複雑な表情だった。

 血痕はまるで“導くように”通路の奥へと続いていた。
 まっすぐに、逃げ場のない一本道を。

「……これは、誘い込まれているのでは」
 一人の兵士が震える声で口にした。
 その言葉は全員の胸を突き刺す。

 悠は片眉を上げて鼻で笑った。
「わざわざ誘うとか、暇なやつだな」
 飄々とした口調に少しだけ場が緩むが、恐怖が消えるわけではない。

 血の通路はどこまでも続き、兵士たちの呼吸は次第に荒くなる。松明の炎が湿気で揺らぎ、影が壁に踊った。


 やがて、奥から「カン……カン……」と鈍い音が響いてきた。
 金属を叩く音。坑道の壁に反響して、じわじわと近づいてくる。

「な、何かが……」
 兵士たちは剣を抜き、盾を構える。膝が震えて音を立てる者もいた。

 リオネルは剣を抜き、声を張り上げた。
「気を引き締めろ! この先に必ず何かがいる!」

 しかし悠は耳をほじるように指を動かし、心底面倒そうに呟いた。
「……どうせ雑魚だろ」

 その声が坑道の静寂を破り、緊張で固まった兵士たちの表情に小さな波紋を広げる。
 だが同時に、胸の奥に冷たいものが張り付いていた。

 ――音は、確実に近づいている。
 やがて、その正体が暗闇の向こうに姿を現すのか。

 血の通路は終わらない。
 それはさらなる深淵へと、彼らを誘い込んでいた。
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