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第85話 再会の散歩道
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失恋してから、主人はどこか元気がなかった。
散歩も、家の近くをぐるりと回るだけ。
いつものように賑やかだった声も、今はすっかり静かになっていた。
そんな日々が続いたある日。
夕暮れが差し掛かるころ、いつもの道を歩いていると、
シバがふいにピタリと足を止めた。
そして、鼻をくんくんと動かしたかと思うと、
次の瞬間、勢いよく駆け出した。
「あっ……!」
リードが手から離れてしまった。
慌てて追いかけると、シバは公園のベンチの前でぴたりと止まっていた。
そこにいたのは――別れた彼女だった。
シバは嬉しそうに彼女の周りをぐるぐると回っている。
ふわりと舞う落ち葉の中で、しっぽをぶんぶんと振りながら。
主人は立ち止まり、何も言えずにその光景を見ていた。
すると、シバが振り返り、主人を見て一声、吠えた。
「……おまえ……」
シバは主人の元へ戻ると、前足でぐいぐいと背中を押し始めた。
まるで、「行け」と言わんばかりに。
主人は戸惑いながらも、ゆっくりと彼女の元へ歩み寄る。
目が合う。
何も言わずに、ただ、目が合った。
「……ずっと、一緒にいてほしい」
気づけば、口が勝手に動いていた。
「別れてほしくない。……お願い、俺と結婚してください」
自分でも信じられないくらい、勢い任せだった。
彼女は目を丸くして、それから少しだけ笑った。
「私も、後悔してた。近くまで何度も来てたのに……声、かけられなかった」
しゃがみ込んで、シバの頭を撫でる。
「シバちゃんのおかげね」
そして主人を見上げ、そっと頷いた。
「はい。……お願いします」
その瞬間。
シバが空を仰ぎ、声を上げた。
それは、いつもの吠え声ではなかった。
遠くへ響くような、長い遠吠え。
それはまるで、二人を祝福するかのように、空へ届いていった。
夕陽が、三人の影をやさしく包んでいた。
散歩も、家の近くをぐるりと回るだけ。
いつものように賑やかだった声も、今はすっかり静かになっていた。
そんな日々が続いたある日。
夕暮れが差し掛かるころ、いつもの道を歩いていると、
シバがふいにピタリと足を止めた。
そして、鼻をくんくんと動かしたかと思うと、
次の瞬間、勢いよく駆け出した。
「あっ……!」
リードが手から離れてしまった。
慌てて追いかけると、シバは公園のベンチの前でぴたりと止まっていた。
そこにいたのは――別れた彼女だった。
シバは嬉しそうに彼女の周りをぐるぐると回っている。
ふわりと舞う落ち葉の中で、しっぽをぶんぶんと振りながら。
主人は立ち止まり、何も言えずにその光景を見ていた。
すると、シバが振り返り、主人を見て一声、吠えた。
「……おまえ……」
シバは主人の元へ戻ると、前足でぐいぐいと背中を押し始めた。
まるで、「行け」と言わんばかりに。
主人は戸惑いながらも、ゆっくりと彼女の元へ歩み寄る。
目が合う。
何も言わずに、ただ、目が合った。
「……ずっと、一緒にいてほしい」
気づけば、口が勝手に動いていた。
「別れてほしくない。……お願い、俺と結婚してください」
自分でも信じられないくらい、勢い任せだった。
彼女は目を丸くして、それから少しだけ笑った。
「私も、後悔してた。近くまで何度も来てたのに……声、かけられなかった」
しゃがみ込んで、シバの頭を撫でる。
「シバちゃんのおかげね」
そして主人を見上げ、そっと頷いた。
「はい。……お願いします」
その瞬間。
シバが空を仰ぎ、声を上げた。
それは、いつもの吠え声ではなかった。
遠くへ響くような、長い遠吠え。
それはまるで、二人を祝福するかのように、空へ届いていった。
夕陽が、三人の影をやさしく包んでいた。
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