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第89話 風の強い日
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空は晴れていて、雲が走るように流れている。主人が窓を開けて「今日も散歩行くか」と言うと、シバは尻尾をぶんぶんと振って玄関へ飛び出した。風が少し強くても、散歩は特別な時間だ。
駅前を抜けて、いつもの公園へ向かう道を歩く。通りすがりの人が「可愛いね」と声をかけてくれて、シバは得意げに胸を張って歩く。風に乗ってどこかのパン屋の匂いが漂ってきて、思わず鼻をひくつかせる。
そのときだった。
「うわっ、帽子が!」
主人が被っていたキャップが、突風にあおられて飛んだ。帽子はくるくると空中を舞い、あっという間に道路の方へ転がっていく。
「待って待って!」
主人が追いかけようとしたその瞬間、シバがリードを引っ張って前に飛び出した。
「お、おいシバ! 危ないって!」
しかしシバは俊敏だった。風の向きを読みながら、くるくる転がる帽子を追い、まるで狩りをするかのように素早く走る。そして信号の手前、草むらの端で、帽子をぱしっと前足で止めると、器用にくわえて振り返った。
「おお~、すげぇ……!」
主人が思わず拍手すると、周囲にいた人たちも感心したように笑った。シバは帽子を咥えたまま主人のところへ戻り、ポトンと足元に落とす。
「ありがとうな、シバ」
帽子の埃をはたきながら、主人はシバの頭を撫でる。シバは少し得意そうに鼻を鳴らした。
すると、少し遅れてポメちゃんもやってきた。風にふわふわな毛が揺れていて、どこか上機嫌な様子。
「お、ポメちゃんも来たか」
主人が言うと、シバは嬉しそうに駆け寄って、帽子の件を自慢するように一鳴きした。
風の強い日だったけれど、なんだか心まで晴れた気がした。
駅前を抜けて、いつもの公園へ向かう道を歩く。通りすがりの人が「可愛いね」と声をかけてくれて、シバは得意げに胸を張って歩く。風に乗ってどこかのパン屋の匂いが漂ってきて、思わず鼻をひくつかせる。
そのときだった。
「うわっ、帽子が!」
主人が被っていたキャップが、突風にあおられて飛んだ。帽子はくるくると空中を舞い、あっという間に道路の方へ転がっていく。
「待って待って!」
主人が追いかけようとしたその瞬間、シバがリードを引っ張って前に飛び出した。
「お、おいシバ! 危ないって!」
しかしシバは俊敏だった。風の向きを読みながら、くるくる転がる帽子を追い、まるで狩りをするかのように素早く走る。そして信号の手前、草むらの端で、帽子をぱしっと前足で止めると、器用にくわえて振り返った。
「おお~、すげぇ……!」
主人が思わず拍手すると、周囲にいた人たちも感心したように笑った。シバは帽子を咥えたまま主人のところへ戻り、ポトンと足元に落とす。
「ありがとうな、シバ」
帽子の埃をはたきながら、主人はシバの頭を撫でる。シバは少し得意そうに鼻を鳴らした。
すると、少し遅れてポメちゃんもやってきた。風にふわふわな毛が揺れていて、どこか上機嫌な様子。
「お、ポメちゃんも来たか」
主人が言うと、シバは嬉しそうに駆け寄って、帽子の件を自慢するように一鳴きした。
風の強い日だったけれど、なんだか心まで晴れた気がした。
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