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第3話 お肉屋さんのコロッケ
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雨がやんだころ、ぽちはそっと立ちあがりました。
体はまだ少しぬれていて、すこし ふるえていましたが、
それでも、また歩きはじめました。
だけど、もう──
飼い主のおじさんのにおいは、どこにも のこっていませんでした。
どこへ向かえばいいのかも、わかりません。
ただ、なんとなく、足の向くままに歩いていきました。
•
しばらく歩いていると、おなかがぐぅっと なりました。
「くぅん……」と、ぽちはおなかをおさえます。
さっきから、なんにも食べていません。
そのとき──
ふわっと、なつかしいにおいが風にのって ただよってきました。
お肉のにおい。あつあつのにおい。
それは、ぽちがむかし、飼い主のおじさんと いっしょに来た
お肉屋さんからでした。
•
ぽちは、くんくん鼻をうごかして、
お店の前までやってきました。
ガラスごしに見えるのは、まえと同じ、お肉屋さんのおじさん。
でも、そばにおじさん(=ぽちの飼い主)はいません。
ぽちは、しょんぼりと お店のすみにすわって、小さく鳴きました。
「……くぅん」
その声に気づいた お肉屋さんが、ドアから顔を出しました。
「あれ? おまえ、どこかで見たような……」
そう言ってしゃがむと、ぽちを見つめました。
そのとき、おなかが「ぐぅ~……」と、
とても大きな音をたてました。
お肉屋さんは、目をまるくして、ふっと笑いました。
「こりゃまいったな。ほれ、あついけど、気をつけてな」
そして、小さなコロッケを一つ、
ぽちの前に置いてくれたのです。
•
ぽちは、うれしくて、しっぽをふって「ワン!」と鳴きました。
それは「ありがとう」の合図です。
お肉屋さんは、やさしくぽちの頭をなでて、
「がんばれよ」と言って、お店の中へもどっていきました。
•
あつあつのコロッケ。
さくさくで、なかはホクホク。
ぽちは、大事そうに一口ずつ いただきました。
たったひとつのコロッケだったけど、
ぽちにとっては、心もおなかも ぽかぽかになる、
あたたかいごちそうでした。
•
「ワン……(ありがとう)」
ぽちはもういちど、こっそり声にして、お店に向かっておじぎしました。
そしてまた、歩き出します。
たったひとりの「ぽち」をよんでくれる、
そんな だれかに であえる日を、しんじて。
体はまだ少しぬれていて、すこし ふるえていましたが、
それでも、また歩きはじめました。
だけど、もう──
飼い主のおじさんのにおいは、どこにも のこっていませんでした。
どこへ向かえばいいのかも、わかりません。
ただ、なんとなく、足の向くままに歩いていきました。
•
しばらく歩いていると、おなかがぐぅっと なりました。
「くぅん……」と、ぽちはおなかをおさえます。
さっきから、なんにも食べていません。
そのとき──
ふわっと、なつかしいにおいが風にのって ただよってきました。
お肉のにおい。あつあつのにおい。
それは、ぽちがむかし、飼い主のおじさんと いっしょに来た
お肉屋さんからでした。
•
ぽちは、くんくん鼻をうごかして、
お店の前までやってきました。
ガラスごしに見えるのは、まえと同じ、お肉屋さんのおじさん。
でも、そばにおじさん(=ぽちの飼い主)はいません。
ぽちは、しょんぼりと お店のすみにすわって、小さく鳴きました。
「……くぅん」
その声に気づいた お肉屋さんが、ドアから顔を出しました。
「あれ? おまえ、どこかで見たような……」
そう言ってしゃがむと、ぽちを見つめました。
そのとき、おなかが「ぐぅ~……」と、
とても大きな音をたてました。
お肉屋さんは、目をまるくして、ふっと笑いました。
「こりゃまいったな。ほれ、あついけど、気をつけてな」
そして、小さなコロッケを一つ、
ぽちの前に置いてくれたのです。
•
ぽちは、うれしくて、しっぽをふって「ワン!」と鳴きました。
それは「ありがとう」の合図です。
お肉屋さんは、やさしくぽちの頭をなでて、
「がんばれよ」と言って、お店の中へもどっていきました。
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あつあつのコロッケ。
さくさくで、なかはホクホク。
ぽちは、大事そうに一口ずつ いただきました。
たったひとつのコロッケだったけど、
ぽちにとっては、心もおなかも ぽかぽかになる、
あたたかいごちそうでした。
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「ワン……(ありがとう)」
ぽちはもういちど、こっそり声にして、お店に向かっておじぎしました。
そしてまた、歩き出します。
たったひとりの「ぽち」をよんでくれる、
そんな だれかに であえる日を、しんじて。
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