『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

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日常編

第69話「威厳と好奇心と袋菓子」

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深夜零時の鐘が鳴り終わった頃、ミッドナイトマートの前の街道が妙に騒がしくなった。
 遠くからランタンの明かりが近づいてくる。馬の蹄の音、鎧の軋む音、規律正しい足音――。
 やがて現れたのは、豪奢な馬車と、それを守る近衛騎士たち。
 その光景に、ニナは思わずレジの奥で固まった。

 馬車の扉が開くと、重厚なマントと金糸の刺繍に身を包んだ男が姿を現した。
 頭上には小ぶりながらも確かな存在感を放つ冠。
 彼こそ、この国の頂点に立つ人物――国王だった。

 「巷で噂の“異界の商店”、一度はこの目で確かめたくなってな」
 低く響く声が店内に届くと、居合わせた客たちは道を開ける。
 レンとニナは同時に深く一礼した。

 国王はゆっくりと店内へ足を踏み入れる。
 外の冷気を追い出すような暖かな空気に、まずは感心したように息をついた。
 「ほう……外はあれほど冷えるのに、ここは春の陽だまりのようだ」

 ドリンクコーナーの前では、湯気の立つペットボトルのお茶を手に取り、側近に見せる。
 「これは茶葉を煮出すのではなく、すぐに飲めるというのか? ……魔法か?」
 レンは微笑んで説明する。「封を切るだけで、そのまま飲めます」
 「ふむ……これは兵士たちにも良さそうだな」

 おにぎりや弁当の棚に立ち止まると、国王はひとつひとつ興味深そうに手に取る。
 「握られた米の塊に具を包み……しかも包みを開けるだけとは! しかも冷めても旨いのか?」
 「ええ。旅や遠征にも便利ですよ」ニナが答えると、国王は感心しきりに頷いた。

 しかし、真に国王の目を輝かせたのは駄菓子コーナーだった。
 「なんだこれは……小さな袋が山のように……!」
 手に取ったのはカラフルなスティック状の菓子。
 「この値段で売るのか? こんなに安くて、利益は出るのか?」
 隣では丸い飴玉を手に取り、「これは宝玉か? いや、甘い匂いがするぞ」と驚きの連続。

 レンがチョコレートやラムネ菓子の説明をすると、国王は少年のような表情になった。
 「……この棒の菓子は一口で食べられるな。こちらの綿のような菓子は……口に入れると消える? 面白い!」
 側近たちは口元を引き締め、笑いを堪えている。

 結局、国王はカゴいっぱいに駄菓子を詰め込み、さらに温かいお茶と鮭おにぎり、揚げたてのチキンまで追加。
 会計の際、レンが袋を渡すと、国王は満足げに受け取った。

 「いやはや、異界の商いは実に愉快だ。次は娘も連れて来るとしよう」
 その言葉にニナがぱっと笑顔になる。
 「きっと娘さんも喜びますよ」

 国王は頷き、ゆったりとした足取りで扉へ向かう。
 「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
 その声を背に、国王は夜の街道へと戻っていった。
 外では馬車が待ち構え、近衛たちが恭しく扉を開ける。

 ランタンの明かりが遠ざかるまで見送ったレンは、肩の力を抜きながら小さく笑った。
 「……あんな目をする国王、初めて見たな」
 ニナはうんうんと頷き、「完全に駄菓子の虜ですね」と呟いた。
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