『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI

文字の大きさ
7 / 184
日常編

第7話「オーナー登場と静かな夜」

しおりを挟む
深夜0時を少し過ぎた頃。
 ミッドナイトマートの扉が、かすかな音を立てて開いた。

 「おはようございますっ」

 ニナが制服姿で元気に出勤すると、カウンターの中に見慣れない人影がいた。
 スーツ姿にエプロンというアンバランスな格好のその人物は、穏やかな笑みを浮かべている。

 「君がニナちゃんだね。レンから聞いてるよ。よろしくね」

 「……え、あの、レンさんは……?」

 「ああ、今日はちょっと急用でね。代わりに私が入ってる。店のオーナーの柏木だよ」

 「お、お世話になってますっ!」

 ぴしっと背筋を伸ばして頭を下げるニナ。柏木は「そんなに緊張しなくていいよ」と手を振った。

 普段は昼間の、異世界とは無縁の時間帯に店に立つことの多いオーナー。
 この“深夜の時間”に顔を出すのは、実はかなり珍しい。

 「……静かだね、夜のミッドナイトマートは」

 「でも、すぐににぎやかになりますよ。いろんなお客様が来ますから……」

 その言葉通り、ほどなくして入口の鈴が鳴った。

 カラン。

 入ってきたのは、銀の鎧を身にまとった常連の騎士だった。
 しかし、店内を一目見るなり足を止める。

 「……む? レンがいない?」

 カウンターに立つ柏木を見つけ、鋭い目でじっと見つめる。

 「見ぬ顔だな。新しい者か?」

 「こんばんは。今夜はレンに代わって私が入っています。オーナーの柏木です」

 名乗りながら丁寧に頭を下げると、騎士は一拍おいて、うなずいた。

 「なるほど……貴殿がレンの主か。あやつが“ただの店員”であるはずがないとは思っていた」

 「いやいや、あれはうちの大事なバイトです。いい働きをしてくれてますよ」

 「ふむ……それを聞いて安心した。では、今宵も買い物をば」

 騎士はいつものようにしゃけおにぎりとお茶を手に取り、ホットスナックからチキンを一つ。
 慣れた手つきでレジに並び、静かに言った。

 「ナイポ、頼む」

 「かしこまりました」

 オーナーが丁寧にポイントを加算し、レシートと商品を渡す。

 「……レンに伝えてくれ。“次はチーズ入りのチキンを仕入れてみてはどうか”とな」

 「ご意見、確かにお預かりしました」

 騎士は小さくうなずくと、袋を手に店を出ていった。
 霧の中へと消えるその背を、ニナと柏木が並んで見送る。

 「……やっぱり、ちょっと緊張しますね」

 「うん。でも、みんな君の“いらっしゃいませ”をちゃんと聞いてる。いい接客してるよ」

 そう言って笑う柏木の言葉に、ニナも少しだけ胸を張った。

 ふたりは声をそろえる。

 「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界に迷い込んだ盾職おっさんは『使えない』といわれ町ぐるみで追放されましたが、現在女の子の保護者になってます。

古嶺こいし
ファンタジー
異世界に神隠しに遭い、そのまま10年以上過ごした主人公、北城辰也はある日突然パーティーメンバーから『盾しか能がないおっさんは使えない』という理由で突然解雇されてしまう。勝手に冒険者資格も剥奪され、しかも家まで壊されて居場所を完全に失ってしまった。 頼りもない孤独な主人公はこれからどうしようと海辺で黄昏ていると、海に女の子が浮かんでいるのを発見する。 「うおおおおお!!??」 慌てて救助したことによって、北城辰也の物語が幕を開けたのだった。 基本出来上がり投稿となります!

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

処理中です...