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日常編
第6話「コボルト、酒と干し肉の夜」
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深夜0時。
ミッドナイトマートの静けさを破るように、ドアが軽く開いた。
カラン。
入ってきたのは、これまでにない“雰囲気”をまとった存在だった。
(……小さい……?)
レジカウンターから様子を見ていたニナが目を丸くする。
人間の子どもほどの背丈。体格はがっしりしているが、顔は犬に似た輪郭で、鼻先がやや尖っている。茶色い毛に覆われた身体に、革の装具を身につけていた。
「い、いらっしゃいませ……」
思わず声が少し震えた。だが、客は何も気にする様子もなく、小さく手を挙げて応えた。
「ちぃーす」
低くしゃがれた声。けれど、どこか愛嬌がある。
そのまま、すたすたと飲み物コーナーへ向かうと——
「……おっ、あったあった」
金色の缶チューハイを一本取り、ついでにジャーキーをひとつ手に取った。
レジに来ると、ふいにニナの顔を見てにやりと笑う。
「姉ちゃん、新顔だな。……この“干し肉”と“酒”、こいつがまた合うんだよ。知ってたかい?」
「えっ……い、いえ……初めてです」
「ほれ、これな。人間の“ジャーキー”っつーんだろ? ウチらはよく“獣のしっぽ干し”を食うけど、これはこれでたまんねえのよ。酒が進む」
ニナは思わず笑ってしまった。さっきまでの緊張が、ふっとほどける。
「なるほど……じゃあ、お会計しますね。えっと……310ストーです!」
コボルトは器用に小銭を出し、さらにポーチから取り出したカードを差し出した。
「ナイポ、たのむわ。あと2個で“特製マイバッグ”もらえるらしいからな!」
「は、はいっ! ポイントお付けします!」
手際よくレジを打ち、ニナはレシートとともに商品を差し出す。
コボルトはそれを受け取りながら、嬉しそうに尾をぴこぴこと揺らした。
「じゃ、また来るわ。今度は仲間にも紹介しとく」
「お待ちしてますっ!」
扉が閉まり、静寂が戻る店内。
ニナはふうっと息をついた。
「……人じゃなくても、お客様はお客様、なんだね」
「そういうことだな。言葉が通じりゃ、接客は成立する」
レンがそう言って笑うと、ニナも笑い返した。
そして、今日も店内にふたつの声が響く。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
ミッドナイトマートの静けさを破るように、ドアが軽く開いた。
カラン。
入ってきたのは、これまでにない“雰囲気”をまとった存在だった。
(……小さい……?)
レジカウンターから様子を見ていたニナが目を丸くする。
人間の子どもほどの背丈。体格はがっしりしているが、顔は犬に似た輪郭で、鼻先がやや尖っている。茶色い毛に覆われた身体に、革の装具を身につけていた。
「い、いらっしゃいませ……」
思わず声が少し震えた。だが、客は何も気にする様子もなく、小さく手を挙げて応えた。
「ちぃーす」
低くしゃがれた声。けれど、どこか愛嬌がある。
そのまま、すたすたと飲み物コーナーへ向かうと——
「……おっ、あったあった」
金色の缶チューハイを一本取り、ついでにジャーキーをひとつ手に取った。
レジに来ると、ふいにニナの顔を見てにやりと笑う。
「姉ちゃん、新顔だな。……この“干し肉”と“酒”、こいつがまた合うんだよ。知ってたかい?」
「えっ……い、いえ……初めてです」
「ほれ、これな。人間の“ジャーキー”っつーんだろ? ウチらはよく“獣のしっぽ干し”を食うけど、これはこれでたまんねえのよ。酒が進む」
ニナは思わず笑ってしまった。さっきまでの緊張が、ふっとほどける。
「なるほど……じゃあ、お会計しますね。えっと……310ストーです!」
コボルトは器用に小銭を出し、さらにポーチから取り出したカードを差し出した。
「ナイポ、たのむわ。あと2個で“特製マイバッグ”もらえるらしいからな!」
「は、はいっ! ポイントお付けします!」
手際よくレジを打ち、ニナはレシートとともに商品を差し出す。
コボルトはそれを受け取りながら、嬉しそうに尾をぴこぴこと揺らした。
「じゃ、また来るわ。今度は仲間にも紹介しとく」
「お待ちしてますっ!」
扉が閉まり、静寂が戻る店内。
ニナはふうっと息をついた。
「……人じゃなくても、お客様はお客様、なんだね」
「そういうことだな。言葉が通じりゃ、接客は成立する」
レンがそう言って笑うと、ニナも笑い返した。
そして、今日も店内にふたつの声が響く。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
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