賢者転生〜世界最強の賢者、赤ん坊からやり直す〜

KAORUwithAI

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第30話 合格、そして呼び出し

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 翌朝。

 セシリアは、少し早く目を覚ました。

 宿の窓から差し込む朝日が、
 昨夜よりもどこか眩しく感じられる。

(……今日、だ)

 合格発表。

 結果がどうであれ、
 ここまで来た事実は変わらない。

 そう思ってはいるものの、
 胸の鼓動は、どうしても早くなる。



 王立魔法学園の正門前は、
 朝から人で溢れていた。

 昨日試験を受けた受験生たちが、
 固唾を飲んで掲示板を見つめている。

 セシリアも、人波の後ろから、
 ゆっくりと近づいた。

(……あった)

 視線が、自分の名前を捉えた瞬間。

 胸の奥が、
 すっと軽くなる。

 合格。

「……よかった」

 思わず、小さく呟いていた。

 不安が、
 一気に解けていく。

(……ルーク)

 最初に浮かんだのは、
 村にいるあの小さな背中だった。

(約束、守れたよ)



 合格者は、そのまま学園の校舎へ案内された。

 入学に関する説明書類、
 寮や授業についての資料。

 それらを受け取るためだ。

 広い廊下を進んでいると――
 ふいに、声をかけられる。

「……君」

 振り向くと、
 昨日、実技試験で後方に立っていた教官がいた。

 落ち着いた雰囲気の男性。

「合格、おめでとう」

「……ありがとうございます」

 セシリアは、少し緊張しながら頭を下げる。

「私は、アイン」

 穏やかに微笑みながら、名乗った。

「この学園で教師をしている」

「……アイン先生」

 そう呼ぶと、
 アインは小さく頷いた。

「少し、話がある」

「学園長が、君に会いたいそうだ」

 その言葉に、
 セシリアの心臓が跳ねる。

「……学園長、ですか?」

「ああ」

 アインは、視線を校舎の奥へ向ける。

「学園長室へ、来てくれるかな」

 理由は、言われなかった。

 だが――
 昨日の実技試験が、頭をよぎる。

(……やっぱり)

 胸の奥が、ざわつく。

「……はい」

 セシリアは、しっかりと頷いた。



 一方、その頃。

 ハルネ村では、
 いつもと変わらぬ朝が始まっていた。

 村外れの訓練場。

 ルークとミアは、向かい合って立っている。

「……じゃあ、いくよ」

「うん!」

 魔力感知、
 体内循環、
 体外放出。

 流れるような動きで、
 ミアは風を起こした。

「……いい」

 ルークが、短く評価する。

「えへへ」

 褒められると、
 やはり嬉しそうだ。

 ひと通り訓練を終え、
 二人は腰を下ろして休憩に入った。

 ミアは、水筒を飲みながら、
 ふと空を見上げる。

「……リアねぇ」

「大丈夫かな」

 小さな声。

 ルークは、即答した。

「……だいじょうぶ」

 迷いのない声音だった。

「……ぜったい、うかる」

 ミアは、少し驚いたようにルークを見る。

「そんなに?」

「……うん」

「おねえちゃん、つよい」

 それは、
 事実を述べているだけの口調だった。

 だが――
 ミアの胸には、ちくりとした感情が残る。

(……信じてるんだ)

(あんなふうに、迷いなく)

 ほんの少しだけ。

 ほんの、ほんの少しだけ――
 胸の奥が、ざわついた。

「……ふーん」

 拗ねたように、視線を逸らす。

「なに?」

「べつに」

 ルークは、深く追及しなかった。

 それもまた、
 ミアには少し悔しかったが。

「……じゃあ、つづき」

 ルークが立ち上がる。

「つぎは、ちゅうきゅう」

「うん!」

 ミアも、すぐに立ち上がった。

 セシリアがいない今、
 ここで止まるわけにはいかない。

(……負けない)

 ミアは、心の中でそう誓い、
 再び魔力を巡らせた。



 王都。

 学園の校舎では、
 セシリアが、アインの後について歩いていた。

 これから向かう先は、
 学園長室。

 そこに待つのは、
 合格以上の“何か”。

 それを、まだ彼女は知らない。

 だが――
 確かなことが一つだけあった。

 この合格は、
 終わりではない。

 始まりだ。

 村でも、王都でも。

 それぞれの場所で、
 次の一歩が、静かに踏み出されていた。
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